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2012/05/29

書記官は中国の農業特区での事業投資の名目で日本の複数の企業に合わせて数千万円を出資させていた疑い

松下政経塾に在籍 5回の来日歴で人脈広げる

2012.5.29 11:14
 警視庁公安部から出頭を要請された在日中国大使館の1等書記官は、中国人民解放軍総参謀部の出身とみられ、これまでに5回の入国が日本当局に確認されている。国内の研究機関にも所属し、日本通の研究者として知られていたほか、多くの政治家を輩出した松下政経塾に在籍した経歴もあった。


 書記官は、公的には中国・河南大学出身とされているが、1989(平成元)年に人民解放軍傘下の語学学校を卒業後、総参謀部に所属した疑いがあり、警視庁公安部で事実確認を進めている。

 捜査関係者らによると、平成5年、河南省洛陽市の職員を名乗り、同市と友好都市の関係にある福島県須賀川市に「福島県須賀川市日中友好協会」の国際交流員として来日した。7~9年には福島大学大学院で学び、日中関係に関する論文も執筆していたという。

 その後帰国し、総参謀部との関係が指摘される調査研究機関「中国社会科学院」で日本研究所副主任を務めた後、11年4月に再び来日。松下政経塾の特別塾生となっている。

 以降も帰国と来日を繰り返し、東京大学東洋文化研究所など、日本の研究機関にも研究員として所属。日本語もうまく、日本文化や制度にも通じていたという。19年には、それまでとは異なり、外交官という立場で在日中国大使館に赴任していた。






中国書記官、数百万円受け取りか 複数企業から

 在日中国大使館の1等書記官(45)が外国人登録証明書を悪用し銀行口座を開設した疑いがあるとして、警視庁から出頭要請を受けた問題で、書記官が開設した複数の口座に計数百万円が入金されていたことが29日、捜査関係者への取材で分かった。

 2008年から「顧問料」として、毎月10万円程度振り込んでいた東京都内の健康食品販売会社のほかにも、書記官の口座に入金していた企業があったことが新たに分かった。

 書記官は、健康食品販売会社が香港に設立した関連会社の役員に就任していたことも判明。この関連会社も09年に数十万円を振り込んでいた。

2012/05/29 18:39   【共同通信】




中国書記官を外登法違反等で送検へ

5月29日 18時45分

東京の在日中国大使館の1等書記官が外国人登録証を不正に入手していた疑いが出ている問題で、警視庁は、近く外国人登録法違反などの疑いで書類送検することにしています。書記官は、中国での事業投資を名目に日本の複数の企業に合わせて数千万円を出資させていた疑いがあるということで、警視庁は資金の流れを調べています。

この問題で、東京の中国大使館に勤務する45歳の1等書記官は、平成20年に外交官であることを隠して葛飾区役所に申請書を提出し、外国人登録証を不正に入手した疑いが出ています。警視庁は、今月中旬、書記官に出頭を要請しましたが、応じずに帰国したということで、近く外国人登録法違反などの疑いで書類送検することにしています。

警視庁によりますと、書記官は中国の農業特区での事業投資の名目で日本の複数の企業に合わせて数千万円を出資させていた疑いがあり、このうち数百万円が外国人登録証を使って不正に開設された銀行口座に振り込まれていたということです。

一方、同じ口座には東京の食品会社から「顧問料」として毎月10万円程度の現金が振り込まれていたということですが、会社側は「書記官の妻が会社で働いた際のアルバイト代で問題はない」としています。

警視庁は、資金の流れを詳しく調べています。


人民解放軍情報機関に所属した経歴

警察当局などによりますと、一等書記官は1989年に中国・河南省にある大学の日本語科を卒業したとされ、その後、人民解放軍の情報機関「総参謀部第2部」に所属したということです。総参謀部第2部は、海外でのスパイ活動に関わっているとされる機関で、警察当局は中国がこうした機関を通じて日本を含む海外の防衛関連企業や大学に研究者や技術者などを派遣し、さまざまなスパイ活動を行っているとみています。

書記官は、その後、河南省洛陽市の職員として平成5年に来日。福島県の須賀川市日中友好協会で国際交流員を務めたり、福島大学の大学院で地方行政学を学んだりしました。


平成9年にいったん帰国し、2年後に再び来日した際には松下政経塾の特別塾生となり、政財界の関係者らと交流を深めていきます。その後、再びの帰国などを挟んで、平成15年からは東京大学に研究員として在籍。4年後の平成19年に在日中国大使館の書記官に着任しました。

警察当局は書記官が「人民解放軍総参謀部」に所属していたという情報を得て、この頃から動向を注視していたといいます。

警視庁公安部が日本での活動の実態を調べる過程で、書記官が外交官であることを隠して外国人登録証を入手していた疑いが発覚しました。しかし、日本の機密情報を不正に入手するなどの具体的な事実は今のところ確認できていないということです。


松下政経塾時代は

中国大使館の一等書記官と平成11年に松下政経塾で一緒に学んでいた民主党の森岡洋一郎衆議院議員は「自己紹介で『中国の研究機関の研究員で、日本の政治を勉強しに来た』と話していた。積極的にみんなの輪に入ってくるタイプではなく、容姿も含めて目立たず、おとなしい印象だった。外国人にしては日本語がうまかったが、情報機関の関係者をうかがわせるような雰囲気は全く感じさせなかった」と話していました。


