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2011/05/02

班目春樹委員長、「子供たちが年間20ミリシーベルトを浴びても良いと言ったことはない。(被曝量を)可能な限り低くしていくのが原則だ」

原子力安全委、文科省を批判 「基準値のみで判断」は安易
2011年5月2日 22時12分

 原子力安全委員会の班目春樹委員長は2日、福島第1原発事故を受けた福島県内の学校などの屋外活動制限について、文部科学省が放射線量の基準値のみを判断材料にしているとして「満足していない」と批判、表土の除去など学校の放射性物質を取り除く具体策を示すよう求めた。

 班目委員長は記者会見で、文科省からは「(基準値の)毎時3・8マイクロシーベルトを下回ったから校庭を使わせるという、非常に安易な報告があった」と説明した。会見に先立って開かれた安全委定例会でも、放射線量だけで一部学校の屋外活動制限を解除したことへの疑問や、呼吸器や飲食を通じた被ばくの調査を求める意見が委員から相次いだ。

 班目委員長は、放射性物質低減の具体策について、文科省から助言要請があれば応じる意向を示した。一方、毎時3・8マイクロシーベルト、年間換算20ミリシーベルトの基準値自体については、なるべく低く抑えることを条件に、妥当との見解を繰り返した。


 基準値を妥当とした安全委の助言で、結論に至る議事録が残されていなかったことについて、今後は議事録を残す方針を表明。原発事故への政府対応を批判し、小佐古敏荘・東大大学院教授が内閣官房参与を辞任した問題では「言っていることのいくつかは、明らかに間違っている」と不快感を示した。

 また安全委は、助言要請から回答までわずか2時間だったことに「国の政策追認」との批判があることについて、助言までの経緯をまとめた文書を示し「文科省からは4月9日に事前相談があり、数回の議論を経て『委員会が重視すべき点』として意見をまとめていた」と釈明、安易な結論ではないことを強調した。

(共同)




「小佐古氏が何に憤慨しているか分からない」班目原子力安全委員長
2011.5.2 22:45 (1/2ページ)
 福島第1原発の事故を受け、文部科学省が定めた校庭の利用基準「年間被曝(ひばく)線量20ミリシーベルト以下」をめぐって与党内からも見直し論が出る中、政府の原子力安全委員会(班目春樹委員長)は2日、定例会議を開いたが、同問題はまったく議題とならなかった。また、政府の対応を批判した小佐古敏荘(こさこ・としそう)東大大学院教授の内閣官房参与辞任について、班目委員長は会議終了後、「新聞報道しか知らないが、正直に言って小佐古氏が何に憤慨しているのかわからない」と述べた。

 同委員会は先月19日、福島県の小学校などでの屋外活動における積算放射線量の基準について文部科学省から助言要請を受け、「年間20ミリシーベルトまで」と回答。小佐古教授は先月29日の辞表提出時、「(この数値を)基礎に毎時3・8マイクロシーベルトと決まったが間違いだ」と指摘した。

 会見した班目委員長は「子供たちが年間20ミリシーベルトを浴びても良いと言ったことはない。(被曝量を)可能な限り低くしていくのが原則だ」とし、文科省が同委員会に報告した同県内の小学校などでのモニタリング結果についても「われわれは満足していない。『毎時3・8マイクロシーベルトを下回ったから校庭を使わせる』との非常に安易な報告と受け止めた」と述べ、文科省側への不満を示した。

 同委員会は文科省への回答にあたって、正式な会合を招集せず、助言要請からわずか約2時間後には「妥当だ」との助言をまとめたが、議事録も作成していない。

 こうした同委員会の手続きについて、小佐古教授は「法に基づく手順遂行に基づく判断に欠けたところがあるように見受けた」と指摘しているが、同委員会事務局は「法律に基づかない助言であり、手順遂行に問題はない」と話している。

 班目委員長は「非常にせっぱ詰まった状況で会合を開くよりも、できるだけ早く回答すべきだと判断した」と弁明したが、「事故発生から数十日が経過し、いつまでも緊急時だというのは良くない。助言については議事録を残そうとの方針転換はしてきている」と付け加えた。








決定過程も数値も「?」 揺らぐ校庭利用基準「20ミリシーベルト」
2011.5.3 00:53
 福島第1原発事故をめぐり、文部科学省が校庭の利用基準を「年間被曝(ひばく)線量20ミリシーベルト」と設定したことに反対し内閣官房参与の小佐古(こさこ)敏荘(としそう)東大大学院教授が辞任したことで、「安全の基準」が揺らいでいる。専門家で異なる数値の評価と拙速な決定過程に地元は振り回される一方だ。「20ミリシーベルト」はどのように決まったのか。

