深刻な事態に陥っている東京電力福島第1原発事故について、内閣府原子力安全委員会の代谷誠治委員は1日の会見で、「経済産業省原子力安全・保安院からデータが来るのが遅い。報道を見て『えっ』と思うことがたまにある」と述べ、政府内での情報共有が不十分との認識を示した。
安全委は、国会の同意を経て首相に任命された5人の常勤委員で構成され、原子力行政の規制機関である保安院を中立な立場から指導するのが役割。原子力施設でトラブルがあった場合、通常なら委員会を開いて保安院から事故報告を受けるが、今回は事態が進行中でもあり、正式な事故報告もまだないという。
この日、放射性物質の飛散防止のために実施された樹脂散布についても、事前に正式な報告はないという。代谷委員は「いろいろな機関に本部があり、事務局員を派遣して情報を入手しているのが実情だが、どうしてもタイムラグ(時間差)ができる。プラントの状況を正確に報告するよう保安院には求めている」と苦言を呈した。【西川拓】
毎日新聞 2011年4月2日 東京朝刊
“保安院から十分報告されず”
4月2日 4時43分
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、国の原子力安全委員会は、住民の避難や屋内退避の指示など政府の決定について技術的な助言を行っていますが、助言を行ううえで不可欠な原子炉などに関する情報を経済産業省の原子力安全・保安院から十分報告されていないことが分かりました。
これは1日に開かれた記者会見で原子力安全委員会の代谷誠治委員が明らかにしたものです。
国の原子力安全委員会は、福島第一原子力発電所の事故が起きて以来、委員らが官邸に詰めて避難や屋内退避の指示など政府が決定する防護対策について、専門家の立場から技術的な助言を行っています。菅総理大臣も1日の記者会見で「避難や退避の判断をする場合には、原子力安全委員会の助言を求め、そういう助言を尊重しながら対応している」と述べています。
ところが、こうした重要な役割を担っているにも関わらず、原子力安全委員会には、十分な情報が届いていないことが分かりました。
記者会見の中で代谷委員は、原子力安全・保安院から、いまだに十分な報告がないとしたうえで、「データが届くのが遅く、報道で初めて知る情報が多いのも事実。保安院の考えについて筋道だった説明がないのは非常に困っている」と述べました。
また、「通常なら保安院に入った情報は、安全委員会に届くが、いろいろなところに対策本部ができている関係で、いつもならすぐに入ってくる情報が、クッションが入ってから伝わってくる」と述べ、情報伝達に問題があるという認識を示しました。
「こうした話が理解されると思うか」という質問に対し、代谷委員は「申し訳ないと思っている。今ある情報の中で最善の判断ができるようにしている」と述べました。
これについて経済産業省の原子力安全・保安院は「今後は事務レベルでの連携を強化して、原子力安全委員会が求める情報をスムーズに提供できるようにしたい」としています。