1号機の土手で線量計の警報音が短い間隔で鳴ったため、線量が高いと判断。偽装を思いついた
警報音鳴るので…被曝隠し偽装、会社側が認める
東京電力福島第一原発事故の復旧現場で、建設会社「ビルドアップ」(福島県)が作業員の線量計を鉛カバーで覆わせていた問題で、同社は23日、福島県郡山市の事務所で記者会見し、指示したとされる佐柄(さがら)照男取締役(54)が、被曝(ひばく)線量を低く偽装する目的だったことを認めた。
佐柄取締役は「アラーム音が何度も鳴るので、カバーを思いついた。間違った考えだった」と謝罪した。
佐柄取締役と和田孝社長(57)が会見に臨んだ。その説明によると、佐柄取締役は昨年11月28日、作業の準備で同原発に入った。作業場所の一つである1号機の土手で線量計の警報音が短い間隔で鳴ったため、線量が高いと判断。偽装を思いつき、原発構内の廃棄物置き場で鉛板を拾い、同30日に作業員2人と構内で、板を切断して12個の鉛カバー(10センチ四方)を製作した。
30日夜にはいわき市の宿舎で作業員10人に対して、「線量計の前面に鉛のカバーを装着して入りたい」と切り出した。「被曝線量限度が残っていないと、その後作業できなくなる」と説明し、線量を低減させる目的であることも明かした。うち3人は、作業当日の12月1日朝になって装着を拒んだため、作業から外した。
低線量エリアに向かった作業員は鉛カバーは付けず、高線量の土手で作業する佐柄取締役を含めた5人が、線量計を鉛カバーで覆ってポケットに入れた。ただ、線量は低減しなかったといい、偽装はこの1回だけとした。鉛カバーは佐柄取締役が構内に捨てた。
佐柄取締役は終始うつむき加減で、「勝手な判断で皆様に迷惑をかけ誠に申し訳ない」とわびた。
(2012年7月23日22時58分 読売新聞)
「アラーム遅らす目的」 建設会社 鉛板カバー指示 謝罪
2012年7月24日 朝刊
東京電力福島第一原発事故の収束作業をめぐり、福島県の建設会社「ビルドアップ」が線量計を鉛板のカバーで覆うよう作業員に指示した問題で、同社が二十三日、同県郡山市で記者会見を開き、指示した佐柄照男役員(54)が「私の勝手な判断でご迷惑を掛け、作業員の皆さまにも申し訳ない」と謝罪した。
指示した理由を「放射線量が高いと認識し、鉛でできたベストのようなものを考えたが、なかった。線量計のアラーム音が鳴るのを少しでも遅らせることができれば作業員を安心させられるとの思いで、間違った考えだが判断した」と説明。被ばく線量の数値を低く見せる意図はなかったとした。
またビルドアップに作業を発注した東京電力グループの「東京エネシス」(東京)は二十三日、現場にいた作業員九人のうち、佐柄役員を含む五人が使用を認めたと明らかにした。二人は使っていないと答え、二人は確認が取れていない。
佐柄氏の会見での説明によると、昨年十一月二十九日に原発敷地内に廃棄してあった鉛の板を見つけ、三十日にほかの作業員らとカバーに加工。夜に宿舎で「高いエリアの作業をすると(限度までの)線量はすぐになくなってしまう」などと説明して作業時の装着を求めた。拒否した人は業務から外し、十二月一日の作業で使った。
作業員らが別に持っていたガラスバッジと呼ばれる線量計の数値から、カバーによる放射線量低減の効果はほぼなかったとみられる。
佐柄氏も「外れたりずれたりはあったと思う。一回だけでその後は使わなかった」としている。
◆東電が調査へ
東京電力は二十三日、第一原発内で作業する二十九社を対象に線量計のごまかしがないか調査する方針を明らかにした。 二十九社は元請けで、東電は同日、調査の意向を伝えた。七月末に調査票を送り、八月末までに回答を求める。このほか、東電は自社についても社内調査する。