今年9月まで22回に及ぶ訪朝で、民間外交に務めてきたアントニオ猪木IGF会長(68)は19日、金正日総書記の訃報に、都内で緊急会見。金総書記に関する思い出や、後継者の三男・金正恩氏の下での新体制の見通しを語った。
“北朝鮮で最も有名な日本人”とされる猪木もショックを受けた。38万人を動員した95年4月のプロレス大会「平和の祭典」をはじめ、22回訪朝。昨年10月には朝鮮労働党創建55周年記念式典に出席し、要人との親交もあるだけに、直接の対面はないという金総書記の健康問題も「何回も内々に世界の医師団が入っていた」といううわさを耳にしていた。
それでも、今年9月に軍事パレードで姿を目にした。「お立ち台にも立っていたし、健康も意外と回復しているんだな」と感じていただけに、急逝に「ただただ驚いて」しまったという。
正恩氏については「短時間で評価を上げている。万が一に備えて準備はちゃんとしていたと思う」との見方を示した。総書記の義弟の張成沢・国防委員会副委員長が正恩氏をサポートしていることも指摘し、国内の混乱はないと予想した。
また、日朝関係については「東アジアの平和や安全保障に発想を向けるのか。拉致問題が最優先事項でいっさい話をしないのか。話し合いを再開できるのか。亡くなられたからって向こうが(方針を)変更するとは思わない。日本がどう変わるか」と持論を展開した。
(2011年12月20日)
猪木、金正日総書記死去に「驚いている」
朝鮮中央通信は19日、北朝鮮の最高指導者で国防委員会委員長の金正日(キム・ジョンイル)総書記が17日午前8時半、現地指導に向かう列車の中で急性心筋梗塞で死去したと報じた。69歳だった。
北朝鮮の金正日総書記の死去について、IGFのアントニオ猪木会長(68)が、都内で会見した。猪木会長は「9月に訪朝したとき、お立ち台に立つなど健康を回復していたけど、爆弾を抱えていたんだと思う。驚いている。謹んでお悔やみ申し上げます」と話した。猪木会長は、新日本プロレス時代の95年に「平和のための平壌国際体育・文化の祝典」で北朝鮮初のプロレス大会を開催。2日間で38万人を集め、今までに22回訪朝している。
今後の北朝鮮については「来年4月15日の故金日成国家主席生誕100周年を目標に精力的に動いていたが、すでに後継者の金正恩氏がいて、さしあたっての混乱はないだろう。実質は(金総書記の)義弟の張成沢国防委員会副委員長が国を動かしていた。人はいつかは旅立つもの。万が一に備えて準備はしていたと思う」と独自の分析をした。
猪木会長が力を入れる拉致問題の解決の見通しについては、「時代は常に変わっていく。拉致も大切だが、極東のアジアの平和に目を向けることも大切。日本側が、どう変われるかが大切。総書記が亡くなったからといって、あちらが変わるとは思えない」と日本政府の柔軟かつ積極的な対応を求めた。
[2011年12月20日9時38分 紙面から]