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2012/07/16

軍の特権について制限策を講じる動きもあり、こうした利権や改革路線に関する対立が今回の電撃解任の背景にある可能性も

北朝鮮:「病気は不自然」利権で対立か 正恩氏側近解任

毎日新聞 2012年07月16日 22時13分(最終更新 07月16日 23時03分)
【北京・米村耕一】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の最側近である李英鎬(リ・ヨンホ)氏が朝鮮労働党政治局常務委員など党のすべての職務から電撃解任され、関係者の間に「権力中枢に何らかの異変が起きたのでは」との観測が広がった。発表文では李氏の健康問題を理由にしているが、「最近まで李氏が活発に動いている状況から考えれば、別に原因があると考えるのが自然だ」(北京の外交関係者)との見方が支配的だ。


 北朝鮮の国家幹部の中には、深刻な病気を抱えながらも死ぬまで役職を全うする例は珍しくなく、病気を理由にした解任には不自然さが伴う。また、深刻な権力闘争が現時点で起きているならば、今回のように国営メディアを使って国外に発表することもなく、事態収拾を図った後に発表という形式を取った可能性もある。

 中朝間を往来する北朝鮮の貿易関係者らによると、金第1書記の体制が本格的に指導するようになった現時点での政策決定について、平壌市民の間では主に、故金正日(キム・ジョンイル)総書記の実妹である金慶喜(キム・ギョンヒ)党書記、崔竜海(チェ・リョンヘ)軍総政治局長の2人が主導しているとの見方が広がっているようだ。

 特に北朝鮮指導部は自国の経済的な困難を打開するため、新たな経済改革策の検討を進めている。その過程で軍の特権について制限策を講じる動きもあり、こうした利権や改革路線に関する対立が今回の電撃解任の背景にある可能性もある。

 ただ一方、やはり最側近の一人とされた禹東則(ウ・ドンチュク)国家安全保衛部第1副部長が4月に突然、国防委員会委員から解任された際も権力闘争との臆測が広がったが、実際には脳梗塞(こうそく)が解任の原因だったとされている。