東京都目黒区上目黒の元会社役員大原道夫さん(87)夫妻が自宅で殺傷された事件で、殺人容疑などで逮捕された福島県いわき市の自称無職木村義昭容疑者(65)が11日、「高級住宅地に行って金を取ろうと思った」と供述した。数百万円の借金があるという。一方、なぜ被害者宅を狙ったのか不自然な点も多く、警視庁目黒署捜査本部は怨恨(えんこん)説も含め調べている。同容疑者は同日午後、送検された。
本当に金目当ての犯行だったのか。木村容疑者は「高級住宅地に行って金を取ろうと思った。抵抗されたので刺した」と、計画性がなかったことを強調。福島から上目黒に行った理由は「金持ちが住んでいるというイメージがあった」といい、「(高級住宅地として有名な)田園調布は遠いから」と交通の便を考慮したという。
大原さんとは「面識はない」とし、「たまたま目についたのでその家に入った」と供述。大原さんと妻の瑠璃子さん(81)も「知らない男だった」と説明していた。木村容疑者は知人から数百万円の借金があるというが、なぜ突然上京して、大原さん宅を狙ったのか、不自然な点が多く、捜査本部はほかの動機がないか、さらに詳しく調べる。
木村容疑者は40数年前から約10年間、川崎市に住んでいたと話している。いわき市の今の住まいに引っ越してきたのは約20年前。最近まで福島で産業廃棄物を運搬する仕事に携わっていたといい、現場周辺の地理には詳しくないとみられる。
事件現場から最寄りの中目黒駅に近い不動産会社の女性社員は「都内で高級住宅地といえば普通、田園調布。それ以外でも、成城などを思い浮かべるはず。どうして上目黒を選んだのか不思議」と首をかしげた。同じ上目黒でも高台に位置する地域は有名芸能人も住む高級住宅地とされるが、大原さん宅はその麓にあり、「一段、値が落ちる」(同社員)という。
しかも、大原さん宅前は昼夜問わず、中目黒駅に行き来する人で絶えないため、強盗に入るには人の目に付きやすい。また、公道から同宅敷地内に入り、玄関までは階段が12段もあり、“たまたま目について入る”構造ではない。
また、目撃情報によると、木村容疑者は大原さんに馬乗りになって「殺してやる」と叫び、胸や背中など10数カ所を刺した。一部は内臓まで達した。悲鳴を聞いて駆け付けた近隣住民2人から引き離された後も、さらに大原さんに襲いかかっており、明確な殺意があったとみられていた。
犯行後は駅のトイレで、ボストンバッグに入れていた衣服に着替え、靴も履き替える用意周到ぶりだった。
捜査本部によると、木村容疑者は事件前日、いわき市から東京駅に向かう高速バスを予約。家族には「仕事に行く」と伝えていた。「その日(犯行日)の夜に高速バスで福島に帰った。バッグと(犯行時に着ていた)ジャンパーは自宅近くのごみ捨て場に捨てた」と供述している。自宅の家宅捜索ではバッグなどは見つかっていない。
▼元東京地検検事大沢孝征弁護士 このまま供述を変えず、容疑者と被害者の接点が出てこなければ、強盗の目的で、相手の抵抗を抑圧する中で殺人をしたということで強盗殺人罪で起訴される可能性もある。実際に金品を取ったか取らないかは同罪の構成要件ではない。強盗殺人罪の量刑は死刑か無期懲役。
[ 2011年2月12日 06:00 ]
目黒夫婦殺傷 「面識なく金目当て」供述
2011年2月12日 朝刊
東京都目黒区の無職大原道夫さん(87)夫婦殺傷事件で、殺人などの疑いで逮捕された自称無職木村義昭容疑者(65)=福島県いわき市=が「高級住宅地に行って金を取ろうと思った。たまたま目に付いた家に入った。夫婦と面識はなかった。抵抗されたから刺した」と容疑を認める供述をしていることが、目黒署捜査本部への取材で分かった。
捜査本部は木村容疑者が強盗目的で大原さん宅に押し入った可能性が強いとみている。ただ、大原さんが腹部を数回、執拗(しつよう)に刺されていることなどから、さらに動機や経緯を調べる。これまで二人の接点は見つかっていないという。
捜査本部は十一日、木村容疑者を送検。同容疑者宅の捜索を続けるなどして裏付け捜査を進めた。事件前後の行動について、木村容疑者の供述と、犯人に似た男が防犯カメラに写った日時などは矛盾していないという。
