12月1日朝、装着を拒んだ3人は宿舎に返し同日夜、「今後の指示にも従わないおそれがある」として契約を解除
鉛カバー、5人が装着 建設会社役員「線量の不安軽減」
福島第1原発事故の収束作業を請け負う福島県浪江町の建設会社「ビルドアップ」の役員が作業員の線量計を鉛カバーで覆うよう強要した問題で、同社の佐柄輝男取締役(54)が23日、福島県郡山市の事務所で記者会見し、「私が指示し、自分と作業員4人がカバーを付けた。迷惑を掛けて申し訳なかった」と謝罪した。同社の和田孝社長(57)は会社の関与を否定し、佐柄取締役の解雇を発表した。
佐柄取締役は「原発構内に調査で行った際に線量計が激しく鳴り、恐ろしくなった。初めての作業員もいて不安を軽くしたいと思った」と動機を説明。「敷地の投棄場で厚さ3ミリの鉛板を拾い、作業前日の昨年11月30日に作業員数人に10センチ幅のカバー12枚を作らせた」と語った。
指示の内容については「30日夜、宿舎で作業員9人に装着を指示した。作業日の12月1日朝、3人が拒んだので『付けないなら仕事をさせない』と言った。その日は3人を宿舎で待機させ、その後も仕事をさせなかった」と話した。
3人を除く6人は装着に応じたが、実際に付けたのは4人にとどまったという。
カバーの効果に関し、佐柄取締役は「付けない場合と警報音の激しさは変わらず、1日間だけで装着はやめ、翌日に廃材捨て場に捨てた」と話した。
和田社長は「佐柄取締役個人の判断で会社としての指示ではない。作業員と(元請けなどの)企業に謝罪したい」と述べた。
同社によると、カバーを装着しての作業は30~40分間。同社は原発事故の汚染水処理配管の凍結を防止する保温材をホースに貼り付ける作業を下請けした。
◎同様のケース実態調査開始/東電
福島第1原発事故の収束作業で作業員が線量計を鉛のカバーで覆うよう強要された問題で、東京電力は23日、ほかに同様のケースがないのかどうかを確認する実態調査を始めたと発表した。
対象はグループマネジャーやチームリーダーの東電社員に加え、協力企業約30社の作業班長ら現場責任者。8月下旬までに記名式のアンケートで回答を得る。一般の作業員はJヴィレッジ(福島県楢葉町、広野町)に設置している労働条件相談窓口で受け付ける。
東電は、役員が装着を強要したビルドアップの元請け会社で東電グループの東京エネシス(東京)から聞き取りをした調査結果を発表。昨年12月1日に5人が装着した以外に現時点で装着の事実は確認されていないとした。東電は装着した作業員の放射線量の再評価を東京エネシスに求めた。
2012年07月24日火曜日
「線量低くするためやった」 鉛カバー指示の役員謝罪、解雇へ
2012.7.23 19:00
東京電力福島第1原発事故の収集作業現場で作業員が線量計に鉛カバーをつけていた問題で、福島県郡山市の下請け会社「ビルドアップ」が23日、記者会見し、現場で指揮を執っていた、佐柄輝男取締役(54)が装着を指示したことを認め、謝罪した。同社は厚生労働省の調査が終わり次第、解雇する方針。
佐柄取締役はカバーを装着した理由について「下見で線量がたまると鳴る線量計が短時間で鳴るのを聞き、鳴る間隔を延ばして不安を減らそうとした」と説明。「皆様にご迷惑をおかけしました」と謝罪した。
22日の和田孝社長の聴取に「被曝(ひばく)線量の数字を低くするためにやった。悪いことをしている自覚はあった」と話したことも認めた。「線量自体を下げる鉛ベストも検討したがだめだった」とも釈明した。
佐柄取締役の説明によれば、カバー装着を指示したのは昨年11月30日夜。いわき市の宿舎で作業員9人(2人は欠席)に「年間積算線量が20ミリシーベルトを超えたら原発での仕事ができなくなる」と話し、原発敷地内の廃棄物を加工した鉛カバーを装着するよう求めた。
翌12月1日に中継地点のJヴィレッジ(広野町)で3人が装着を拒否すると、「付けられないなら作業に出せない」と話し、3人を宿舎に帰した。同日夜、「今後の指示にも従わないおそれがある」として契約を解除したという。
実際装着したのはJヴィレッジに残った9人のうち放射線量が比較的高い現場に行く佐柄取締役を含む5人で、数字が変わらなかったために即日廃棄した。「低くなっていれば使い続けるつもりだった」と佐柄取締役は説明している。
また、元請け会社の「東京エネシス」は23日、5人が予備に付けていた積算線量計や他の作業員が付けていた線量計と、鉛カバー付きの線量計の数値で著しい差がなかったと公表。「年間累積線量に与える影響は十分小さい」とした上で「二度とないよう全力を尽くす」とした。
低減効果は0.39ミリシーベルト=鉛カバー装着、福島原発
東京電力福島第1原発事故の復旧作業で、下請け会社「ビルドアップ」(福島県)が被ばく量を少なく見せるため作業員の線量計に鉛カバーを付けていた問題で、東京電力は27日、カバーによる線量低減効果は最大で0.39ミリシーベルトだったと発表した。
東電によると、作業員は線量計のほか、3カ月間の積算線量を記録するガラスバッジを携行。ガラスバッジには鉛カバーを付けていなかった。
昨年10月1日から12月31日までの3カ月間の累積被ばく量を比較すると、最も差があった作業員は線量計が13.31ミリシーベルト、ガラスバッジが13.7ミリシーベルトで、差の0.39ミリシーベルトが鉛カバーの影響と推定されるという。(2012/07/27-21:24)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012072700985