【ウラジオストク、ソウル時事】ロシア沿海地方の当局者によると、北朝鮮の金正日総書記を乗せたとみられる特別列車がロシア極東時間20日正午(日本時間同日午前10時)ごろ、北朝鮮から国境を越えロシアのハサンに到着した。金総書記のロシア訪問は2002年8月以来9年ぶり。
韓国政府当局者も、特別列車がハサンに到着したと述べた。
ハサン駅では、極東連邦管区のイシャエフ大統領全権代表や沿海地方のダリキン知事が車内に入り、金総書記を歓迎した。列車は現地時間午後1時半(同午前11時半)ごろ同駅を出発し、北上。東シベリアのウランウデを訪問する可能性が有力視されている。
ロシア紙イズベスチヤはウランウデでメドベージェフ大統領と金総書記が会談するとの見通しを伝えているほか、韓国の聯合ニュースは金総書記がウスリースクのダムを視察すると報じている。同ニュースによれば、訪ロ期間が1週間程度になりそうだ。
金総書記の主な目的は経済支援獲得とみられ、首脳会談では、天然ガスパイプライン建設や鉄道敷設など、経済協力のプロジェクトを中心に議論が行われるとみられる。また、6カ国協議再開に向け、核問題も話し合われる見通しだ。(2011/08/20-13:25)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201108/2011082000126
貨物列車使い不審物確認=前回より警備強化-金総書記訪ロ
【ウラジオストク時事】9年ぶりに訪ロ中の北朝鮮の金正日総書記が特別列車でロシア領内を移動する際、同国当局が直前に貨物列車を運行させて線路上の不審物を確かめるなど、安全面で細心の注意を払っていることが21日、沿海地方の消息筋の話で分かった。
列車が一時停車したロ朝国境に近いハサン一帯では、道路も封鎖。2002年8月の「金総書記の前回訪ロ時よりも厳しい警備が敷かれている」(同筋)という。
特別列車は現地時間20日午後、ハサン駅を出て、シベリア鉄道に接続するウスリースクへ向け北上した。その日は鉄道運行が全面停止されていたにもかかわらず、特別列車の通過4時間前に丸太を積んだ貨物列車が通るのが目撃された。
さらに通過30分ほど前にも機関車だけが走行。その後、金総書記一行の緑色の特別列車が走り抜けたという。後方には随行する極東連邦管区のイシャエフ大統領全権代表のロシア車両が連結されていた。
列車が通過する鉄橋の両端には、ロシア鉄道当局の制服を着た要員も配置された。これについて同筋は「連邦保安局(FSB)職員ではないか」と指摘している。
列車は21日、ハバロフスク地方を経由し、ロ朝首脳会談が行われる見通しの東シベリアのウランウデに向け移動を続けた。(2011/08/21-20:19)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201108/2011082100060
ロシア訪問の金総書記、正恩氏同行せず?
【ウランウデ(ロシア東シベリア)=寺口亮一】露朝首脳会談のためロシア極東・シベリアを訪問中の北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記は21日、特別列車でシベリア鉄道を通りハバロフスクを通過、アムール州に入った。
地元情報筋によると、金総書記は午前中から約5時間半、同州ベロゴルスク近くのブレイ水力発電所を視察した。メドベージェフ大統領との首脳会談が見込まれるウランウデには23日ごろに到着するとみられる。
一方、北朝鮮の朝鮮中央通信は20日、金総書記の同行者名を伝えた。その中に後継者の三男、金正恩(キムジョンウン)氏は含まれていない。
同行者には姜錫柱(カンソクチュ)副首相のほか、中朝の経済協力事業を事実上取り仕切る張成沢(チャンソンテク)朝鮮労働党行政部長や7月に米朝協議に臨んだ金桂寛(キムケグァン)第1外務次官がおり、経済協力拡大と6か国協議再開に向け、ロシア側と調整する意図もうかがえる。
(2011年8月22日01時21分 読売新聞)
北朝鮮:金総書記、訪露で厳戒 「隠密行動」に現地批判報道
北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記はロシア訪問2日目の21日も特別列車で移動を続け、アムール州のブレヤ水力発電所を視察するなど日程をこなした。ただ、金総書記の訪露によって現地では厳しい規制が敷かれることが多く、不自由を強いられた市民らからは批判の声も上がっている。【モスクワ田中洋之、ソウル澤田克己、北京・米村耕一】
