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2011/05/28

26日現在、患者は168人。そのうち腎臓に障害をもたらす溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発した重症者は全体の18%の31人。このうち17人が入院したままだ。福井県では4人が発症し、1人が死亡、もう1人は入院している

ユッケ食中毒から1カ月 重症の17人、依然入院
2011年5月28日





 4人が死亡した「焼肉酒家えびす」チェーンの集団食中毒は、発覚から27日で1カ月たった。腸管出血性大腸菌O111の付着した生肉を食べたことが主な原因とされ、依然として17人が入院中で、深刻な事態が続く。



◆168人
 食中毒は砺波店(富山県砺波市)の利用者が下痢などの症状を訴えて発覚。福井、富山、神奈川の3県の計5店に拡大した。

 26日現在、患者は168人。そのうち腎臓に障害をもたらす溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発した重症者は全体の18%の31人。このうち17人が入院したままだ。福井県では4人が発症し、1人が死亡、もう1人は入院している。

 砺波店には患者99人が集中。重症者は20%超の21人(死亡3人含む)で、通常は10%以下とされる重症化率の2倍以上にのぼる。


◆強制捜査
 福井、富山、神奈川の3県警と警視庁は、業務上過失致死の疑いで合同捜査本部を設置。砺波店やチェーン運営会社フーズ・フォーラス(金沢市)、肉を納入していた大和屋商店(東京都板橋区)を家宅捜索し、強制捜査に乗り出した。

 富山県の検査で、横浜若草台店(横浜市)の未開封ユッケ用肉と、福井、富山、神奈川の各店の客や従業員の計19人(死者4人含む)から検出した大腸菌O111の遺伝子型が一致。捜査本部は、肉が各店に納入される前に菌が付着したとの見方を強めている。

 卸業者の過失が疑われるが、大和屋商店は「生食用としては販売していない」と保健所に答えている。主張通りなら菌を除去するため肉の表面を削るトリミング作業も不要となり、こうした処置をしていなかった同社の過失を問えなくなる。

 しかし、捜査本部の事情聴取に従業員の一部は「生肉として提供される」との認識があったと述べており、フーズ社はトリミング作業を「卸売業者に依頼していた」と主張。捜査本部は過失の所在を慎重に調べている。


◆再発防止
 ユッケ人気などで生肉食は広く普及していたが、厚生労働省の衛生基準をめぐる国と保健所の解釈の相違などから、焼き肉店での衛生指導がほとんど手つかずだった問題も、浮き彫りになった。3人が死亡した砺波店には、一度も富山県の立ち入りがなかったことも明らかになった。

 厚生労働省は今秋をめどに生食用肉について衛生基準を新設するが、埼玉県はそれを待たずに生肉食の届け出制を導入する。

 現実に生肉を提供している店を適切に指導する狙いがあり、富山市保健所も同制度の検討を始めた。実態を見過ごして死者まで出した行政の不作為も、問われている。