2011年5月3日 21時13分 更新:5月4日 0時40分
3月12日の午後4時時点での放射性ヨウ素の拡散予測 |
政府は3日、東京電力福島第1原発の事故で、公開していなかった放射性物質の拡散状況を予測した約5000枚のシミュレーション(試算)結果についてホームページ上で公開を始めた。試算結果は、実際に各地で計測された累積放射線量の分布状況とほぼ重なる傾向にあり、政府の情報公開の遅れに対して改めて批判が出そうだ。
試算は、文部科学省が開発した「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI)で実施した。公開されたのは、ヨウ素など1ベクレルの放射性物質が原発から放出され続けたと仮定した場合、風向きなどを考慮してどう放射性物質が拡散するか予測した結果。例えば、1号機原子炉建屋で水素爆発が発生した直後の3月12日午後4時時点の試算結果では、北北西方向に放射性物質が広がる様子が分かる。また、2号機の圧力抑制プール付近で爆発発生後の同15日午後の試算結果では北西方向に放射性物質が拡散する状況がうかがえる。
SPEEDIの情報公開を巡っては、細野豪志首相補佐官が先月25日の記者会見で全て公開すると発言。だが1日夜になって約5000枚もの未公表の試算結果があることが判明し、細野氏は2日の会見で「(文科省などが公開しなかったのは)市民に不安を与え、パニックが起きるのを恐れたため」と謝罪した。
NPO法人「原子力資料情報室」の伴英幸共同代表は「SPEEDIは事故直後の防災対策に役立てられなかった時点で大きな問題がある。さらに放射性物質の拡散も市民にとっては高い関心事で、試算といえども隠さずに、説明を尽くしながらもっと早く出すべきだった」と話す。【河内敏康】
拡散予測データ5000件公開
5月3日 13時18分
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、放射性物質がどのように拡散するかを予測したデータについて、政府は、これまで公表していなかったおよそ5000件のデータを3日からホームページで公開しています。
このデータは、「SPEEDI」というコンピューターシステムを使い、放射性物質がどう拡散するかを気象や地形の情報などを基に予測したものです。3月11日以降、放射性物質が拡散すると予測される範囲を1時間おきに地図上に示したおよそ5000件のデータが、3日から内閣府の原子力安全委員会のホームページなどで公開されています。
このうち、福島第一原発2号機の圧力抑制室付近で爆発が起きた3月15日の午後10時の予測データは、放射性物質が画面からはみ出すほど北西に大きく流れ出しています。
こうした予測は1時間当たり1ベクレルの放射性物質の放出が続いたと仮定して計算されましたが、文部科学省は「無用の混乱を招きかねない」として一部を除いて公表していませんでした。政府と東京電力の統合対策本部の事務局長を務める細野総理大臣補佐官は、2日の記者会見で「厳しい情報でもしっかりと説明すればパニックは起きないと考えている。公表が遅くなったことはおわびするとともに、今後はデータをすぐに公開していきたい」と話しています。
「3月15日午後10時予測データ」を探してみた。
原子力安全委員会
○ 文部科学省 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による計算結果
⇒ これまでの予測計算結果はこちら
文部科学省 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)
これまでの予測計算結果
3月15日(火)⇒22:00
http://www.nsc.go.jp/mext_speedi/20110315/201103152200.pdf
※ 2011年5月22日A.M8:00現在、上記のPDFは、
作成日:平成23年5月13日 15:13:25、更新日:平成23年5月15日21:57:56 のものに差し替えられています。
政府が発表、「開示でパニック懸念」
政府と東京電力からなる福島原子力発電所事故対策統合本部は2日、「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」による未公表の予測結果が約5千件にものぼる、と発表した。原子力安全委員会が3日以降、ホームページ上で公開していくという。
SPEEDIは原発事故が起きた際の放射性物質の飛散状況を予測するために文部科学省などが113億円を投じて開発・運用するシステム。福島第1原発事故後、ほとんど予測結果が開示されておらず、専門家らが強く批判していた。
事故直後から文科省や経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委が別々にモニタリングデータから放射性物質の量を逆算し、飛散状況を予測していた。なかには原子炉の中の放射性物質がすべて放出されたと想定した結果もあるという。
2日の会見で統合本部の事務局長を務める細野豪志首相補佐官は「(事故当初では開示によって)国民がパニックになる懸念もあったと判断したのではないか」と語った。
また、文科省が学校の校庭の利用基準を「年間被曝(ひばく)線量20ミリシーベルト以下」と定めた問題に関し、原子力安全委は2日、決定までの経緯を公表した。国際放射線防護委員会(ICRP)などの勧告を基に決めたという。同委の決定では、議論の時間が短く、議事録もないなど科学的な根拠を疑問視する声が強かった。
統合本部は、東電が4月17日に公表した事故収束に向けた工程表の進捗状況を今月17日にまとめて公表することも明らかにした。検証結果によっては対策の見直しもあるという。
放射性物質拡散予測、文科省が公表 震災翌日から5日分
2011年5月4日2時27分
政府は3日夜から、東京電力福島第一原子力発電所からの放射性物質の広がりについて、「緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)」を用いて予測した結果を、順次ホームページ上で公開し始めた。これまで非公開とされていた。あくまでも想定だが、具体的な放射性物質の拡散の様子がわかる。迅速に公表していれば、避難方法の検討などに役立っていた可能性がある。
文部科学省は、地震翌日の3月12日から同16日までに行った38件について公開した。12日午前2時48分には、1号機の格納容器の圧力が異常上昇したことを受け、放出された場合の24時間後までの影響を見積もっていた。同日午後6時4分には1号機の水素爆発を受けた計算もしていた。
また、経済産業省原子力安全・保安院は地震のあった11日の夜から15日にかけて42件の計算をしていた。
細野豪志首相補佐官は今月2日、関係機関が行った拡散予測をすべて明らかにするとの方針を示していた。計算結果は、文科省ホームページ(http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1305747.htm)と、保安院ホームページ(http://www.nisa.meti.go.jp/earthquake/speedi/speedi_index.html)にそれぞれ掲載されている。
文部科学省
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による計算結果
原子力安全・保安院
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の計算結果について