◇停車駅は立ち入り禁止
韓国の聯合ニュースによると、ロシアは00年代から北朝鮮経由の送電線を作って極東地域の電力を韓国に販売したいと南北双方に提案している。ブレヤ水力発電所は韓国向け電力の供給源と想定されている施設という。南北とロシアは03年から協議を始めたが北朝鮮が消極的な態度を取った。ロシアは北朝鮮経由で韓国に天然ガスを運ぶパイプラインと同じルートに送電線も建設すれば経済的とみているという。
現地からの報道によると、金総書記の特別列車は午前4時(日本時間午前3時)、まず極東ハバロフスク駅に停車し、機関車を交換した。特別列車は30分後に出発したが、その間、一般の乗客の構内立ち入りが禁止された。
午前10時半(日本時間午前9時半)ごろ、特別列車がアムール州のブレヤ駅に到着すると、コジェミャコ州知事らが金総書記を出迎えた。駅周辺には厳しい警備態勢が敷かれ、近くにある2階建ての民家の住民は窓のカーテンを閉めるよう求められ、写真やビデオ撮影が禁止された。
金総書記は特別列車からおろされた専用の高級乗用車に乗り、水力発電所に移動。発電所では朝鮮語のナレーション付きのPRフィルムを観賞し、実際にダムから水が放流される様子を視察した。総書記が希望したもので、現地では1カ月以上前から準備していたという。視察後、21日午後4時(日本時間午後3時)ごろ、特別列車で出発した。
ロシアでは、金総書記の隠密行動への批判が相次いでいる。「NTV」テレビは訪露自体が事前に公表されず、メドベージェフ大統領との会談の日時や場所も正式発表されていない点を取り上げ、「風変わりな外国のリーダーの一人」「自分の安全を気にかけている」「飛行機に乗らないのもそのためだ」と報じた。
また、金総書記の鉄道での移動に伴う交通への影響を懸念する声もある。特別列車がハバロフスク駅で停車した際、一般乗客や送迎客の駅構内への立ち入りが禁止された。金総書記が01年に特別列車でモスクワ、サンクトペテルブルクまでシベリア鉄道を横断した時も、各地でダイヤが大混乱し、乗客が数時間待たされる事態に発展した経緯がある。
北朝鮮の朝鮮中央通信によると、今回の訪露には、義弟の張成沢(チャンソンテク)国防委員会副委員長や金永春(キムヨンチュン)人民武力相、姜錫柱(カンソクチュ)副首相、金桂冠(キムゲグァン)第1外務次官らが随行。報道に後継者の三男正恩(ジョンウン)氏の名前はなく、北朝鮮にとどまっているとみられる。
◇事実上の妻、同行か
【モスクワ田中洋之】金総書記のロシア訪問に事実上の妻、金玉(キムオク)氏とみられる女性が同行していることが、地元通信社が配信した写真で確認された。
金総書記がブレヤ水力発電所を訪れ、芳名録に記帳する際、ウグイス色のジャケット姿の金玉氏とみられる女性が背後からのぞき込む様子が写されている。韓国の聯合ニュースは、01年と02年に金総書記がロシアを訪問した際にも金玉氏が秘書として同行したと報じている。
毎日新聞 2011年8月22日 東京朝刊
「4人目の夫人」伴う 強まる存在感、顔ぶれ経済通中心
2011年8月22日
【ハバロフスク=城内康伸】金正日総書記のロシア訪問には、総書記の元秘書で「4人目の夫人」とされる金玉(キムオク)氏が同行していることが21日、分かった。金総書記が同日、極東アムール州ブレヤの水力発電所を視察した際、地元メディア(電子版)が撮影した写真に金氏が写っていた。
金氏は、金総書記が5月に中国を訪問、北京の人民大会堂で歓迎宴が催された時にも出席し、映像が流された。金氏の露出度は増しており、権力内で存在感が強まっていることをうかがわせる。
また、朝鮮中央通信が21日公表した同行者の顔触れを見ると、経済に精通した人物が目立ち、訪ロの重点は経済協力に置かれていることを示す。同通信は「訪問は社会主義強盛国家の建設を目指す闘いを力強く推進する契機になるだろう」と伝えた。
金総書記の最側近で朝鮮労働党の張成沢(チャンソンテク)行政部長は、中国との経済協力では事実上の総責任者、朴奉珠(パクボンジュ)党軽工業部第一副部長は首相在任時、市場経済導入に積極的な人物だった。
金養建(キムヤンゴン)党統一戦線部長は対韓国政策に精通、ロシア極東から北朝鮮経由で韓国に天然ガスパイプラインを延ばす構想のため、同行させたとみられる。
一方、姜錫柱(カンソクチュ)副首相と金桂冠(キムゲグァン)第一外務次官は、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の中心人物で、協議再開に向けロシア側と話し合うとみられる。