(現地時間)
<23日>
20:38
D301号がD3115号に追突
【北京・工藤哲】中国国営新華社通信(電子版)によると、中国浙江省温州市で23日に起きた高速鉄道事故の賠償金について、福建省出身の男性(29)の遺族が50万元(約600万円)を受け取ることで合意したと伝えた。中国都市部の市民の平均年収約2万元の25倍で、高額の賠償金で素早く支援し、遺族らの不満を抑え込むことで早期の幕引きを図る狙いもあるとみられる。
中国メディアは鉄道当局に批判的な報道を繰り返している。中国ではすべてのメディアが共産党の管理下にあり、相次ぐ報道からは事故の「加害者」である鉄道省への批判を当局がある程度、容認していることがうかがえる。
共産党機関紙、人民日報系の日刊紙である環球時報(英語版)は26日、1面トップで「答えがないことに遺族の怒りが山積」との見出しを掲げた記事を掲載。いまだに犠牲者の数を特定できていない問題などを挙げ、鉄道省の誠意のない対応を厳しく批判した。
北京を中心に発行する日刊紙、新京報は同日付で「中国の高速鉄道の運転士は訓練期間が短すぎるのではないか」と問題提起した。日本の新幹線は少なくとも半年の訓練期間を経て運転士になるが、中国ではわずか10日の訓練で高速鉄道の運転士になった例もあるとして安全性に疑問を投げかけた。
批判の対象はいずれも鉄道省。世論の怒りの矛先を同省に向け、指導部に火の粉が降りかかるのを避けようとする意図も透けて見える。(北京=高橋哲史)
【温州(浙江省)=戸田敬久】中国浙江省温州市で起きた高速鉄道の事故で、温州市政府は25日、遺体の捜索活動を打ち切ったことを明らかにした。今後は遺族の補償問題など事後処理に軸足が移る見通しだ。一方で制御プログラムに不具合があったとの説が流れるなど原因究明を巡る情報には混乱もみられる。
市政府は25日夜時点で死者数を40人と発表したが、直後に39人と訂正。同市政府は25日夕に遺体の捜索を終了した。負傷者数は192人。
原因究明では情報が錯綜(さくそう)している。政府系通信社の中国新聞社が、ネット上で「制御プログラムに不具合があり、2人が既に拘束された」とのうわさが流れていると報道。ただ、地元当局は「拘束の事実はない」と同社に否定した。
また、ネット上では、事故の被害者家族が当局の救援活動の不手際を非難する動画などが相次ぎ掲載されている。今後、補償を巡って中国政府を追及する動きが広がる可能性もある。
ほかの高速鉄道でも不具合が相次いでいる。上海市系の東方早報(電子版)は25日、北京・上海高速鉄道の安徽省定遠付近で送電線設備に故障が発生し、列車が遅れたと報じた。
中国東部で高速鉄道の列車が追突、転落した事故から1日半後の25日朝、事故があった区間で列車の運転が再開されました。事故原因が特定されないなかでの早期の運転再開に、利用者からは不安の声も上がっています。
[温州(中国浙江省) 24日 ロイター] 中国は24日、前日に当地で発生した高速鉄道衝突事故を受け、鉄道当局者3人を更迭した。事故では、少なくとも35人が死亡している。
鉄道省はウェブサイト(www.china-mor.gov.cn)で声明を発表し、上海鉄道局の局長、副局長、および共産党委員会書記を更迭したと述べた。
声明は3人が「捜査対象となる」としている。
鉄道省スポークスマンは当地で行った記者会見で、「(3人は)指導者として、事故の主因について最終責任を取る必要がある」と述べるとともに、「多くの人は、この事故は高速鉄道の安全不備によると考えるだろうが、中国の高速鉄道技術は最新のものであり、基準を満たしていると言明する。またわれわれは(その技術を)信頼している」と語った。
【温州共同】中国浙江省温州市で起きた高速鉄道の列車追突事故で、中国当局は25日までに高架橋から落下した追突車両の最前部を破壊し、インターネット上では「事故原因の隠蔽ではないのか」との批判が高まった。一方、鉄道省報道官は24日深夜、死者は43人ではなく35人として、国営通信新華社の報道を事実上修正した。
現場では事故翌日の24日朝、落下した追突車両の最前部を油圧ショベルで破壊した。ネット上では「破壊された最前部を現場に埋めており、事故原因の隠蔽ではないのか」との疑問が出ている。
一方、新華社は24日夜、救助隊が新たに8遺体を発見したと報道。確認されていた死者35人と合わせ計43人となったが、鉄道省報道官は同日深夜の記者会見で、死者は35人と言明、負傷者も211人から192人に修正された。新華社が伝えた8遺体については、中国の経済雑誌(電子版)も発見時間などを詳細に報じていた。
中国のメディア関係者は25日までに、列車追突事故について、共産党中央宣伝部が国内メディアに対して独自報道をしないよう求める通知を出したことを明らかにした。
関係者によると、国内の新聞社などが宣伝部の通知を受け取ったのは事故翌日の24日午前。事故の報道は新華社の配信記事を使用し、独自取材に基づく報道をしないよう要求している。事故に対する当局の責任を問う声を封じ込める狙いがあるとみられる。
ネット上では事故を「人災」と指摘し、当局に批判的な書き込みも多い。高速鉄道は国家的プロジェクトだけに、事故の実態や重大な欠陥が大きく報じられると、政府の威信に関わるとの判断も情報管理の背景にあるようだ。
【北京=川越一】中国浙江省温州市で23日に起きた高速鉄道列車の事故は、死傷者が200人を超える惨事となった。いくつかの原因が絡み合った複合事故だった可能性が高い。これまでに浮上している3つの謎を追った。