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2011/04/02

「国と自治体、産業界、研究機関が一体となって緊急事態に対処することを求める」 「原発は社会を動かし経済を成長させるエネルギーの源」 

原発事故、国内の経験総動員を…専門家らが提言

 福島第一原子力発電所の事故を受け、日本の原子力研究を担ってきた専門家が1日、「状況はかなり深刻で、広範な放射能汚染の可能性を排除できない。国内の知識・経験を総動員する必要がある」として、原子力災害対策特別措置法に基づいて、国と自治体、産業界、研究機関が一体となって緊急事態に対処することを求める提言を発表した。


 田中俊一・元日本原子力学会長をはじめ、松浦祥次郎・元原子力安全委員長、石野栞(しおり)・東京大名誉教授ら16人。

 同原発1~3号機について田中氏らは「燃料の一部が溶けて、原子炉圧力容器下部にたまっている。現在の応急的な冷却では、圧力容器の壁を熱で溶かし、突き破ってしまう」と警告。また、3基の原子炉内に残る燃料は、チェルノブイリ原発事故をはるかに上回る放射能があり、それをすべて封じ込める必要があると指摘した。

 一方、松浦氏は「原子力工学を最初に専攻した世代として、利益が大きいと思って、原子力利用を推進してきた。(今回のような事故について)考えを突き詰め、問題解決の方法を考えなかった」と陳謝した。

(2011年4月2日01時42分 読売新聞)







復興を問う 原子力安全研究協会理事長・松浦祥次郎氏
2011年4月2日(土)08:00

(産経新聞)
 ■原発 事態乗り切り経験生かせ

 --東京電力福島第1原子力発電所の現状をどうみる

 「原子炉に水を入れて冷やし続けるとともに汚染レベルが上昇した水の漏出を抑えなくてはならない。やるべきことははっきりしているが、非常に難しい局面になっている。高いレベルの放射性物質(放射能)がある中での作業だ。現場が最もやりやすい環境を整える必要がある」


 --具体的には

 「重要なのは、現場のトップと国や東京電力など『中央』の人がどれだけ意思の疎通ができているかだ。原子炉に詳しい現場ですら経験したことのないことが次々起きている。現場と中央が連携を密にし、いろいろな専門家が関わるべきだ。知恵を結集させなくてはならない」


 --地震国日本が原発をもつことは

 「地震国でも耐えられる構造の原発を造ることは工学的に可能だ。今回の事故を教訓に想定を超える津波にどう対応するか。例えば潜水艦の技術を活用すれば、原子炉の冷却機能を失わない防水性の非常用電源を開発することは可能だ。原発の建設費に対して、高額過ぎるリスクコントロールにはならないだろう」


 --今後の原子力政策はどうなる

 「今回の事故を受けて、政府と社会学者や工学者が集まって議論することになる。知恵を使って日本がエネルギーを使わない社会を作ることもできるだろう。だが、それは別の次元の話だ。原発は社会を動かし経済を成長させるエネルギーの源福島第1原発が陥ったような全電源装置が喪失しても、冷却できる次世代軽水炉はある。安全な原発が可能なのだから、今後も核エネルギーを選択する可能性は十分にある。今は事態を乗り切り、経験をどう生かすかが問われる」




原子力委員会元委員らが陳謝
4月1日 19時31分
事態収束の兆しが見えない東京電力の福島第一原子力発電所について、国の原子力委員会や原子力安全委員会の元委員らが、1日、記者会見し、原子力の利用を先頭に立って進めてきた立場から国民に陳謝するとともに、政府は国を挙げて事態に対処する強力な態勢を作るべきだなどと訴えました。

記者会見したのは、原子力委員会の元委員長代理の田中俊一氏や原子力安全委員会の元委員長の松浦祥次郎氏、それに東京大学名誉教授の石野栞氏の3人です。3人は、日本の原子力利用を支えてきた研究者や技術者16人を代表して、1日、文部科学省で記者会見し、「これまで原子力の平和利用を先頭だって進めてきた者として、今回の事故を防ぎえなかったことについて、国民に申し訳なく思います」と述べました。

そして、事態は次々と悪化し、収束の見通しは得られていないとして、電源と冷却機能を回復させ、原子炉や燃料プールを冷却し、大量の放射性物質の拡散を防ぐための対策を急ぐ必要があるとしました。

具体的な対策としては、▽安定した冷却機能の復旧に向けて、24時間態勢で作業を進める一方で、作業員の人数を増やして1人当たりの作業時間を制限し、被ばく量を少なくすること、▽放射性物質の拡散を防ぐとともに、汚染の影響を評価し、避難している住民が帰れるまでの手順を示すことなどを挙げました。

そのうえで、危機的な事態に専門家の知識や経験が十分に生かされていないとして、政府の下に、原子力事故の解析や放射線の計測評価など経験と技術を持った専門家を結集し、国民に情報を提供し協力を求めながら、国を挙げて事態の収束に当たることが重要だと訴えました。