ページ

2011/08/22

緊張緩和に向けた外交努力が水面下で続いているもよう

市民がイスラエル国旗引き降ろす カイロの大使館ビル
2011/8/22 9:34



 【カイロ=共同】イスラエル軍の攻撃でエジプト兵が死亡、同国内で反イスラエル感情が高まる中、エジプトの首都カイロで21日未明、エジプト人の若者がイスラエル大使館が入居するビルに掲げられた同国旗を引きずり降ろし、エジプト国旗を掲げた。

 エジプトの中東通信によると、大使館前には20日、イスラエル大使の追放を訴える市民数千人が集結。

 エジプト国境に近いイスラエル南部で18日、バスなどが武装勢力に襲撃され、イスラエル軍は報復攻撃を実施。エジプト兵ら5人がこれに巻き込まれて死亡した。

 エジプト政府はイスラエルに抗議し、イスラエルのバラク国防相は「遺憾の意」を表明。エジプトは駐イスラエル大使の召還を発表したが、緊張緩和に向けた外交努力が水面下で続いているもようだ。





エジプト、イスラエル摩擦高まる 駐イスラエル大使召還
2011/8/20 20:52 (2011/8/21 0:16更新)

【カイロ=花房良祐】エジプトとイスラエルの摩擦が高まってきた。エジプト国境近くを18日に武装勢力が襲撃した事件でイスラエル軍が武装勢力を掃討する際、エジプト人警察官らが巻き添えで死亡したと伝えられ、エジプト暫定政府はこれに抗議し20日、駐イスラエル大使を召還すると発表した。イスラエル軍とパレスチナ過激派の攻撃の応酬は20日も継続。アラブ連盟が21日に緊急会合の開催を決めるなど事態は緊迫しつつある。

 イスラエルはトルコとの間でも昨年5月にガザへ向かう支援船をイスラエル軍が急襲、トルコ人9人が死亡して関係が決定的に悪化した経緯がある。対エジプト関係も同様になりかねない状況で、数少ない友好国のうち2カ国を1年余りで失い、地域で孤立を深める可能性もある。


 18日の事件後、イスラエルは、国境付近で過激派を掃討。誤射でエジプト側の兵士や警察官数人が死亡したもようだ。イスラエル政府がエジプト・シナイ半島経由でパレスチナ・ガザの過激派が侵入したとみて、エジプトの治安維持能力の低下を批判したこともエジプト側を刺激した。

 イスラエルのバラク国防相は20日「遺憾に思う」と表明し、事態の早期収拾を図った。ただエジプト人が死亡したことについて首都カイロのイスラエル大使館前で19日、抗議デモが発生。世論の硬化でエジプト政府も強硬姿勢を示す必要に迫られており、関係悪化が長期化する可能性もある。エジプトでは2月、イスラエル寄りのムバラク政権が崩壊。反イスラエル感情が高まっている。

 一方、武装勢力の攻撃に報復するためイスラエル軍機は19日、パレスチナ・ガザへ2日連続の報復空爆をしかけた。AP通信によると少なくとも12人が死亡。18日には過激派「民衆抵抗委員会」の幹部らを殺害した。

 ガザの過激派は空爆に対抗し20日もイスラエル南部にロケット弾を発射。3日間で35発以上を撃ち込んだ。20日には11人が負傷し、19日にもけが人が出た。





エジプト、駐イスラエル大使召還発表を取り消し
【カイロ=長谷川由紀】エジプトとイスラエルとの国境地帯でエジプト治安要員5人が殺害される事件が18日に起き、エジプト政府は20日、「イスラエル兵と武装集団との銃撃戦の巻き添えになった」として、駐イスラエル大使の召還を決めたと発表した。

 しかし、イスラエルのバラク国防相が20日、事件について遺憾の意を表明し、軍に事実調査を行うよう指示。エジプト政府も大使召還の発表を取り消した。

 事件を受け、カイロ市内では19日夜から、イスラエル大使館周辺に市民数千人が集まり、駐エジプト大使の追放などを求めて激しい抗議デモを行うなど、両国関係を巡る緊張が高まっていた。事態の悪化を懸念する各国の関係者が収拾に向けて、エジプト、イスラエル両国に働きかけを行ったとの情報もある。

(2011年8月21日01時02分 読売新聞)