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2012/08/10

食糧危機再来の懸念 FAO世界食糧価格指数、前月比6%上昇

UPDATE1: 7月の国連食料価格指数が6%上昇、食料危機再来の懸念

2012年 08月 10日 11:15 JST 

 ◎7月のFAO世界食料価格指数 前月から6%上昇 2008年の水準上回る

 ◎FAOエコノミスト 07─08年食料危機の再来を警告 生産国の規制措置を懸念

 ◎9日のシカゴ先物市場でトウモロコシが最高値 大豆も上昇



 [ローマ/シカゴ 9日 ロイター] 国連食糧農業機関(FAO)が発表した7月の世界食料価格指数は平均213となり、前月の201から6%上昇した。米干ばつなどを受け、すでに商品市場では穀物相場が上昇しているが、FAOのデータを受け、2007─08年の食料危機が再来する可能性があるとの懸念が強まった。

 FAOの食料価格指数は前月まで3カ月にわたり低下していた。7月の上昇をもたらしたのは主に穀物や砂糖の値上がりで、肉や乳製品の価格はほとんど変化がなかったという。

 同指数の最高は2011年2月の238。この時の食品価格高騰は、「アラブの春」と呼ばれる中東・北アフリカの民主化運動の一因にもなった。7月の213は過去最高よりは低いが、2007/08年の食料危機の水準を上回った。

 米国は過去50年で最悪の干ばつに見舞われている。米農務省の穀物生産、需給見通し発表を翌日に控え、FAOのシニアエコノミスト兼穀物アナリスト、アブドルレザ・アバッシアン氏は、生産国に前回の食料価格高騰をもたらした輸出規制などを実施しないよう求めた。

 「2007─2008年のように事態が進行する可能性がある」と指摘。今回は、生産国が規制を導入して市場に介入するようなことはないとの見方もあるが、そのようなことがあれば「どのようなことでも起こり得る」と述べた。

 これまでのところ、禁輸などの動きはほとんどない。ロシアのドボルコビッチ副首相は8日、2010年のように穀物の禁輸措置を実施する根拠はないと述べた。ただ、年明け以降に輸出関税を導入する可能性は否定しなかった。

 アバッシアン氏は、コメの供給が潤沢なこと、経済情勢、原油価格が比較的低いことが食料価格の上昇を抑える要因になり得ると指摘した。

 しかし、通常より早めで大規模な買い付けや備蓄を増強する動きはある。前週の米国産トウモロコシの海外向け販売は、メキシコの大規模な買い付けで過去10カ月で2番目の高水準となった。

 2007─08年の食料価格高騰は、原油高、バイオ燃料の利用拡大、天候不良、生産国の輸出規制、先物相場の上昇というさまざまな要因が絡んだものだった。

 最近の穀物相場上昇の主な要因は米中西部の干ばつ。シカゴ商品取引所のトウモロコシ先物は6月中旬からすでに60%以上上昇している。9日には12月渡しCZ2が1ブッシェル=8.30ドル近くに上昇し最高値を更新。大豆も3%上昇した。

 <投機筋犯人説>

 最近の価格上昇を受けて、再び投機筋犯人説が台頭している。前回の価格高騰では、大手銀行や機関投資家が、価格を押し上げたと批判された。

 ドイツの銀行の間では、食料関連投資を抑制する動きがでている。独コメルツ銀行(CBKG.DE: 株価, 企業情報, レポート)も、コモディティ関連のETF(上場投資信託)から農産品を除外した。コメルツ銀は理由を明らかにしていないが、ロビー団体やトレーダーからは、批判の回避を狙った措置との見方が出ている。

 価格上昇が穀物商社に恩恵となるかどうかは不透明。

 米カーギル[CARG.UL]が発表した3─5月決算は82%の減益。商品相場の変動や牛肉および油糧種子など主要部門の利益率低下の影響で、利益は約20年ぶりの低水準となった。ただし、これは干ばつ前の業績。

 グレッグ・ページ最高経営責任者(CEO)は、自社の市場需給の分析力や取引能力に自信を示したものの、経済・政治情勢の影響をかなり受けている今年の市場で苦戦していると説明した。

 食料価格の上昇は、国内で十分な食料を生産できず輸入に頼る貧困国の負担を重くする。

 アバッシアン氏は「ドル相場の大幅な上昇と食料価格の高騰はダブルパンチ。一部の脆弱な国にとってかなり負担になる」と指摘した。

 天候の見通しはおもわしくない。夏の収穫を迎える米国は、もはや干ばつによる影響はあまりないが、インドやオーストラリアはエルニーニョの脅威にさらされている。

 アバッシアン氏は今後について「従来予想していたような、価格が前年の水準を下回るシーズンにはならず、非常に高水準になりそうだ」との見通しを示した。

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