東京電力福島第1原発の重大事故を受けて、県内の原発の地震・津波対策の実施状況を確認するため、県と県原子力安全専門委員会の委員による「安全対策検証委員会」の初会合が1日、県庁で開かれた。原発を運転する3事業者に対し、具体的な対策の内容や時期などを明記した実施計画の提出を求めることを決めた。
国も各電力事業者に対し、津波災害による全電源喪失時の対策をとるよう指示しているが、同委はこれと並行して安全対策の協議を進める。
委員会では、「緊急停止後に原子炉を冷やし続けるため、海や大気など放熱ルートを確保し、具体的手順を考えておくべきだ。防災訓練にも取り入れる必要がある」「福島第1原発事故では対応の判断が遅かったと言われている。誰が判断するのか、はっきりしていることが重要」などの意見が出された。【安藤大介】
毎日新聞 2011年4月2日 地方版
福井県、原発安全対策を監視へ 事業者に実行計画求める
2011/4/2 5:24
全国最多の14基の原子力発電所を抱える福井県が、電力事業者による安全確保対策の監視に乗り出した。関西電力などに対して、個別に要請してきた具体的な取り組みが、着実に実行されているか検証できる仕組み作りを急ぐ。原発の安全を確保することで、これまで進めてきた国内外の原子力分野の人材育成の拠点づくりもさらに前進させたい考えだ。
1日、有識者でつくる県原子力安全専門委員会(委員長・中川英之福井大学名誉教授)の委員4人と県で構成する新組織「安全対策検証委員会」を立ち上げ、初回会合を福井県庁で開いた。
電力事業者はこれまで県側の要請に対し、移動できる電源設備の設置といった対策と、それらに必要な投資をする姿勢を示している。東京電力福島第1原発事故の原因究明の結果新たな知見が明らかになった場合には、必要な対策を打つことも表明している。
ただこれらの対策が、迅速かつ着実に実施されているかどうかを検証する仕組みはなかったため、監視を目的とした新組織を立ち上げることにした。会合では「いつまでに何をするのかを明らかにした詳細な実行計画を作成し、チェックしていく必要がある」(中川英之氏)といったことが指摘され、事業者に対し、実行計画の提出を求めていくことを確認した。
福島県を上回る数の原発がある福井県はこれまで、原子力関連施設の集積を生かして産業の高度化をめざす「エネルギー研究開発拠点化計画」を推し進めてきた。福島第1原発の事故は計画推進に短期的には逆風となるものの、原発の安全を確保し、計画を維持したい考えだ。
県は同日、敦賀市の若狭湾エネルギー研究センター内に同計画の柱の一つである「県国際原子力人材育成センター」をオープンした。
センター長には日本原子力研究開発機構出身の河西俊一氏が就任、10人の体制で業務にあたる。今年度は原発導入を計画する海外の行政担当者を主な対象に2コースを開講。国や県、電力会社、研究機関の関係者が講師を務め、県内原発での実施研修も行う。
センター開設準備に携わってきた若狭湾エネルギー研究センターの来馬克美専務理事は「一時的な逆風はあるかもしれないが、事故を受けて、安全確保を担う人材育成の重要性は高まる。センター開設の意義は大きい」と話している。