日米で中国潰し 経済的、軍事的に牽制 TPP交渉参加
2013.03.16
安倍晋三首相がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉参加を正式表明した。
オバマ米大統領とのトップ交渉で関税撤廃の例外を認めさせて反対・慎重派を黙らせ、「今がラストチャンス」と果敢に踏み込んだ。背景には、単なる経済戦略にとどまらず、虎視眈々とアジア太平洋地域での覇権を狙う中国に、日米両国で対峙する意図もありそうだ。
「交渉参加は国家百年の計。同盟国の米国などと新たなルールを作ることは、わが国の安全保障やアジア太平洋地域の安定にも寄与する。日本の国益となるだけでなく、世界の繁栄につながる」
安倍首相は15日夕の記者会見でこう言い切った。
TPP参加をめぐっては、同日、国内の農林水産物の生産額が3兆円減少するものの、消費や工業品の輸出増加などで、差し引きで実質国内総生産(GDP)を3兆2000億円押し上げるとの影響試算も発表された。
アベノミクスの起爆剤として期待される一方、日本や米国、オーストラリアなど「自由」「民主主義」「基本的人権」「法の支配」などを共有する諸国中心の枠組みは、共産党一党支配のもと、アジア太平洋での覇権を狙う中国をけん制する効果を持つ。
現に、ズムワルト米国務次官補代理は13日、ワシントンでの講演で、日本のTPP交渉参加について、台頭する中国を念頭に「米国を含むアジア太平洋地域の自由貿易の枠組みができる。日本にとっての戦略的な意義があり、それがTPPだ」「(それ以外の選択肢は)米国を含まない枠組みで、どちらを選ぶのかは日本自身が決断すべきことだ」と語っていた。
オバマ米大統領は、何事にもビジネスライクで実利を求めるとされる。日本がTPPに加われば、経済規模は一気に拡大し、米企業は日本市場の需要開拓につなげることができる。外交筋は「米政府内で日本のプレゼンスは格段に高まる。日米同盟のさらなる強化につながる」という。
逆に、日本がTPPに不参加ならば、軍事力と経済力を背景にした中国の覇権を防ぐことは極めて厳しい。「TPP反対派や反対政党に、親中派や中国に近い勢力が多いのは偶然ではない」(官邸周辺)
安倍首相は今後、日本経済の再生とともに、沖縄県・尖閣諸島の強奪を狙う中国の野望をくじき、北朝鮮による日本人拉致問題を解決に導かなければならない。そのいずれも米国の協力は不可欠であり、TPPによって日米関係を強固にしておく意義は大きい。