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2014/02/08

内閣府男性職員変死事件 韓国での不可解な足取り 対馬近海で漁船からボートに乗り換え、密かに入国を試みたか

変死の内閣府職員、韓国で謎の行動






北九州市若松区の響ひびき灘で1月、遺体で見つかった内閣府の男性職員(30)について、第7管区海上保安本部(北九州市)は7日、職員の足取りを確認するため、死亡前に滞在していた韓国、米国の警察当局に捜査協力を要請したと発表した。7管によると、捜査協力は海上保安庁が警察庁、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて要請した。

 「韓国で開かれる会議に出席する」。内閣府にそう報告して留学先の米ミネソタ州から韓国に出張した男性職員の足跡を追った。

 内閣府から留学中だった職員が出張申請したのは、ソウルで開かれた経済や財政についての国際会議「アジア太平洋社会科学会議」会議は1月8日から3日間の日程だったが、職員は3日にソウルの歓楽街にあるホテルにチェックインした。

 翌4日にチェックアウトし、そこから約1キロ離れたゲストハウスに11日までの予定で入った。宿泊代金はホテルの相場よりも安い1泊約5万5000ウォン(約5200円)だった。

 だが、スーツケースは部屋に置かず、数百メートル先の予約も入れていない別のホテルに預けた。このホテルの関係者によると、スーツケースには財布やパソコンなどが入っていて、職員は「また取りに来る」と話した。

 職員は6日、ソウル市東部のボート販売会社事務所に突然現れた。「このボートが欲しい。釣りが好きだ」と言って希望するゴムボートの型番を伝え、ボートと船外機の代金計100万ウォン(約9万4000円)を現金で支払った。

 ここでは「香港出身のアレックス」と名乗り、配達先には釜山プサンのホテルを指定した。会話はすべて英語だった。応対した女性は「うちはネット販売専門なのに、急に買いに来たので驚いた。マスク姿で黒いジャンパーを着て、連絡先も教えてくれず怪しかった」と振り返った。

 会議が始まった8日、職員は高速鉄道ではソウルまで約2時間半の釜山にいた。配達先とした釜山駅近くのホテルで購入したボートを受け取った。同日夕にはホテルから約10キロ離れた自動車用品販売店に行き、バッテリー2台とケーブルを20万ウォン(約2万円)で買った。バッテリーはかなり重かったというが、職員は滑らかな英語で「自分で運ぶ。ホテルのある釜山駅の辺りまで行く」と話し、タクシーに乗り込んだという。

 その後、職員は再びソウルに戻った可能性が浮上している。ソウルのゲストハウスの防犯カメラに10日、職員とみられる男性が部屋から出る姿が映っていたからだ。ゲストハウスからは11日に退出していた。

(2014年2月8日  読売新聞)

http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20140208-OYS1T00541.htm



漂流の内閣府職員、変死前に謎の韓国行

 韓国に出張した内閣府の男性職員(30)が1月、北九州市若松区の響灘ひびきなだをゴムボートで漂流しているところを確認され、その後海中から遺体で見つかった。謎に包まれた行動の足跡を追った。

 「韓国で開かれる会議に出席する」。内閣府から米ミネソタ州の大学院に留学していた職員が出張申請したのは、ソウルで開かれた経済や財政についての国際会議「アジア太平洋社会科学会議」。1月8日から3日間の日程の会議だったが、職員は早くも3日にソウルの歓楽街にあるホテルにチェックイン。翌4日にチェックアウトし、そこから約1キロ離れたゲストハウスに11日までの予定で入った。宿泊代金はホテルよりも安い1泊約5万5000ウォン(約5200円)。

 だがスーツケースは部屋に置かず、数百メートル先の予約も入れていない別のホテルに預けた。このホテルの関係者によると、スーツケースには財布やパソコンなどが入っていて、職員は「また取りに来る」と話した。

 職員は6日、ソウル市東部のボート販売会社事務所に突然現れた。「このボートが欲しい。釣りが好きだ」と言って希望するゴムボートの型番を伝え、ボートと船外機の代金計100万ウォン(約9万4000円)を現金で支払った。職員は「香港出身のアレックス」と名乗り、配達先には釜山プサンのホテルを指定した。会話はすべて英語だった。

 応対した女性は「うちはネット販売専門なのに、急に買いにきたので驚いた。マスク姿で黒いジャンパーを着ていた。連絡先も教えてくれず、怪しかった」と振り返った。

 会議が始まった8日、職員は高速鉄道でソウルから約2時間半かかる釜山にいた。配達先に指定した釜山駅近くのホテルで「アレックス」と名乗り、購入したボートを受け取った。さらにこの日夕には釜山駅から10キロも離れた自動車用品店でバッテリー二つとケーブルを買っている。店員によると、職員は二つで重さ30キロほどにもなるバッテリーを「自分で運ぶ」と抱え、タクシーに乗り込んだ。

 その後、職員は再びソウルに戻った可能性が浮上している。ソウルの宿泊先の防犯カメラに10日、職員とみられる男性が映っていたからだ。11日にソウルのゲストハウスを出たという。

 7日後の18日、第7管区海上保安本部(北九州市)の巡視艇が響灘で漂流中のボートを見つけた。釜山から約200キロ。中に人が倒れていたが荒天のため近づけず、ボートは転覆。遺体は20日、海中で発見された。7管は、死因は水死、死後1~2週間と発表した。

 職員が韓国を訪れた本当の目的は何だったのか。日本から捜査協力要請を受けた韓国警察も今後、真相究明を図る。(ソウル 吉田敏行、釜山 釈迦堂章太)

(2014年2月8日09時24分  読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140208-OYT1T00267.htm


変死の内閣府職員、謎の足取り 対馬近海までは漁船に?

