原子力安全委員会の松浦祥次郎元委員長は1日、福島第1原発の事故を受け文部科学省で記者会見し、「原子力の利益は大きく、科学技術を結集すれば、地震や津波にも立ち向かえると考えて利用を進めてきたが、考えの一部をたたきつぶされた」と述べ、「問題の解決法を突き詰めて考えられていなかったことを申し訳なく思う」と謝罪した。
松浦元委員長らは会見で、冷却装置が復旧できなければ、大量の放射性物質が外部に流出する恐れを否定できないとして、一刻も早い装置復旧を提言。東京電力や経済産業省原子力安全・保安院の態勢の不備が一因となり、復旧が遅れていると指摘し、日本原子力研究開発機構など関係機関を総動員した態勢の構築を求めた。(2011/04/01-22:21)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201103/2011033001090
原子力委員会元委員らが陳謝
4月1日 19時31分
事態収束の兆しが見えない東京電力の福島第一原子力発電所について、国の原子力委員会や原子力安全委員会の元委員らが、1日、記者会見し、原子力の利用を先頭に立って進めてきた立場から国民に陳謝するとともに、政府は国を挙げて事態に対処する強力な態勢を作るべきだなどと訴えました。
記者会見したのは、原子力委員会の元委員長代理の田中俊一氏や原子力安全委員会の元委員長の松浦祥次郎氏、それに東京大学名誉教授の石野栞氏の3人です。
3人は、日本の原子力利用を支えてきた研究者や技術者16人を代表して、1日、文部科学省で記者会見し、「これまで原子力の平和利用を先頭だって進めてきた者として、今回の事故を防ぎえなかったことについて、国民に申し訳なく思います」と述べました。
そして、事態は次々と悪化し、収束の見通しは得られていないとして、電源と冷却機能を回復させ、原子炉や燃料プールを冷却し、大量の放射性物質の拡散を防ぐための対策を急ぐ必要があるとしました。
具体的な対策としては、▽安定した冷却機能の復旧に向けて、24時間態勢で作業を進める一方で、作業員の人数を増やして1人当たりの作業時間を制限し、被ばく量を少なくすること、▽放射性物質の拡散を防ぐとともに、汚染の影響を評価し、避難している住民が帰れるまでの手順を示すことなどを挙げました。
そのうえで、危機的な事態に専門家の知識や経験が十分に生かされていないとして、政府の下に、原子力事故の解析や放射線の計測評価など経験と技術を持った専門家を結集し、国民に情報を提供し協力を求めながら、国を挙げて事態の収束に当たることが重要だと訴えました。
復興を問う 原子力安全研究協会理事長・松浦祥次郎氏
2011年4月2日(土)08:00
(産経新聞)
■原発 事態乗り切り経験生かせ
--東京電力福島第1原子力発電所の現状をどうみる
「原子炉に水を入れて冷やし続けるとともに汚染レベルが上昇した水の漏出を抑えなくてはならない。やるべきことははっきりしているが、非常に難しい局面になっている。高いレベルの放射性物質(放射能)がある中での作業だ。現場が最もやりやすい環境を整える必要がある」
--具体的には
「重要なのは、現場のトップと国や東京電力など『中央』の人がどれだけ意思の疎通ができているかだ。原子炉に詳しい現場ですら経験したことのないことが次々起きている。現場と中央が連携を密にし、いろいろな専門家が関わるべきだ。知恵を結集させなくてはならない」
--地震国日本が原発をもつことは
「地震国でも耐えられる構造の原発を造ることは工学的に可能だ。今回の事故を教訓に想定を超える津波にどう対応するか。例えば潜水艦の技術を活用すれば、原子炉の冷却機能を失わない防水性の非常用電源を開発することは可能だ。原発の建設費に対して、高額過ぎるリスクコントロールにはならないだろう」
--今後の原子力政策はどうなる
「今回の事故を受けて、政府と社会学者や工学者が集まって議論することになる。知恵を使って日本がエネルギーを使わない社会を作ることもできるだろう。だが、それは別の次元の話だ。原発は社会を動かし経済を成長させるエネルギーの源。福島第1原発が陥ったような全電源装置が喪失しても、冷却できる次世代軽水炉はある。安全な原発が可能なのだから、今後も核エネルギーを選択する可能性は十分にある。今は事態を乗り切り、経験をどう生かすかが問われる」
福島原発事故の田中俊一氏(3月18日)講演について
http://blog.goo.ne.jp/ngc2497/e/f4e0db9c64c5ae9d9a7a1c28e28fa9e5