2011年 6月 3日 8:00 JST
世界保健機関(WHO)は2日、欧州で拡大して18人が死亡、数百人が発症し、経済、外交問題にまで発展している腸管出血性大腸菌O(オー)104について、菌はこれまでにヒトの疾病原因として検出されたことのない致死性のものであることを明らかにした。
WHOによると、遺伝子解読の暫定的な結果では、この菌株は二つの異なった大腸菌の突然変異体であることが示唆されており、これが致死性の遺伝子を持つことで、なぜ欧州全域で猛威を振るい、危険性が高いのかが説明できるという。
米疾病管理予防センター(CDCP)のロバート・トークス博士によると、この大腸菌(O104H4)はまれで、これまでヒトの疾病では検出されたことがないものの新種ではなく、1990年代に韓国で1件だけ報告されている。
今回感染したのは1500人以上で、うち499人が腎機能障害の合併症を起こしている。既に少なくとも欧州の8カ国で発症が見られるが、原因の特定には至っていない。同博士によれば、最も致死率が高いものの一つと見られるこの大腸菌は数種類の疾病を引き起こす能力があることが明らかだという。
ほぼ全ての患者はドイツに住んでいるか、あるいは最近同国を訪れた人たちで、発生件数の多いドイツ・ハンブルクを最近訪れて感染した人が現在米国内に2人いる。発生はおおよそ北ドイツに限定されてはいるものの、欧州の野菜生産者は大腸菌不安が高まる中で浮き足立ち、他方責任の所在をめぐってドイツとスペインの間に外交的小競り合いも起きている。
ロシアは2日、欧州連合(EU)からの生鮮野菜・果実の輸入を全面的に禁止した。これに対してEUは、やり過ぎだと批判した。ロシアでは感染の報告はない。
スペインの政治家は、同国のキュウリが原因だとしたドイツに引き続き補償を求めている。ハンブルクの保険当局は5月31日、スペイン産キュウリが原因ではないと発表した。スペインの農民は2日、バレンシアにあるドイツ領事館の前に300キログラムのキュウリをばらまいて抗議した。ドイツはスペインのキュウリの主な輸出先で、昨年の輸出量は14万トンだった。
業界関係者によると、欧州でのキュウリの値段は数週間前は1本20ユーロセント程度だったが、現在は5~7セントにまで下げている。
グローバル・トレード・インフォメーション・サービシズによれば、世界の野菜輸出ランキングのトップはオランダで、昨年の輸出額は77億ドルだった。以下、中国(73億ドル)、スペイン(54億ドル)の順。また、スペインとオランダにとってドイツが最大の輸出先となっている。
記者: Timothy W. Martin, Laura Stevens and John W. Miller