“紳士的で親しみやすい人”

1等書記官と親交があった浜松市のNPO「浜松日中文化交流会」の山下輝幸理事長は「4,5年前からつきあいがあるが、紳士的で誰もが親しみやすい人だった。中国人留学生のイベントなどで1年に1、2回は浜松市に来ていて、熱心に留学生の世話をしていた。イベントには地元の企業が参加することもあるが、1等書記官が経済活動を行っていたかどうかは分からない。ましてやスパイ活動をするような人とは思わない」と話しています。







中国書記官に出頭要請、帰国前日の姿


 東京の中国大使館の一等書記官が、公安部の出頭要請を受けたものの拒否して帰国していたことがわかりました。警視庁公安部は、書記官がスパイ活動を行っていた可能性があると見ていますが、JNNは帰国前日の姿をとらえていました。

 雨が降りしきる中、中国大使館別館から出る1台の車。警視庁が出頭を要請した中国大使館の一等書記官です。JNNのカメラが捉えたのは今月22日。書記官はこの翌日、中国に帰国しました。出頭要請を拒否したのです。

 中国外交官への異例の出頭要請。そのわけは、書記官が外交官として勤務を始めた翌年の2008年、在留資格について嘘の申告を行い、必要のない外国人登録証を不正に取得した公正証書原本不実記載などの疑いが浮上したからです。

 一等書記官は、葛飾区役所に虚偽申告を行ったということです。

 「こういった形になるというのは全く考えも及ばなかった」(葛飾区役所の担当者)

 そして書記官は、外国人登録証を使って銀行口座を開設。都内の健康食品販売会社から「顧問料」として毎月10万円前後が振り込まれていたといいます。これが、外交官の商業活動を禁じたウィーン条約に違反する疑いも出ているのです。

 「まさか信じられないというのが率直な気持ち」(埼玉県川島町・道祖土証町議会議員)

 埼玉県川島町の町議会議員・道祖土証さん。書記官をよく知る人物です。道祖土さんは、町おこしのため米や農産物の中国への販売ルートを築こうと民主党関係者に相談し、の際に紹介されたのが書記官だったといいます。

 「米を中国に売り込みたいというのが主な話で、これから日本は農産物で生きていけるのではないかと話した」(埼玉県川島町・道祖土証町議会議員)

 また、書記官は外交官に就任する前、政財界に多くの人材を送り込んでいる松下政経塾に入塾していました。

 「おとなしい印象の人。一等書記官になったのか、大使館のパーティーの案内を持ってくるとき久しぶりに名前を見た」(松下政経塾の同期・森岡洋一郎衆院議員)

 「自分の研究のために(政治家に)会っていたとしか思っていなかった」(松下政経塾の同期・平山喜基さん)

 日本語が堪能で、仕事熱心と評判だった書記官。2006年に開かれた日中関係の討論会では、司会を務めていました。しかし、書記官には「隠された素顔」があったと警視庁はみています。それは、「情報機関員」としての姿です。

 捜査関係者によりますと、書記官は中国で人民解放軍の情報機関「総参謀部」に所属。このため、警視庁公安部が書記官就任当初の2007年から動向を追っていたというのです。動向を監視する中で、警視庁は書記官が築いた政財界への独自の人脈も把握したといいます。

 日本から姿を消した書記官。警視庁公安部は、書記官が日本でスパイ活動をしていた可能性もあるとみて、実態解明を進めています。

 一方、今回の出頭要請について中国大使館の楊宇報道官は「書記官は今月、任期満了で帰国した。スパイ疑惑の報道は全く根拠のないもので、荒唐無稽の話だ」と反発を強めています。(29日16:58)








中国書記官 事実関係の把握努める

5月29日 13時32分
玄葉外務大臣は、閣議のあと記者団に対し、東京の在日中国大使館の1等書記官が外国人登録証を不正に入手していた疑いがあるとして、警視庁が出頭を要請していたことについて、まずは事実関係の把握に努める考えを示しました。

警視庁などによりますと、東京・港区の中国大使館に勤務する45歳の1等書記官は、4年前、外交官であることを隠して外国人登録証を不正に入手した疑いがあり、外国人登録証を使って銀行口座を開設し、この口座には都内の会社から顧問料や報酬とみられる現金が振り込まれていたということです。

警視庁は、今月、外国人登録法違反などの疑いがあるとして、外務省を通じて書記官に出頭を要請しましたが、中国大使館が拒否し、書記官は帰国したということです。

これについて、玄葉外務大臣は、閣議のあと記者団に対し、「けさ、関係する課から聞いたところだ。警視庁からの要請を受けて、事務的に外務省の職員が在京中国大使館に対応したと認識している。いったいどういう背景で、事実関係がどうなのか、まだ私自身承知していない」と述べました。そのうえで、玄葉大臣は、記者団が外交問題に発展するおそれはあるかと質問したのに対し、「十分に状況を把握してから申し上げたい」と述べ、まずは事実関係の把握に努める考えを示しました。

さらに、玄葉大臣は、中国では情報機関の「人民解放軍総参謀部」に所属していたとされるこの書記官が、玄葉大臣もかつて在籍していた松下政経塾に入塾していたことについて、「率直に言って、その方の顔も名前も思い出せない」と述べました。