ユッケなどを食べた客が病原性大腸菌O111に感染し死亡した焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件で、富山県は24日、死亡した4人を含む19人から検出されたO111の遺伝子型と横浜若草台店(横浜市青葉区)の未開封パック入りのユッケ用肉から検出されたO111の遺伝子型が一致したと発表した。富山県警などの合同捜査本部は店舗に肉が届く前に菌が付着した可能性が高まったとして汚染源特定を急いでいる。
同県によると、死亡した6歳男児2人と砺波店(富山県砺波市)で食事し死亡した女性(70)の菌の遺伝子型が一致。同店の客で死亡した女性(43)と横浜若草台店の肉からは毒素を出さないO111が検出されたが、遺伝子型については、死亡した3人の毒素を出す菌と一致した。【岩嶋悟】
毎日新聞 2011年5月25日 大阪朝刊
ユッケ食中毒菌汚染源、濃厚になった大和屋
焼き肉チェーン「焼肉酒家えびす」(金沢市)の集団食中毒で、横浜市青葉区の系列店で回収されたユッケ用もも肉に付着していた大腸菌O(オー)111の遺伝子型と、富山、福井両県の死者4人からの検出菌が一致したことで、汚染肉が卸元の食肉加工卸業者「大和屋商店」(東京・板橋)で切り分けられるなどして各店舗に納入されたことが濃厚となった。
県警などの合同捜査本部は、横浜市の肉が加工された先月13日に汚染肉が扱われた可能性があるとみて特定を進めるとともに、大和屋での衛生管理について詳しく調べる。
捜査関係者などによると、大和屋では作業日に、肉の加工開始前と終了後に施設内を殺菌している。先月13日に加工された横浜の肉に付着していたO111の遺伝子型が、死者4人の菌と一致したため、同じ日に扱われた肉か、一つの塊の肉に付いていた菌が分かれた可能性があるとみている。
大和屋幹部は、これまでの捜査本部からの聴取で「加熱用肉として納入していた」などとし、菌がつきやすい表面をそぐ「トリミング」や、細菌検査など生食用肉に必要な作業を行っていないことを説明。内臓肉などと加工台を分けず、調理器具も使い回していたことがわかっており、捜査本部では、こうした加工過程が汚染を広げたのではないかとみて、さらに事情を聞く。
県衛生研究所が各店舗で食事をした患者らの検出菌の遺伝子型を照合したところ、今月2日に福井渕店の6歳男児(死亡)と、砺波店の6歳男児(死亡)ら4人が同じ遺伝子型のベロ毒素2型O111で一致。同23日には、砺波店のこの6歳男児が、同店の70歳女性(死亡)と富山山室店の客1人とも同じだったことがわかった。
また、同24日には、横浜市の系列店の肉に付着した菌と、砺波店の6歳男児、43歳女性の死者2人を含む患者8人、駅南店(高岡市)の患者2人、同店従業員2人、横浜市の系列店従業員1人の計13人から、同じ遺伝子型で毒素を持たないO111が確認された。43歳女性からは当初、菌自体は検出されなかったが、便を再検査して培養したところ、O111が見つかった。
O157についても、今月16日に横浜市の客1人と砺波店の患者1人の遺伝子型が一致した。
今回の調査で検出された毒素を持つ菌と持たない菌は、バーコードのように無数に並んだ遺伝子パターンのうちの1本が異なるだけのため、県は「一致」と判断した。
(2011年5月25日10時53分 読売新聞)