菅直人首相は1日夕、首相官邸で記者会見し、東日本大震災の発生から1カ月となる4月11日をめどに、有識者や被災地の関係者による「復興構想会議」を設置する考えを表明した。また、同会議の提案や計画を実行する政府の体制を今月中に整えるとしたうえで「与野党を超えて協力し、ともに計画を立てる形が生まれることを切望している」と述べ、野党に復興計画策定への全面協力を呼び掛けた。
福島第1原発事故については「現段階で十分安定化したというところまで立ち至っていない。長期戦も覚悟して必ず勝ち抜く覚悟で臨む」と述べた。
首相は被災地の復興について「復旧を超え、素晴らしい東北、日本をつくる夢を持った計画を進めたい」と述べた。復興策として、津波対策のために住民を高台に集団移住させ、海沿いの水産関係の事業所に通勤する都市構想を例示。「エコタウンや福祉都市の性格を持つモデルになる町づくりを目指す」と述べた。
復興財源として首相は、11年度予算の執行を一部凍結すると説明したが、新規国債発行や増税について「本格的な議論を始めるところだ」と明言を避けた。東京電力について「民間事業者として頑張っていただきたい」と述べ、国有化は否定した。また政府は1日、震災の公式名称を「東日本大震災」とすることを決めた。【田中成之】
毎日新聞 2011年4月2日 東京朝刊
被災地を国有化し再建、復興特別立法で方針
政府・民主党が東日本巨大地震の被災からの復興に向け、4月中の成立を目指す特別立法の概要が31日、明らかになった。
津波被害を受けた海沿いなど生活再建が難しい土地が少なくないことや、東京電力福島第一原子力発電所事故対応の長期化も見据え、国が集団移転の費用の4分の3を負担する現行制度を見直し、負担割合を引き上げる。
集団移転後の空き地を国が速やかに購入、国有地化する仕組みも導入し、地域の一体的な再整備を進めることで地域再建を図る。
財源面では、レギュラーガソリンの全国の平均価格(1リットルあたり)が3か月連続160円を超えると旧暫定税率分(約25円)を減税する制度を廃止する。減税を実施すると数千億円単位で減収になるためだ。
(2011年4月1日03時12分 読売新聞)
海辺の市街地、国有化浮上 集団移住策を政府検討
政府は2日、東日本大震災の被災地復興で菅直人首相が提唱する高台への集団移住の実現に向けた本格的な検討に着手した。既存の移転支援事業を大幅拡充するとともに、津波や地盤沈下で水没するなど復旧困難な既存の市街地は国が買い上げて国有化する案が浮上している。
ただ、集団移住は住民の合意形成が難しく、居住制限などは財産権の侵害につながる恐れがあり、実現には課題も多い。政府は海に近い地域に住民が引き続いて暮らす選択もできるよう津波に強い市街地整備も併せて検討する方針だ。
災害被災地を対象とする移住支援策には国土交通省が所管する「防災集団移転促進事業」があり、住宅団地の造成や道路整備、移転経費などの4分の3を補助している。政府は今回の震災に合わせた補助率引き上げなど、事業の抜本見直しを検討。「住むところだけ準備すれば済む話ではない」(大畠章宏国交相)として、移転先での学校や診療所などの整備も新たに支援対象としたい考えだ。
海に近い市街地について、住民が高台に集団移住する場合は、政府が買い上げて居住以外の用途で使う構想もある。ただ「被災地のためには震災前の時価で買い取る必要がある」(国交省幹部)との声もあり、費用が多額になる可能性もある。
また長年暮らした場所に住み続けることを願う人々も少なくないとみられる。政府は津波被害を軽減するため、宅地のかさ上げなどで建物が一定以上の高さになるようにし、避難路を整備して市街地を再構築することも検討している。ただ建築の規制など強制力を伴う整備手法には慎重論も出ている。
2011/04/02 17:14 【共同通信】