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2011/05/04

一部の重症者らは臨床医師のもとで透析や輸血、血しょう交換など、全身治療を受けている。今のところ、退院者や症状が改善した患者はいないという

焼き肉店食中毒、予断許さない状況 急激な容体変化警戒
2011年5月4日
 男児2人が死亡した焼き肉チェーン「焼肉酒家えびす」(本社・金沢市)の集団食中毒で、富山県内で中毒症状を訴えた患者のうち重症者は3日夕現在で計23人になった。症状が軽く見えても、急激な容体の変化もありうるため、予断を許さない状況だという。

 県によると、3日午後4時現在の段階で、県内の同チェーンで飲食した食中毒患者は死亡男児を含め計59人。入院しているのは34人で、腎臓障害を引き起こす溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症している重症患者は23人に上った。うち4人は10歳未満の子ども。数人は脳症にまで進行しているという。



 重症者の内訳は、砺波店、高岡駅南店、2日に新たに1人の疑い例が出た富山山室店の3店舗で、男性8人、女性15人。

 免疫力が弱く、重篤化の危険性が高い10歳未満の子どもも男児1、女児3の計4人に上る。県健康課などによると、一部の重症者らは臨床医師のもとで透析や輸血、血しょう交換など、全身治療を受けている。今のところ、退院者や症状が改善した患者はいないという。

 HUS発症率は通常、食中毒患者のうち1~10%程度。だが今回は患者59人のうち23人がHUSを発症した。同課感染症・疾病対策班長の松倉知晴医師は、「原因はまったく想像がつかない」と首をひねる。

 今回の集団食中毒を受け、国の定める生食用食肉の安全基準と、実態との乖離(かいり)も浮き彫りになった。

 運営会社の「フーズ・フォーラス」の勘坂康弘社長は、2日の記者会見で、生食用の安全基準を満たしていない肉を提供していたことを認めた上で、「どの焼き肉店でも、慣習的にそうしている」と釈明。

 厚生労働省は1998年、「生食用であることを表示する」など生食用食肉に関する安全基準を自治体に通知。だが、通知に罰則規定はなく、全国12カ所にある生食用の食肉処理施設で出荷されているのは馬肉で、09年に牛肉が出荷された実績はないという。同省監視安全課は、自治体を通じて「生食用の明記がない食肉を提供しない」など指導を徹底する予定という。






 県内患者58人に 被害さらに広がる
(2011年05月03日 20時36分)

えびすの集団食中毒事件では、高岡と福井の男の子2人が腸管出血性大腸菌O(オー)111により、溶血性尿毒症症候群を発症し、死亡しています。

また、患者の数は県内で58人にのぼるなど被害が広がっています。

県内だけでなく、福井県と神奈川県にまで波及した一連の食中毒事件。
焼肉酒家えびすの系列店で生肉のユッケなどを食べ、食中毒症状が確認されている県内の患者は、3日午後4時現在58人で、このうち重症は22人にのぼっています。

被害が拡大する中、県の相談窓口には3日午後4時現在、297件の問い合わせがあり、今後も県内4つの厚生センターと富山市保健所で相談を受け付けています。

また、えびすを経営するフーズ・フォーラスは2日の会見で、各店舗で自主的に取り組んできた仕入れた生肉の細菌検査をここ2年ほど実施していないことを明らかにしました。

フーズ・フォーラスでは、2004年11月から5年近く、2か月に一度、定期的に自主検査を行っていました。
しかし、東京都の卸売業者と取り引きを始めた2009年7月を最後に検査は実施しておらず、勘坂康弘(かんざか・やすひろ)社長は、「自主検査で一度も菌が検出されなかったのでやめた」と危機管理の甘さを認めています。

また、フーズ・フォーラスは仕入れた生肉について、卸売業者からユッケに使えるとの提案を受けていたので、生食用に適さない肉を販売していたという認識はないとしています。