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2011/08/17

作業員不足の懸念から同原発での被ばく量を他の原発で働く場合とは別枠にするよう文書で要請

福島事故の被ばく、別枠要請=保安院、作業員不足を懸念-東電側試算、厚労省に提示
 福島第1原発事故の収束作業に従事する作業員の被ばく線量限度を厚生労働省が緊急時の特例として250ミリシーベルトに引き上げた後、経済産業省原子力安全・保安院が厚労省に対し、東京電力がまとめた試算を基に、作業員不足の懸念から同原発での被ばく量を他の原発で働く場合とは別枠にするよう文書で要請していたことが28日、分かった。保安院が同日文書を公開した。

 全国にある原発の安全確保を名目としているが、保安院が東電側の試算をそのまま引用して被ばく量規制の緩和を求めた形になり、批判が集まりそうだ。

 文書は4月1日、厚労省との協議の中で保安院が提出した。この中で、東電がプラントメーカーの試算をまとめた数字を引用し、福島原発での作業で被ばく量が50ミリシーベルト以上の作業員が約1600人、100ミリシーベルト以上が約320人出ると説明した。

 さらに、緊急作業終了後も、同原発の事故処理や全国の原発の運用に最大約3500人の技術者が必要と指摘。通常の規制値(年50ミリシーベルト、5年累積100ミリシーベルト)を適用すると事故処理で被ばくした作業員が他の原発の仕事に就けず、1000~2000人が不足するとし、「別枠にしないと、今後の原子力安全管理に重大な弊害を招く恐れがある」と説明した。

 一方で、作業員の安全に関しては、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告を引用し、生涯で1シーベルト(1000ミリシーベルト)以下の基準を守ることで担保できるとした。(2011/07/28-17:53)
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http://www.jiji.com/jc/zc?k=201107/2011072800402





作業員の被曝線量限度 厚労省に別枠要請 保安院が文書公開
2011.7.28 19:13
 東京電力福島第1原発事故の作業員の被(ひ)曝(ばく)線量について、経済産業省原子力安全・保安院が厚生労働省に対し、平常時の線量限度の枠外で扱うよう文書で要請していたことが28日、分かった。保安院が同日、文書を公開した。

 放射線業務従事者の被曝線量は通常、年間50ミリシーベルト以内で、かつ5年間で100ミリシーベルトが上限。厚労省は福島第1、第2両原発での作業に限って限度を250ミリシーベルトに引き上げたが、保安院は4月1日、従来の規制と別枠にしなければ「今後の原子力安全管理に重大な弊害を招く恐れがある」として文書で緩和を要請した。

 文書では、プラントメーカーの東芝や日立などがまとめた試算が引用され、両社などが福島第1原発で事故の収束に向けた作業に約3300人を動員し、今後の作業で約320人が100ミリシーベルトを超え、約1600人が50ミリシーベルトを超えると試算。緊急作業が終わっても、他の原発での定期検査などで最大約3500人の「熟練技術者」が必要となり、結果として1千~2千人の「熟練技術者」が不足するなどと強調している。

 一方、作業員の安全性については、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告を引用し、「生涯線量1シーベルトを順守することで担保する」とした。

 保安院の森山善範原子力災害対策監は28日夕の会見で、「被曝状況は改善されている。楽観はしていないが、現時点ではただちに作業員が不足することはないと思っている」と話した。




保安院「福島事故は別枠で」 作業員被ばく 上限緩和要請2011年7月28日 朝刊
 経済産業省原子力安全・保安院が、福島第一原発の事故収束に当たる作業員の被ばく線量について、上限値を大幅に緩和するよう厚生労働省に働き掛けていたことが二十七日、分かった。保安院は原発や作業員の安全を守るのが主な役割だが、これに逆行する行為ともいえ、批判を浴びそうだ。 

 保安院の説明では、寺坂信昭院長が四月一日、厚労省の労働基準局長と面談し、今後、収束作業で作業員が被ばくしていくと、現在の作業員の被ばく線量のルールでは、やがて人手不足になる恐れがあると説明。

 既に政府は、福島第一の事故の収束作業に限って、被ばく線量の上限を二五〇ミリシーベルト(通常の上限は、年間五〇ミリシーベルト、五年間で計一〇〇ミリシーベルトまで)まで緩和していたが、寺坂院長は、福島第一での被ばく量は、通常時の上限値に含めないよう緩和を求めた。

 この通り緩和されると、仮に福島第一で二五〇ミリシーベルトを被ばくしても、別の原発に移ってしまえば、「五年間で一〇〇ミリシーベルト」の枠が残ることになる。最悪の場合、二年間で三五〇ミリシーベルトまでの被ばくが認められることになる。

 面談に先立ち保安院は、東京電力に対して今後の収束作業で五〇ミリシーベルト以上の被ばくをする作業員が何人くらい出るか予測するよう指示。東電が協力企業などから予測値を集めた結果、約二千人という数字が出た。

 保安院側はこの数字を面談の席で厚労省側に示し、大幅緩和を求めたという。

 厚労省は福島第一での被ばく量を別枠扱いにすることは拒否した。代わりに、福島第一での被ばく量が五〇ミリシーベルトを超えても、これまでなら一年間、他の原発で働けなくなるところを、五年間で一〇〇ミリシーベルトを超えない範囲なら作業を続けてもよいと認めた。四月二十五日付で保安院に伝えた。

 保安院の森山善範原子力災害対策監は「一義的には作業員の被ばく管理が保安院の役割。一方、事故収束も大切で、緩和を求めた。東電の懸念を踏まえた対応だが、東電から正式に要望されたことはない」と述べた。被ばく予測については「(事故当初は)今後の見通しが立っていないことから、大まかな概算しかできなかった」と、根拠が薄いことも認めた。






7月27日

福島第1原発:被ばく50ミリ超1600人 経産省が試算
 東京電力福島第1原発事故の収束作業にあたる作業員について、経済産業省が「被ばく線量50ミリシーベルトを超える作業員は約1600人」と試算していたという内容の文書があることが26日、市民団体による情報公開請求で明らかになった。

 文書は厚生労働省の内部資料で被ばく労働問題に取り組む「全国労働安全衛生センター連絡会議」が公開請求し、6月に開示された。文書には経産省からの情報として、「今後50ミリシーベルトを超える者が約1600名と試算される」などと記されていた。

 資料作成の日付は4月25日。多くの作業員が50ミリシーベルトを超えて被ばくすると予想されることから「50ミリシーベルトを超えた者にも放射線業務に従事してもらわなければ他の原発の安全性の確保が困難となる」と懸念。その上で「5年間で100ミリシーベルトを超えないよう指導する」と、線量管理の方針について記載されていた。

 放射線業務従事者の被ばく上限は法令上、通常時で年間50ミリシーベルトと規定。東電によると13日現在、緊急作業時の上限となる250ミリシーベルト超の被ばくが確定したのは同社社員の6人。50ミリシーベルト超は東電と協力企業の作業員計416人。経産省原子力安全・保安院は「実際に試算をしたかも含め、すぐには確認できない」としている。【池田知広】

毎日新聞 2011年7月27日 2時36分(最終更新 7月27日 9時02分)