2014年2月7日12時12分


 米国留学中の内閣府の男性職員(30)の遺体が先月、北九州市沖で見つかった。乗っていたとみられるゴムボートもあった。職員は会議出席のため韓国に入ったが、その後の消息は不明に。最後に足取りが確認されたのは長崎・対馬が望める港町、釜山だった。

■マスク姿でボートを買いに

 男性は内閣府のシンクタンクに所属、昨夏から米国留学中だった。ソウルであった「アジア太平洋社会科学会議」(1月8~10日)に出席したいと申請して公務で韓国行きが認められ、3日に入国。韓国の司法関係者によると、職員はソウルに7日まで滞在したが、会議には出なかった模様だ。

 6日夕、職員とみられる男性は黒いジャンパーにマスク姿でソウル東部のボート販売業者を訪ねてきた。英語で「ホームページを見てきた。香港の人間だ」と言い、54万ウォン(約5万円)のゴムボートと46万ウォン(約4・3万円)の操縦用の船外機を買った。宅配で釜山に送ったとみられる。

 8日、男性は1人で釜山のホテルに現れた。大阪や福岡へ向かう船が出る国際旅客船ターミナルの近く。男性はホテルに届いていた宅配便の荷物をロビーで受け取って、そのまま出て行き、宿泊はしなかった。

 男性はホテルから北西に車で約15分の自動車用品店でバッテリー二つと接続用のケーブルを購入。現金で支払い、手書きの領収証を求めた。この領収証が男性の遺体から見つかったとして、日本政府関係者が店を訪ねてきた、という。

■釜山の海岸から出発?

 職員とみられる男性の足取りが確認されたのは8日まで。この日、釜山の海岸から日本に向かった可能性があるが、地元の警察官は「夜も釣り人が多く、海岸沿いに不審者がいれば『間諜(かんちょう、北朝鮮のスパイ)では』と申告が来る」。

 韓国の海洋警察関係者によると、8日夜の釜山沖は西北西の風が強く、波の高さは2~2・5メートル。9日未明には「風波注意報」(日本の強風・波浪注意報に相当)も出た。関係者は「救難用ボートなら別だが、普通のゴムボートなら波風をまともに受ければ転覆する」。

 第7管区海上保安本部(北九州市)によると、見つかったボートは米国製で長さ約2・3メートル、幅約1・6メートル。船外機も米国製の電動式で、乗用車に積むようなバッテリーもあった。

 ある捜査関係者は、対馬近海で漁船からボートに乗り換えたことが確認できた、と明かす。

 遺体が見つかったのは、1月20日。その2日後の司法解剖では、死後1~2週間が経過していた。職員とみられる男性が釜山で最後に確認されたのは8日。釜山から出航したとすれば、対馬付近まで運んでもらい、ボートに乗り換えて間もなく死亡したことになる。

 職員は下着とシャツ、フリースの上にジャンパー2枚を重ね着し、靴下も2枚履いていた。別の捜査関係者はボートで日本まで渡航する覚悟だったのではないかとみている。

■個人的理由で帰国はかる?

 仮に、対馬海峡を渡ろうとしたとして、なぜそうした手段を選んだのか。内閣府によると、職員は2010年に採用。経済分析担当の事務官として働き、12年3月から内閣府のシンクタンクに異動した。

 昨年7月、2年間の予定で米ミネソタ大に留学。その際、公用旅券の発給を受けた。渡航時と帰国時の往復しか使えず、帰国した時点で失効する旅券だ。

 韓国・ソウルでの国際会議出席のための今回の渡韓で、内閣府が出張を認めた期間は1月7~12日。人事課によると、7日にあった連絡が最後となった。

 政府や捜査関係者の中には「職員が個人的な理由で帰国しようと考え、公用旅券が失効することを防ぐために、ひそかに入国しようとしたのではないか」とみる向きもある。ある関係者は「日本で何かをしようとしていて、韓国でアリバイづくりをしようとしたのかもしれない」と推測する。

 7管によると、職員の死因は、低体温症か水死と推定され、死亡につながるような外傷はなかった。事件性についても「関係する情報に接していない」。

 政府関係者の一人は「スパイや工作の可能性は全くない」と説明。別の関係者は「安全保障とは全く無関係の個人的な事故だ」と語っている。(佐々木康之、釜山=中野晃)