捜査本部によると、木村容疑者は事件当日の一月十日午前八時ごろ、自宅近くのいわき湯本バス停から高速バスに乗り、昼前に東京駅八重洲口に到着。JR有楽町駅などを経て東京メトロ日比谷線で恵比寿駅へ。喫茶店などで過ごし、午後四時ごろ、同線で中目黒駅に着いた。
事件は同四時四十分ごろ発生。木村容疑者は同五時ごろ、中目黒駅の改札を通過し、駅構内のトイレで着替えてタクシーで東京駅に向かった。再び高速バスで十一日未明に自宅に戻った。着替えは現場に持ち込んだボストンバッグに入れていたとみられる。
調べに対し、木村容疑者は「上下の衣服を着替え、靴も履き替えた。衣服や靴、バッグは自宅に帰って数日のうちに近くのごみ捨て場に捨てた」と供述しているという。
捜査本部によると、木村容疑者は二〇〇三年ごろ、産業廃棄物運搬業を始めた。ここ数年は収入が減り、知人から数百万円の借金を抱えていたという。
「百貨店名乗れば開けると…」 準備は周到、動機は分からず
東京都目黒区の元会社役員大原道夫さん(87)夫妻が殺傷された事件で、殺人容疑などで逮捕された福島県いわき市の木村義昭容疑者(65)が大原さん宅を訪れる際、大手百貨店の配送を装ったことについて「大手百貨店を名乗れば玄関を開けてくれると思った」と供述していることが12日、警視庁目黒署捜査本部への取材で分かった。
また凶器のナイフを都内で購入した形跡はなく、福島県から現場に持ち込んだ可能性が高いことも判明。捜査本部は、木村容疑者が強盗目的で周到な計画を練っていたとみているが、大原さん宅を狙った理由に判然としない点もあり、動機などをさらに詳しく調べる。
捜査本部によると、木村容疑者は「大原さんに申し訳ないことをした」と謝罪の言葉を口にしている。また、「目黒には初めて行った。東京の高級住宅地は目黒と田園調布というイメージがあったが、田園調布への行き方が分からなかった」とも話している。
木村容疑者は、1月10日午後4時40分ごろに大原さんを殺害するなどした容疑で逮捕された。
事件当時に悲鳴を聞いて大原さん宅に駆け付けた男性(38)は「大原さんは搬送前、『大手百貨店だと言うので玄関を開けたらいきなり切りつけられた』と話していた」と証言していた。
捜査本部によると、木村容疑者は同日昼ごろ東京駅に到着。JRと地下鉄で移動し、JR恵比寿駅付近で約3時間を過ごしていたが、同じナイフを売っている店は周辺で確認されていない。
木村容疑者は、大原さんを襲った後は「中目黒駅のトイレで着替えた後にタクシーで東京駅に向かった」と供述。ボストンバッグの中にニット帽やジャンパー、ズボンや靴を詰めて持ち込んでおり、周到な準備をしていた形跡がうかがえる。
[ 2011年2月12日 12:36 ]
目黒の殺傷事件、凶器は地元調達か 都内で購入の形跡なし
東京都目黒区の元会社役員大原道夫さん(87)夫妻が自宅で殺傷された事件で、殺人容疑などで逮捕された福島県いわき市の木村義昭容疑者(65)が、凶器のナイフを都内で購入した形跡がなく、福島県から現場に持ち込んだ可能性が高いことが12日、捜査関係者への取材で分かった。
警視庁目黒署捜査本部は、木村容疑者が強盗目的で周到な準備をしていたとみているが、大原さん宅を狙った理由に判然としない点もあり、動機などをさらに詳しく調べる。
捜査関係者によると、1月10日の事件後、現場付近に落ちていた凶器のナイフは比較的新しく、もともと事件に使用するために用意されたものとみられていた。
木村容疑者は同日昼ごろ東京駅に到着。JRと地下鉄で移動し、JR恵比寿駅付近で約3時間を過ごしていたが、同じナイフを売っている店は周辺で確認されていないという。
木村容疑者は逃走時に着替えるため、ボストンバッグの中にニット帽やジャンパー、ズボンや靴を詰めて持ち込んでおり、事前に計画を練っていた形跡がうかがえる。
こうしたことから、捜査本部はナイフも上京前に準備していたとの見方を強め、購入した店の割り出しを進めている。
2011/02/12 03:15 【共同通信】