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2013/06/28

東アジア共同体研究所は何を目指すのか

鳩山氏の妄言はいつまで続くのか

濱口和久「本気の安保論」2013年6月28日 10:58

拓殖大学客員教授 濱口 和久





<またまた飛び出した妄言>
 鳩山由紀夫元首相は6月24日、フェニックスTV(香港)の取材に対し、沖縄県尖閣諸島の領有権を主張する中国政府に理解を示す発言をした。そのなかで、尖閣をめぐる歴史的経緯に言及し「中国側から『日本が盗んだ』と思われても仕方がない」と述べた。

 野中広務元官房長官も先頃、中国要人との会談で、「(尖閣諸島)領有権問題を棚上げする日中合意があった」と発言している。鳩山氏や野中氏の発言は、日本政府の立場とは相容れない見解であり、すでに政界を引退した2人のこのような発言は、中国を利する以外のなにものでもない。


<鳩山氏の妄言の数々>
 鳩山氏の妄言はいまに始まったわけではない。過去にもさまざまな妄言を吐いている。民主党幹事長時代の2006(平成18)年10月19日、モスクワで開催された日ソ共同宣言50周年の日露フォーラムに参加した際、「北方四島共同管理論」を披瀝し、同行した日本の関係者を驚かせる一幕があった。

 翌07(平成19)年2月28日の祖父・鳩山一郎氏の銅像除幕式でも「我々孫たちが真剣に北方領土問題の解決に向け、もう1度踏ん張らないといけない。四島一括返還では1,000年たっても還らない」とも語っている。さらに、自民党から民主党への政権交代後、首相に就任した鳩山氏は、「国益も大事だが、地球益も大変大事だ」、「日本列島は日本人だけの所有物ではない」などと発言して失笑を買ったことは、まだ記憶に新しいところだろう。

 核兵器開発の疑いが濃厚なイランに対して、国際社会が協調して制裁を科す動きがあった最中、日本政府の訪問取り止め要請を無視して、鳩山氏は12(平成24)年4月7日から2日間の日程でイランを訪問し、アフマディネジャド大統領と会談した。
 鳩山氏は会談の席上、「国際原子力機関(IAEA)はイランなどに二重基準を適用し不公平だ」とする内容の発言をしたと、イラン政府は発表した。明らかに鳩山氏の発言は、日本政府の見解に反する発言である。
 帰国後に鳩山氏は、イラン政府が発表した発言内容は「捏造だ」として、在日イラン大使館に抗議したが、後の祭りだ。この時期にイランを訪問すれば、イラン側に利用されることは予想されたことである。

<東アジア共同体研究所は何を目指すのか>
 鳩山氏は今年3月、一般財団法人東アジア共同体研究所を設立し、理事長に就任した。理事には孫崎享氏、高野孟氏、橋本大二郎氏などが理事として名を連ねている。私が一番危惧するのは、孫崎享氏が理事に入っていることだ。

 孫崎氏と言えば、「米国陰謀史観」を唱える元外交官で、普天間基地の移設問題では、鳩山氏にアドバイス(国外、最低でも県外移設)をした人物だと言われている。また、鳩山氏が目指す東アジア共同体構想については、11(平成23)年4月までオバマ政権で国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたジェフリー・ベーダー氏が回顧録『オバマと中国の台頭』を出版し、そのなかで、鳩山政権が提唱した米国抜きの東アジア共同体構想を「ストラティージック・フーリシュネス(戦略的愚劣)」と表現。当時の日米関係の最大の懸念だったと指摘している。

 さらに、ベーダー氏は、アジアで最も親密な同盟国の米国抜きの共同体構想は「驚愕」だったと回想し、中国でさえも「微笑と困惑」を隠せなかったとしている。鳩山氏から提案を聞いたベトナムの大統領は、米中のバランスを崩しかねないと不安視し、「この危険なアイデアを潰す助けがほしい」と、他国に助言を求めたという。

 かつて戦争状態にあったベトナムでさえ理解する戦略的愚劣を「最も強固な同盟国は理解しなかった」とも記述している。ぜひとも鳩山氏には、ジェフリー・ベーダー氏の回顧録『オバマと中国の台頭』を一読することをお勧めする。日本の国益を損なう鳩山氏の妄言や勝手な行動は、もう懲り懲りだ。

http://www.data-max.co.jp/2013/06/28/post_16454_hmg_1.html





“迷走”鳩山氏に非難相次ぐ “発言”で浮かび上がる事実誤認と勉強不足

2013.06.29

 鳩山由紀夫元首相の尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる発言に対し、政府からは28日、「国益を著しく損なう」(岸田文雄外相)と非難の声が相次いだ。鳩山氏は「もっと勉強していただきたい」と政府側を批判するが、発言内容を検証すると、逆に鳩山氏側の事実誤認や勉強不足が浮かび上がってくる。

 中国訪問中の鳩山氏は28日、北京の人民大会堂で中国の李克強首相と会談。中国政府系シンクタンク主催の経済フォーラム出席者の一人としての面会だが、李氏が日本の政界関係者と会ったのは3月の首相就任後初めてとみられる。

 鳩山氏は今月24日に香港のフェニックステレビのインタビューに応じ、日本が降伏に当たって受諾したポツダム宣言(1945年)に「台湾及澎湖島のごとき日本国が清国人より略取したる一切の地域を返還」するとしたカイロ宣言(43年)の履行が盛り込まれているとして、「(尖閣は)中国側から見れば盗んだと思われても仕方がない」と主張した。

 尖閣の日本編入について鳩山氏は「1895年に日清戦争の末期にそっと日本のものにしてしまった」とも指摘。しかし、日本政府は85年から現地調査を行い、清国の支配が及んでいる痕跡がないと確認した上で95年に編入を閣議決定しており、清国から盗んだ事実はない。

 そもそも戦後の日本の領土を法的に確定させたのは1952年発効のサンフランシスコ講和条約であり、条約でもないカイロ宣言は「法的効果を持ち得るものではない」(外務省)というのが日本政府の立場だ。かつて首相を務めた鳩山氏だが、カイロ宣言を根拠とする論理は政府見解を大きく逸脱している。

 鳩山氏は尖閣の領有権をめぐる「棚上げ」合意が存在する根拠として、野中広務元官房長官が田中角栄元首相から「聞いた」とする伝聞を引用。裏付ける文書がないにもかかわらず「これは歴史的事実だ」と決めつけた。

 さらに、97年に日中両政府が締結した漁業協定について「お互いの漁船は自分たちで処理しましょうと取り決められた」と指摘し、2010年の中国漁船衝突事件での中国人船長逮捕を批判した。ただ、日本の外務省は、協定の対象は排他的経済水域(EEZ)のみであり、中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりした領海は含まれないとしている。