政府は15日、環境省の外局として「原子力安全庁(仮称)」を設置し、原子力規制行政の独立・強化を狙う組織改革の基本方針を閣議決定した。原子炉や核燃料物質の使用に関する規制、原発の新増設などの許認可権限を同庁に移す。テロや核物質の盗難対策のため、電力会社の監督や警察・自衛隊などとの連携も担う。月内にも準備室を設置し、関連法案を年明けの通常国会に提出。来年4月の発足を目指す。
安全庁の設置は原子力の「規制と利用」を分離させるのが狙い。原発を推進してきた経済産業省から、規制を担当する原子力安全・保安院を分離し、内閣府原子力安全委員会、文部科学省の放射線モニタリングの司令塔機能などと統合する。
「事故発生時の初動対応その他の危機管理」を重要な役割と位置づけ、危機管理対応の専門官を新設する。環境相の助言・諮問機関として「原子力安全審議会(仮称)」を置き、原子力規制行政の中立性を保つ方針だ。
来年4月以降は「第2段階」として、12年末までかけてさらに組織を強化する方策を検討。新たに制定するエネルギー基本計画や事故調査・検証委員会の報告などを踏まえ、組織を改編する。
新組織では人事の独立性にも留意した。安全庁長官には官僚出身者だけでなく、民間有識者も含め幅広く人選をする方針。
経産省内で原発を推進する資源エネルギー庁と、規制する保安院との間で人事異動が行われ、「なれ合いになる」と問題視されてきた。安全庁では、他府省から来た幹部職員を元に戻さない「ノーリターンルール」を徹底させる。
安全庁の参考になったのは脱原発を進めるドイツ。チェルノブイリ原発事故を受け、86年に環境と原子力規制行政を一本化する「連邦環境・自然保護・原子力安全省」を設置した。安全規制の基本政策を策定する一方、実務は州政府が担う。
米国の「原子力規制委員会」(NRC)は独立性が高く強力な権限を持つ。5人の委員と約3000人の職員で構成、放射線被害から環境を守るため地方組織が設置されている。【笈田直樹、関東晋慈】
毎日新聞 2011年8月16日 東京朝刊
2011/08/16
経産省内で原発を推進する資源エネルギー庁と、規制する保安院との間で人事異動が行われ、「なれ合いになる」と問題視されてきた。安全庁では、他府省から来た幹部職員を元に戻さない「ノーリターンルール」を徹底させる。
原子力安全庁:新増設を許認可 他府省の幹部戻さず