 原子力安全委員会の助言を受けて文科省が設定した校庭の利用基準は、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告を基にしている。ICRPでは、年間被曝限度量を事故発生などの緊急時は20~100ミリシーベルト、収束段階で1~20ミリシーベルトと設定。文科省は上限を20ミリシーベルトとした理由を「完全に緊急時から脱してなく、収束時とは言い切れない。緊急時と収束時の境界の数値にした」と説明する。

 文科省は、児童や生徒らが1日のうち屋内で過ごす時間を16時間、校庭など屋外で過ごすのを8時間とする生活パターンを仮定。年間20ミリシーベルトに到達するのは、屋外で毎時3・8マイクロシーベルト、木造施設の屋内で1・52マイクロシーベルトと算出。この数値を下回った場合には20ミリシーベルトには達しないとの判断から、校庭の空気中の放射線量が毎時3・8マイクロシーベルトを超えた学校のみ、屋外活動を1時間程度に制限する通知を出した。

 だが、20ミリシーベルトの設定をめぐっては当初から異論があったことも事実だ。原子力安全委員会では「子供は大人の半分の10ミリシーベルト程度に抑えるべきだ」とする委員の意見があった。だが、委員会は正式に開催されることなく、電話と対面で意見をまとめ、助言を求められてから約2時間で「差し支えない」と国の原子力災害対策本部に回答。線量基準の決定過程にも疑問符が付く。

 専門家でも見解は分かれる。近畿大原子力研究所の伊藤哲夫所長は「子供の方が放射線への感受性が高いとはいえ、がんになるリスクが高まるのは100ミリシーベルト。20ミリシーベルト以下なら全く心配ない」と指摘。一方、北海道大大学院医学研究科の石川正純教授は「(20ミリシーベルトは)若干高いという印象だ。活動制限などを行うための基準であり、安全基準と考えるべきではない」との意見だ。

 「安全ライン」が揺らぐ中、福島県郡山市や伊達市が独自で市内の小中学校などの校庭の表土除去を実施。市教委には保護者からの不安の声が電話やメールで多数寄せられている。

 一方、菅直人首相は2日、福島県の内堀雅雄副知事と首相官邸で会談し、校庭利用基準の見直しを拒否した。内堀氏は「政府関係者でいろんな考え方があり、県民は非常に不安に思っている」と訴えたが、首相は「国としての考え方がある。きちっと県民や国民に伝える努力をしなければならない」と述べ、現行基準への理解を求めた。







小中学校「20ミリシーベルト」長崎でも波紋広がる
 福島第1原発事故で、文部科学省が決めた小中学校などの屋外活動を制限する放射線量基準「年間20ミリシーベルト」の是非をめぐる議論が、被爆地長崎でも波紋が広がっている。被ばく医療の専門家の見解は一様でなく、被爆者からは「基準決定に至る経過が不透明」と政府の対応に疑問を抱く声が出ている。

 政府が定めた基準は、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に準拠。勧告では、緊急時の一般人の許容限度を年間20~100ミリシーベルト、事故が収束に向かうレベルでは同1~20ミリシーベルトを目安に対応するよう求めている。だが、子どもにそのまま当てはめると比較的高い放射線量の被ばくを認めることになるとして、専門家の批判が相次ぎ、内閣官房参与の小佐古敏荘東大大学院教授が辞任する一因にもなった。

 事故以降、被ばく医療や放射線の情報提供のため度々福島入りしている長崎大大学院医歯薬学総合研究科の山下俊一教授は「(ICRPの)緊急時と収束時の境目を取ったのが『20ミリシーベルト』。非常事態に置かれた現地の状況を踏まえれば(数値には)理論的根拠はある」と一定容認。「事態が収束に向かえば放射線量の数値も下がるとみられるが、今は福島の生活、社会環境などを踏まえると政策的に判断せざるを得ないのではないか」との見解を示した。

 日赤長崎原爆病院の朝長万左男院長は「(20ミリシーベルトで)特に何か症状が現れるわけではないが、成長期にある子どもは10ミリシーベルト程度で抑える方向で努力してもよかった」と指摘した。

 一方、被爆者団体などの思いは複雑だ。長崎原爆遺族会の正林克記会長は「20ミリシーベルトがいいか悪いかではなく、政府は将来を担う子どもたちのことを考え、安全な環境に移すことを最優先に考えるべきだ」。県被爆二世の会の丸尾育朗会長も「大人と同じ基準を成長期の子どもたちにそのまま当てはめるのはどうか」と疑問を呈した。

 政府の基準値決定の経過を批判する意見もある。文科省から基準値への助言を求められた国の原子力安全委員会は正式な委員会を招集しなかった。長崎原爆被災者協議会の山田拓民事務局長は「何か便宜的に処置したような印象を受ける。もっと議論をすべきだった」と話した。








「福島県放射線健康リスク管理アドバイザー」 兼 「文部科学省 原子力損害賠償紛争審査会委員」で有らせられる長崎大学の山下俊一センセイ





原子力安全委員会定例会