(2011年5月28日午前7時33分)
焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件は、27日で発覚から1カ月がたった。ユッケに使われた牛肉は店舗納入前の汚染が濃厚で、運営会社や食肉卸業者のずさんな衛生管理も露呈。富山、福井両県警や警視庁などの合同捜査本部は業務上過失致死容疑などでの立件を視野に入れるが「必要な物証が集まらない」(幹部)状況に、捜査は長期化も予想される。
富山県などは24日、横浜若草台店で回収した未開封の生肉と、死者4人を含む客らから検出された大腸菌O111の遺伝子型が一致したと発表した。ある捜査幹部は「卸業者の大和屋商店が出荷した段階で、既に汚染されていたことはほぼ確実だ」との見方を示す。
これまでの捜査などで、チェーン運営会社「フーズ・フォーラス」(金沢市)と大和屋商店が、菌のついた肉の表面を削る「トリミング」をしていなかったことが明らかになっている。
ただ捜査本部は「立件に向け食中毒の回避義務責任の所在を明確にするには、どこで菌が付着したかの解明が不可欠」と指摘。5月6日の一斉捜索後も、あらためて店舗などの捜索や現場検証を行い、調理器具などから採取した菌の検体が、死亡した客らから検出された菌の遺伝子型と一致するか調べてきた。
だが大和屋商店と、埼玉県内の二つの食肉加工場の結果はいずれも「陰性」。ある幹部は「消毒は各施設で日常的に行われており、検出は難しいかもしれない」。汚染源特定の決定的な物証はいまだに見つからず、別の幹部は「地道に状況証拠を積み上げるしかない」と話す。
今後の捜査では、従業員らに加工手順や調理器具の使用方法を確認するほか、生肉を真空パックする際の殺菌工程の検証まで行い、衛生管理態勢と食中毒との因果関係の裏付けを進める構えだ。幹部は「直接証拠がない以上、脇を固める捜査を徹底せざるを得ないので簡単には進まない」。
4人が死亡し、170人もの患者が出る異常事態を踏まえた捜査。長期化も避けられない状況だが、幹部は「時間がかかっても、過失の責任をきちんと問わなくてはならない」と立件に意欲を示した。