2011/3/31 1:17
菅直人首相は30日、首相官邸で社民党の福島瑞穂党首と会い、東京電力福島第1原子力発電所の事故に関連して、「(経済産業省原子力安全・保安院の)体制のあり方は議論になる」と語った。経産省から保安院を分離する案を検討する考えが念頭にあるとみられる。
規制官庁の保安院が推進する側の経産省の外局になっていることについて、かねて安全面のチェックの甘さが指摘されていた。保安院は経済産業省設置法で、経産省の外局である資源エネルギー庁の「特別の機関」になっている。2001年の省庁再編で設置された。それ以前は旧科学技術庁原子力安全局と旧通産省などが関係する行政を分担していた。
見直し論の中にはエネ庁から分離して経産省の下に直接ぶら下げる案があるが、「推進官庁の下に規制官庁がぶら下がる形は変わらない」との批判がある。
このため経産省そのものから分離して、内閣府の原子力安全委員会と統合させるべきだとの意見が出ている。独立機関である米国の原子力規制委員会(NRC)をモデルとする案もある。
保安院分離論はこれまでも議論されていたが、経産省は「原子力を推進する側に安全規制の専門家がいなくてもいいのか」などと主張してきた。
民主党は原子力行政について、2009年の衆院選政策集で「実効性のある安全検査体制の確立に向け、現行制度を抜本的に見直す」と指摘。国家行政組織法第3条による独立性の高い「原子力安全規制委員会」を創設する方針を示していた。
経産省と保安院、菅首相が分離検討の意向
菅首相は30日、首相官邸で社民党の福島党首と会談し、東京電力福島第一原子力発電所の事故に関連して、「原子力安全・保安院の体制を含めて議論する必要がある」と述べ、経済産業省と保安院の分離を検討する考えを示した。
今回の事故を受け、原子力の安全規制を担う保安院に関し、原子力を推進する立場の経産省の外局になっていることを踏まえて「安全面のチェックが甘かったのではないか」という指摘が出ている。民主党は、2009年の衆院選の政権公約(マニフェスト)でも、経産省と保安院の分離を前提に「原子力安全規制委員会を創設する」としており、事態が沈静化すれば、こうした方向で議論が進むとみられる。
また、首相は福島氏に「自然エネルギーの割合を20、30、40%と広げていきたい。自然エネルギーを応援する仕組みを考えたい」と語り、現在は9%の割合にとどまっている太陽光などの「再生可能エネルギー」の普及に努める考えを強調した。
(2011年3月30日19時04分 読売新聞)
原子力安全・保安院:経産省から分離「議論に」首相が見解
菅直人首相は30日、社民党の福島瑞穂党首と首相官邸で会談し、経済産業省から原子力安全・保安院を分離させる可能性について「今後、議論になる」との見方を示した。福島氏が原発建設を推進してきた経産省に原子力施設を規制する保安院が付属している問題点を指摘し、分離を要請したのに答えた。東京電力福島第1原発の事故対応を巡る同省と保安院への不信感が背景にあるとみられる。
福島氏らによると、首相は同原発事故の見通しについて「長期化を覚悟している」と説明。そのうえで「今は事故対応でいっぱいだが、自然エネルギーを応援する仕組みを考えなくてはいけない」と述べ、原発推進を前提としてきた日本のエネルギー政策を転換させる議論に意欲を示した。【青木純】
毎日新聞 2011年3月30日 23時50分(最終更新 3月31日 1時37分)