ページ

2012/01/04

捜査は、平田容疑者が取り調べには供述していない肉声が接見した弁護士を通じて公表されるという異例の様相

平田容疑者:元教祖の写真「5年ほど前に捨てた」
 目黒公証役場事務長の仮谷清志さん(当時68歳)に対する逮捕監禁致死容疑で逮捕された元オウム真理教幹部、平田信(まこと)容疑者(46)が、教祖だった松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚(56)の写真を「5年ほど前に捨てた」と話していることが分かった。「信者らが(教団幹部らに)殺害されたことを報道で知り、気持ちが離れた」とも語っているという。4日午後、警視庁大崎署で接見した滝本太郎弁護士らが明らかにした。

 滝本弁護士らによると、平田容疑者は95年3月に逃走した後、信者だった落田耕太郎さん(当時29歳)や冨田俊男さん(同27歳)がリンチの末に殺害されたことを知って衝撃を受け、「もう(教団には)付いていけない」と感じ、教団に関する本も処分したという。



 さらに「松本死刑囚の法廷での情けない態度ですっかり心が離れた」といい、松本死刑囚と一緒に写った写真を約5年前に捨てたという。脱会信者の支援活動を続けている滝本弁護士は「写真を捨てるというのはものすごい決断」とし、教祖のマインドコントロールは解けているという認識を示した。

 また、平田容疑者は「出頭前にJR恵比寿駅周辺を歩いた」と話し、かつての教団「青山道場」が近くにあったため「これで見納めかという懐かしい気持ちがあった」と語ったという。出頭は「過去にも気持ちとしてはあったが、行動としては初めて」とし、年が変わる前に出頭するために、警視庁本部庁舎から約700メートル離れた丸の内署まで速足で歩いたことも明らかにしたという。

 仮谷さん事件については「信者だった(仮谷さんの)妹を救出するつもりだった」とし、仮谷さんを拉致したことに驚いて「ここまでするのか」と不信感を持ったと説明しているという。捜査関係者によると、平田容疑者は取り調べにも同様の供述をしており、警視庁は慎重に裏付けを進める方針。【松本惇】

毎日新聞 2012年1月4日 20時54分(最終更新 1月4日 21時06分)










平田容疑者:弁護士だけに詳細供述 取り調べには口重く
 17年近い逃亡生活の果てに逮捕された元オウム真理教幹部、平田信(まこと)容疑者(46)。大みそかの夜の出頭という劇的な展開で始まった捜査は、平田容疑者が取り調べには供述していない肉声が接見した弁護士を通じて公表されるという異例の様相を見せている。

 平田容疑者は、目黒公証役場事務長の仮谷清志さん(当時68歳)に対する逮捕監禁致死容疑で1日未明逮捕され、捜査本部がある大崎署に勾留されている。接見した滝本太郎弁護士らは、平田容疑者が事件後ずっと国内にいたことや特別手配中の高橋克也(53)、菊地直子(40)両容疑者とは「全く連絡を取っていない」と話していることを公表。接見時に涙ぐんでいる様子も明らかにする一方で、「本人が言っていいと言ったこと以外は全部ノーコメント」と話すなど、さらに詳しい内容を打ち明けられていることもうかがわせる。

 滝本弁護士は脱会した信者の支援活動で知られる。平田容疑者は逃亡中、出頭を呼びかける同弁護士のブログを見ており、逮捕後は警視庁を通じて自ら面会を希望したという。

 一方、取り調べの様相は異なるようだ。警視庁は潜伏先や支援者について供述を引き出そうとしているが、平田容疑者は出頭してきたにもかかわらず、「いろんな支障が出たら困る」と多くを語らないという。

 弁護士には話した出頭の経緯も、捜査幹部は「核心は黙るなど、取り調べに話していない内容もある」と話す。当初は大崎署に出頭しようとしたことや情報提供のフリーダイヤルに電話をかけたことなどは、弁護士が報道陣に明らかにした後に、捜査当局が裏付けを進めたといい、捜査幹部は「逃走の支援者に迷惑をかけたくないという思いもあるのだろうが、根底には警察不信があるのではないか」とみる。

 大崎署の捜査本部は、殺人事件を担う捜査1課が中心となった約60人態勢で、95年当時のオウム真理教事件捜査に携わった捜査員らに加え、平田容疑者の追跡捜査をしてきた公安部も動員。マインドコントロールをされた信者の取り調べには、教団の教義や組織、人間関係などについても深い理解が必要とされ、捜査幹部は「オウム捜査には独特の難しさがあり、経験を生かすしかない」と話している。

