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2011/10/06

福島第1原子力発電所から放出されたセシウムが、原発から南西方向に帯状に広がり、薄まりながら首都圏まで到達して土壌に沈着している様子が明らかになった

東京・神奈川のセシウム分布図公表 奥多摩町など高く
文科省
2011/10/6 19:47
 文部科学省は6日、東京都と神奈川県の上空から9月に航空機で測定した放射性セシウムの分布を地図にまとめて公表した。東京都内では、奥多摩町の北端で土壌中のセシウム濃度が最も高く、1平方メートルあたり6万~10万ベクレル、放射線量は毎時0.2~0.5マイクロシーベルトだった。




 9月14~18日に放射線検出器を搭載したヘリコプターを使い、セシウムの沈着量と放射線量を上空から測定した。

 最も高かった奥多摩町北端の放射線量は、「ホットスポット」と呼ばれる千葉県柏市や松戸市周辺と同レベルだった。葛飾区や江戸川区の東部などでも周辺よりわずかに高い地域があった。

 23区内や多摩東部の大部分、神奈川県のほぼ全域は、セシウム濃度が1平方メートルあたり1万ベクレル以下、放射線量が毎時0.1マイクロシーベルト以下だった。

 今回で関東1都6県と福島、宮城、山形の分布図がそろった。福島第1原子力発電所から放出されたセシウムが、原発から南西方向に帯状に広がり、薄まりながら首都圏まで到達して土壌に沈着している様子が明らかになった。

 政府は航空機による東日本ほぼ全域の汚染地図作製を目指している。今後、北は青森まで、西は愛知、岐阜、福井の各県まで範囲を広げて測定する。これまでの地図は文科省のウェブサイト(http://radioactivity.mext.go.jp/)で公開している。











放射性物質が東北自動車道に乗って首都圏にやってきている[2011年09月20日]
福島第一原発では現在、原子炉の温度を下げる作業と並行しながら、原子炉建屋をすっぽり覆ってしまうカバーの設置作業が進められている。微量ながら現在も大気中に噴出している放射性物質が、これ以上拡散しないようにするための処置だ。

この放射性物質の拡散防止が、原発事故処理における今後の課題ではあるが、実は大気中の風に乗って拡散する以外にも、意外なルートが発覚し問題となっている。

そのうちのひとつが「車」だ。8月30日、文部科学省は宮城・栃木・茨木の各県の放射線を空から観測した「航空機モニタリング」の結果を公表した。すると、福島県中通りから国道4号線や東北自動車道に沿って南西方向、つまり首都圏方向へ向かう一帯だけ、明らかに他の地域よりも高い線量が計測されたのだ。

3月の事故以来、福島からの放射性物質の拡散ルートを調査してきたタイ国立大学の研究員・小川進博士(工学・農学・気象学)は、「当初はいわば、障害物の少ない“風の道”のような場所を、3月の大爆発で発生した大量の放射性物質を含んだ大気が通過したと考えていたんです」と語る。だが実際は、「風の道」ではなく「車の道」による拡散であったことがわかった。

「4月に気象庁が公開した、3月12日から15日にかけての『スピーディー画像』(汚染拡散シミュレーション)にも、すでにこのルートは現れていました。ところが、スピーディ画像よりもずっと後(6月以降)に航空計測された今回のモニタリング図を見ると、このルートによる汚染は3月よりもずっと進んでいる。正直言って驚きました。残念ながら、“風の道”効果だけではこれは説明できない。やはり国道4号線と東北自動車道を通る車両の往来が、南西方向へと汚染を拡大させたと考えるしかないでしょう」

汚染地域を走り回った車からは、実際に数十マイクロシーベルトの高線量が検出されることもわかってきており、しかもそれらの車両をスクラップにして溶かしても放射性物質は消えることがない。とはいっても被災地の復興のためには、首都圏との車両の往来は不可欠である。

そしてもうひとつ懸念される拡散ルートが「落ち葉」である。小川博士が、こう警告する。

「福島県の総面積の7割は森林ですから、もう間もなく枯れて地面に落ちてくる広葉樹の葉には、田畑や人の居住地の総量よりも大量の放射性物質が春先からたっぷりと蓄えられているでしょう。汚染された落ち葉が地面で朽ちて分解されてしまえば、風に飛ばされたり、あるいは雨で流されたりして、汚染地域がどれだけ広がるかは想像もつきません」

冬になれば、東北地方には乾燥した強風が吹き荒れる。さらに冬を越えると春一番もやってくる。放射性物質が「何か」に乗って全国に拡散する、いわば“第二次被曝期”がすでに始まっているのである。

(取材/有賀 訓、写真/井上賀津也)