東電、実質国有化
東電、実質国有化=1兆円資本注入
政府の原子力損害賠償支援機構は31日、東京電力の第三者割当増資を公的資金1兆円で引き受け、実質国有化した。
機構は総議決権の2分の1超を保有し、必要に応じて3分の2以上に引き上げることが可能だ。2012年3月期に約5%だった東電の連結自己資本比率は回復し、財務基盤が改善する。
政府は名実ともに東電の経営権を握り、福島第1原発事故の被害者への損害賠償や同原発の廃炉に向けた作業を進めるとともに、経営合理化を徹底させる。(2012/07/31-10:36)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco&k=2012073100301&j4
東電国有化が完了 原賠機構、1兆円出資
経産相「一層の意識改革を」
2012/7/31 11:28
政府の原子力損害賠償支援機構は31日、東京電力への1兆円の出資を完了した。機構は議決権の50.11%をにぎって実質国有化した。東電は福島第1原発事故の賠償、廃炉、電力の安定供給を進める。枝野幸男経済産業相は同日の閣議後の記者会見で「東電が電力利用者と福島の被害者のことを考える企業に変わることが必要」と述べ、東電に意識改革を求めた。
機構は「議決権あり」と「議決権なし」の2つの種類株を引き受けた。議決権のない種類株は東電の改革が進まなければ議決権が発生する。機構は潜在的には議決権の最大75.84%をにぎり、株主総会で合併や定款変更などの重要事項も決められる。
東電の広瀬直己社長は「国民の皆さまに負担をお願いする。申し訳なく大変重く受け止めている。賠償、(原発の)廃止措置、安定供給の達成のため、国民の皆さまから『第二の創業』というべき最後の機会を与えてもらった。『新生東電』として生まれ変わるべく最大限の努力をしたい」とのコメントを発表した。
東電は家庭向け値上げの認可を受け、今回の出資で資本不足も解消した。出資を受け、日本政策投資銀行や三井住友銀行など銀行団も8月1日に第1弾として3700億円を追加融資する。今後の焦点は柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に移る。
ただ、福島第1原発の廃炉や被災地の除染には数兆~十数兆円の費用がかかるとされる。東電が自力で捻出できるとの見方は少ない。経産相は会見で「電力料金の値上げで恒常的な赤字はなくなる。ただ、今後の全体の状況を踏まえ、様々な選択肢がありうる」と述べ、政府による追加支援が必要になる可能性を否定しなかった。
経産相は実質国有化は一時的な措置と強調。「いずれは(出資を返して)純粋な民間企業に戻るのが適切」と指摘した。ただ、東電が公的資金の返済を始めるのは早くても2010年代後半。過去の大手銀行などと比べても大幅な時間がかかる。賠償や廃炉など膨大な債務を抱えるうえ、債務の総額がいまだに確定しないからだ。経産相は「債権カットでV字回復した日本航空などと全く違う。同じ時間軸では考えられない」と強調した。
東電に1兆円の公的資金 実質国有化
7月31日 12時28分
政府は、31日、東京電力に1兆円の公的資金を投入して実質的に国有化し、東京電力は今後、政府の管理下で福島第一原子力発電所の事故による、賠償や廃炉などの着実な実施に向けた抜本的な経営の立て直しを進めていくことになります。
東京電力は、原発の事故によって廃炉や賠償に必要になる巨額の費用に加え、火力発電用の燃料費の大幅な増加などで深刻な経営状況に陥っているとして、ことし5月、政府などが設立した原子力損害賠償支援機構と策定した「総合特別事業計画」で、財務基盤を強化するため公的資本の投入を求めていました。
これを受けて、政府は31日、東京電力が発行する「優先株」と呼ばれる株式を引き受ける形で1兆円の公的資金を投入しました。
これによって政府は、東京電力の議決権のうち最大75%余りを保有して実質的に国有化し、東京電力は今後、政府の管理下で抜本的な経営の立て直しが進められることになります。
ただ、経営改善策に盛り込まれていた主要な項目のうち、家庭向けなどの電気料金値上げは申請段階よりも値上げ幅が圧縮されるなど、東京電力は公的資本が投入されても厳しい経営が続く見通しです。
実質的に国有化された東京電力は今後、政府と共に原発事故の賠償と廃炉の着実な実施や電力の安定供給を続けるために、こうした厳しい経営状況をいかに立て直すかが課題となります。
政府から1兆円の公的資金が投入されたことについて、東京電力の廣瀬直己社長は「被害者の方々に支払う賠償金の交付に加えて、公的資金による優先株式の引き受けにより、国民の皆様にさらなる負担をお願いすることになり、申し訳なく、また大変重く受け止めている。被害者の方々への賠償や着実な廃炉、電力の安定供給の確保という3つの課題を同時に達成していくために、『新生東電』として生まれ変わるべく、最大限の努力をしていく」というコメントを発表しました。
経産相“公的管理は長期間に”
東京電力が実質的に国有化されたことについて、枝野経済産業大臣は閣議のあとの記者会見で、「東京電力への資本投入は賠償、廃炉、電力の安定供給という3つの課題を国民負担を最小化して実現するためのものであり、今後、新しい経営陣の下、東京電力が再生することに期待している」と述べました。
一方、枝野大臣は「いずれは純粋な民間企業に戻ってもらう必要があるが、廃炉や賠償の総額の見通しが立てられないなかで、公的管理下は相当、長期間にわたる。過去に公的資金を投入した企業と同じようなタイムスパンで考えることは不可能だ」と述べ、実質国有化された東京電力が公的に管理される状況は長期間続くという見通しを示しました。