2011年 03月 14日 16:10 JST
[東京 14日 ロイター] 午後3時のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点から小幅上昇して82円前半で推移している。海外勢による、東日本大震災を受けたリパトリ期待の円買いが一巡したことに加え、日銀による潤沢な資金供給もあってドル/円は値を戻した。日銀は資産買い入れ枠を10兆円に倍増する追加緩和を発表したが、ある程度予想されていたとして円の反応は限られた。
大震災を受けてドル/円は、海外勢を中心に、11日の海外時間から日本企業による円のリパトリを期待した円買いが活発化。1995年1月の阪神大震災の際、生損保などが保険料支払いのために海外資産を取り崩しリパトリを行ったことからの連想が働いたという。その後、95年4月にドル/円は79.75円の史上最高値をつけている。
しかし「あまり説得力のないシナリオで、余震があるたびに(被害の深刻さから)巻き戻しが入った。それも一服して、このあとのドル/円の方向感は定まっていない。大震災ではこれ以上動かないのではないか」(大手銀行)との声が聞かれた。原子力発電所の事故で放射能漏れや電力供給への不安が広がるなど、被害状況の把握が進むにつれて状況の深刻さが明らかになってきている。
一方、日銀は震災を受けて明日まで続くはずだった金融政策決定会合の日程を前倒しし、きょう中に結論を出すとしていたことから、市場には日銀の追加緩和期待も広がっていた。
朝方から断続的に総額15兆円の即日資金供給を実施したことも、日銀のアクションへの期待を強めた。「朝方にまず7兆円を供給したときは、資金繰り支援スタンスを示す意味で市場にインパクトを与えた」(大手銀行)という。14日の当座預金残高は32兆円と、量的緩和時並みに膨らむ見通し。
実際、日銀は午後に資産買い入れ枠を10兆円に倍増する追加緩和を発表したが、市場では逆に「織り込み済み」(クレディ・アグリコル銀行外国為替部ディレクター、斉藤裕司氏)として、円の反応は限られた。
斉藤氏は「ポイントはさらなるアクションがあるかどうかだ。東日本大震災の被害はまだ全容がわかっていない。被害の拡大に応じて一段の追加緩和もあり得る」としている。
また「日銀が予想以上に早いタイミングで追加的な緩和を実施したことで、為替介入のタイミングが早まる可能性があるとみている。日本がまず金融政策のツールを最大限に活用したこと、今回の震災の影響で海外当局の容認を得やすいことなどから、将来的に、円高を阻止する為替介入が実施しやすい環境になった」(野村証券金融市場部のシニア為替ストラテジスト、池田雄之輔氏)との声も聞かれた。
<震災受け日本からヒト・カネが脱出するシナリオ>
草野グローバルフロンティア代表取締役の草野豊己氏は、東日本大震災を受けて「海外勢は不透明感のなかで最悪シナリオに基づいて動いている。震災被害に加え、海外勢は放射能問題にも神経質だ。日本からヒト・モノ・カネが脱出する。株式は売られ、一方で円は日本企業などのリパトリで買い進まれる」と警告している。
草野氏は、今回の地震を受けた海外勢が、1995年1月の阪神大震災を振り返って動いていると指摘。当時は、保険金支払いのために日本の生損保が海外資産を取り崩してリパトリを進めたことが、95年4月の円の史上最高値の一因になったという。また、日経平均は震災のあと、ベアリング事件を経て7月に底を打つまで約27%下がった。
今回は、阪神大震災を上回る日本最大の地震。さらに原発事故を誘発したため電力供給が細り、工場の稼働や電車運行停止で人の移動も制限がかかっている。また、放射能漏れに対する警戒で避難地域が広域化。「さらに避難地域が広がれば、経済が動かなくなる地域が広がる。首都圏にかかったりすれば、経済中枢から人がいなくなるリスクも出てくる。
日本最大の地震を受けて、日本経済も最大のリスクの上に立たされている」(草野氏)という。
そのうえで、草野氏は、阪神大震災と同じ規模でマネーフローに変化が起きるとすれば「日経平均は7000円台まで下げる可能性がある。円高も進む」とみている。
(ロイターニュース 松平陽子)