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2011/07/25

共産党中央宣伝部、事故の報道は新華社の配信記事を使用し、独自取材に基づく報道をしないよう要求

中国当局、事故車両の前部破壊 ネットで「隠蔽」批判も
2011/7/25 10:30

 【温州共同】中国浙江省温州市で起きた高速鉄道の列車追突事故で、中国当局は25日までに高架橋から落下した追突車両の最前部を破壊し、インターネット上では「事故原因の隠蔽ではないのか」との批判が高まった。一方、鉄道省報道官は24日深夜、死者は43人ではなく35人として、国営通信新華社の報道を事実上修正した。

 現場では事故翌日の24日朝、落下した追突車両の最前部を油圧ショベルで破壊した。ネット上では「破壊された最前部を現場に埋めており、事故原因の隠蔽ではないのか」との疑問が出ている。

 一方、新華社は24日夜、救助隊が新たに8遺体を発見したと報道。確認されていた死者35人と合わせ計43人となったが、鉄道省報道官は同日深夜の記者会見で、死者は35人と言明、負傷者も211人から192人に修正された。新華社が伝えた8遺体については、中国の経済雑誌(電子版)も発見時間などを詳細に報じていた。

 中国のメディア関係者は25日までに、列車追突事故について、共産党中央宣伝部が国内メディアに対して独自報道をしないよう求める通知を出したことを明らかにした。

 関係者によると、国内の新聞社などが宣伝部の通知を受け取ったのは事故翌日の24日午前。事故の報道は新華社の配信記事を使用し、独自取材に基づく報道をしないよう要求している。事故に対する当局の責任を問う声を封じ込める狙いがあるとみられる。

 ネット上では事故を「人災」と指摘し、当局に批判的な書き込みも多い。高速鉄道は国家的プロジェクトだけに、事故の実態や重大な欠陥が大きく報じられると、政府の威信に関わるとの判断も情報管理の背景にあるようだ。





鉄道事故に絡めた政権批判、ネットから次々削除

「高速鉄道の無軌道な大躍進に伴う弊害や鉄道の管理系統の不備が表面化した」
 中国のインターネットでは24日、高速鉄道の計画を急速に進めた鉄道省に非難が殺到。特に、汚職事件で今年2月に解任された劉志軍・前鉄道相に対しては、「今回の事故を招いた張本人だ」と攻撃が集中した。

 胡政権は、功績を誇示するための高速鉄道が、事故をきっかけに体制批判に結び付くことを強く警戒している。実際、事故に絡め政権を批判する意見がネット上から次々に削除された。

 国営メディアは、陣頭指揮に当たる張徳江副首相が病院で負傷者を見舞う様子を伝え、政権の素早い対応を盛んに宣伝している。

(2011年7月25日10時22分 読売新聞)



高速鉄道事故、報道現場やネットで批判噴出
 【温州(中国浙江省)=角谷志保美、北京=関泰晴】中国浙江省温州の高速鉄道事故を巡って、胡錦濤政権は国内メディアの報道規制を一段と強化しているが、今回の大惨事を発端に噴き出した批判は、報道現場やインターネットで抑えきれないほどに広がりつつある。
 事故現場では25日、脱線車両の撤去などを終えて運行が再開。国営の中央テレビも正午のニュースのトップで伝え、復旧ぶりを大々的に宣伝した。しかし、北京の中国紙記者は「復旧を急ぎ過ぎている。政府はきちんと調査を行う気があるのか」と疑問を呈する。

 胡政権は事故発生翌日の24日、国内の新聞各紙に対し、今回の事故の独自報道自粛を求める通達を出した。だが、一部の中国紙は25日、事故の原因究明や責任追及を求める社説や評論を掲載し、当局の通達に反発する動きも出ているようだ。

(2011年7月25日20時58分 読売新聞)





中国 “車両埋めた”報道は一部
7月26日 18時31分
中国で起きた高速鉄道の事故について、26日の中国の新聞各紙は、25日に引き続き数ページにわたって大きく扱っており、事故から20時間余りたって救出された2歳の女の子の写真などを一面に掲載しています。しかし、現場の高架下の地中に事故車両が埋められたことについて伝える新聞は、一部にとどまっています。

このうち、北京の大衆紙、新京報は、論評で「一体どの部門が埋めることを決めて、何のために行ったのか。今後の事故原因の調査に影響が出るのではないか」と疑問を投げかけています。

また、英字紙チャイナ・デーリーも「車両の撤去や救助活動をスムーズに行うために埋めた」とする中国政府の主張と、これを疑問視する声が上がっていることをそれぞれ伝えています。しかし、この問題について伝える新聞は、全体的に一部にとどまっています。

中国のメディア関係者によりますと、今回の事故について、報道を管理する当局が国内メディアに対し、独自取材を控え、国営の新華社通信の配信記事を使うよう指示したということで、こうした報道規制の影響もうかがえます。





死者数発表に記者怒る、逃げる鉄道部長を袋だたきか=中国高速鉄道事
2011/07/26(火) 18:18
 中国大手検索サイト百度の掲示板「百度貼〓(口へんに巴)」に、24日に開かれた浙江省温州市で起きた高速鉄道事故関連の記者会見で、鉄道部の王勇平報道官の発言をきっかけに記者が怒り出し、会見会場から逃げ出そうとした盛光祖・鉄道部長が記者らに袋だたきになったとの情報が書き込まれた。この掲示板の内容やリンク先はすでに削除されている。波蘭華人網など海外の中国語メディアが伝えた。

 報道各社に対し、中国共産党中央宣伝部は「報道各社は鉄道部が発表する情報をタイムリーに報道し、独自報道を控えること。特に、傘下の新聞、出版物、ウェブサイトをしっかり管理し、高速鉄道に関連するリンクを制限し、反省報道を行わないこと。死傷者の人数や状況に関する情報は、新華社の原稿に基づいて報道すること」などと通達した。

 王報道官は記者会見で、「今回の追突事故のうち、D3115列車には558人、D301列車には1072人の乗客がいた。事故による死者は35人、負傷者は192人、負傷者のうち132人が入院した。事故の具体的原因は、調査・分析中」と発表。博訊新聞網は「死者が36人未満となっているのは、死者36人以上の事故が起きた場合、市共産党委員会書記が更迭されるという理由による」と指摘した。

 救援作業に携わったある作業員は、「死者は一部報道が伝えている41人に収まる訳がない。具体的には言えないが、100人前後だろう。というのも、われわれのチームだけでも20数体の遺体を運んだからだ」と話している。

 王報道官は記者会見の席上で、「被害者の名簿がいつ公表されるのか」という記者からの質問に対し、「その時になれば、必ず公表する」と答えた。(編集担当:松本夏穂)