毎日新聞 2012年1月4日 11時46分(最終更新 1月4日 11時54分)








オウム事件:平田容疑者「ずっと国内にいた」 特別手配2人「連絡取ってない」
 目黒公証役場事務長の仮谷清志さん(当時68歳)に対する逮捕監禁致死容疑で逮捕された元オウム真理教幹部、平田信(まこと)容疑者(46)が、17年近い逃亡生活について「ずっと国内にいた」と話していることが分かった。特別手配中の高橋克也(53)、菊地直子(40)の両容疑者とは「まったく連絡を取っていない」と説明しているという。3日、接見した滝本太郎弁護士らが明らかにした。

 同弁護士らによると、平田容疑者は「16年間も出頭しなかったことはおわびの言葉もございません。被害者の方には心からおわび申し上げます。多くの方と社会に不安を与え、申し訳ございません」と謝罪。「震災で罪のない人がたくさん亡くなり、思うところがあった」と話し、「何とか今年(11年)中に」と出頭したという。警察庁長官狙撃事件が10年3月に時効になったことも出頭の理由に挙げたという。

 平田容疑者は弁護士に出頭の経緯も説明。それによると、12月31日午後9時前、仮谷さん事件の捜査本部がある大崎署(東京都品川区)に着いたものの、「自分のポスターがなく、門番がいない」と入ることをあきらめた。その後、情報提供のためのフリーダイヤルに約10回電話したがつながらず、110番し「平田信の担当はどこですか」と聞いたところ、「警視庁」と言われたため、警視庁本部庁舎(千代田区霞が関)に向かった。

 JR大崎駅から山手線経由で恵比寿駅に行き、東京メトロ日比谷線に乗り換えて霞ケ関駅で下車。近くの本部庁舎で出頭しようとしたが、警戒中の機動隊員に取り合ってもらえず、約700メートル離れた丸の内署に出頭。同署でも女性警察官に「うそ」と疑われたが、「ほら僕、背が高いでしょ」と説明し、署内に入ることができたという。

 一方で弁護士は、大崎署までの経路や潜伏先の場所などは「ノーコメント」とした。

 捜査関係者によると、平田容疑者に似た男が恵比寿駅や霞ケ関駅の防犯カメラに映っており、警視庁は足取りの解明を急いでいる。【伊澤拓也、内橋寿明】

 ◇仮谷さん事件「拉致計画知らず」
 平田信容疑者が「仮谷さんを拉致する計画や理由は知らされていなかった」と供述していることが分かった。警視庁は供述を裏付けるため、事件で有罪が確定した元信者らを任意で再聴取する方針を固めた。

 捜査関係者によると、平田容疑者はこれまでの調べに「井上嘉浩死刑囚らに指示され、車を運転して現場に向かった。教団を脱会した(仮谷さんの)親族を連れ戻すためだった」と供述。一方で「車を運転しただけ」と容疑を一部否認しており、仮谷さんが山梨県内の教団施設で死亡したことは「後から聞かされた」とも供述しているという。

 仮谷さん拉致事件では、松本智津夫(56)▽中川智正(49)▽井上嘉浩(42)の3死刑囚と、林郁夫(64)▽中村昇(44)の両受刑者=ともに無期懲役=ら9人が有罪判決を受けている。特別手配中の高橋克也容疑者も関与したとされる。

 確定判決によると、仮谷さんは95年2月28日午後4時半ごろ、東京都品川区上大崎3の路上でワゴン車に監禁され、山梨県上九一色村(当時)にあった教団施設に連行された。麻酔薬を注射され、同年3月1日に気管閉塞(へいそく)などで死亡した。【内橋寿明、村上尊一】

 ◇11日まで勾留決定
 東京地裁は3日、平田信容疑者の勾留を認める決定を出した。11日まで。

 決定に先立ち、平田容疑者は3日午前、裁判官の勾留質問のため留置先の警視庁大崎署から東京地裁に移送された。捜査車両の後部座席の中央に座った平田容疑者はフリースの襟に顔をすっぽりと深くうずめ、表情はうかがえなかった。髪は茶色がかった長髪だった。【池田知広】

毎日新聞 2012年1月4日 東京朝刊