ページ

2012/04/09

今回の「事件」を、胡錦濤国家主席を中心とした共産主義青年団派は、薄氏が中心人物である太子党派の弱体化に利用した。

薄氏解任劇「点と線」結ぶ妻 変死英国人と愛人関係?

2012.4.9 09:21

   今秋の党大会で指導部が交代する中国の政界を揺るがす、重慶市トップの薄(はく)煕(き)来(らい)共産党委員会書記(62)の解任問題。真相が明かされず、臆測が臆測を生んでいるが、ここにきて薄氏の妻で弁護士の谷開来氏(51)が疑惑の中心に浮上してきた。親交の深かった英国人ビジネスマンの不審死や、弁護士の地位を利用した不正疑惑との関連が取り沙汰され、薄氏の解任に関係している可能性が高い。

   共同通信によると、昨年11月、英国人ビジネスマンが重慶市のホテルで死亡しているのが見つかった。中国人の妻を持つニール・ヘイウッド氏=当時(41)。公安(警察)当局は過度のアルコール摂取が死因と判断して検視もせずに火葬したが、ヘイウッド氏は禁酒主義者であったことから不審死の疑いが出た。



隠蔽図り圧力か

  ヘイウッド氏は薄氏が遼寧省大連市長を務めていた1990年代に大連市で谷氏と知り合い、薄氏の息子、瓜瓜氏(24)=現在は米ハーバード大学院生=の家庭教師をしたり、英オックスフォード大学への留学を世話したりする中で谷氏と親交を深めた。だが、ヘイウッド氏の死去数カ月前から2人の関係は悪化。米紙ウォールストリート・ジャーナルなどによると、ビジネス上のトラブルとの見方のほか、抜き差しならぬ愛人関係がこじれたとの情報もあり、ヘイウッド氏は周囲に「身の危険」を打ち明けていたという。

   王立軍・元重慶市副市長の米国総領事館駆け込み事件をめぐる党の暫定報告書は、薄氏が「家族の関わる事件の隠蔽(いんぺい)を図り、王氏に圧力をかけた」ことが事件のきっかけだったと指摘しており、谷氏がヘイウッド氏の不審死に関わっていた可能性がある。疑惑について公安局長として部下から報告を受けた王氏は、ヘイウッド氏の死因は毒殺と確信し、1月下旬に薄氏に「あなたの家族が関わる重大事件があり、捜査員がプレッシャーを感じて辞職を申し出ている。適切に処理してほしい」と報告したとされる。

   2月になって薄氏は王氏の公安局長の職を解くとともに、側近らを動員し家族の捜査に関わった捜査員らを次々と拘束しており、王氏は薄氏の隠蔽工作に身の危険を感じ、米総領事館を訪れて亡命申請をしたという筋書きが浮ぶ。


「威光で顧問料集め」

  「私も妻も、いかなる個人的な財産も持っていない」。解任される前の記者会見で薄氏は訴えたが、大連市長時代の薄氏の醜聞を報道したことなどから国家機密漏洩(ろうえい)罪で服役した香港紙、文匯報の元大連駐在記者、姜維平氏=カナダ在住=は「全くのうそ」と言い切る。谷氏は北京で弁護士28人を擁する開来法律事務所の所長を務めるが、姜氏は「(谷氏は)法廷には全く姿を現さない弁護士。専ら夫の威光を借り、企業から顧問料名目で多額の現金を集めていた」と指摘する。昨年には、息子の瓜瓜氏が米国で真っ赤なフェラーリを乗り回していると香港紙で報じられ、国民のひんしゅくを買っている。


   今回の「事件」を、胡(こ)錦(きん)濤(とう)国家主席(69)を中心とした共産主義青年団派は、薄氏が中心人物である太子党(党高級幹部の子弟グループ)派の弱体化に利用した。ただ、中国指導部はほぼ例外なく、役得ビジネスなど皆すねに傷を持っているのが実態だ。薄氏の解任後、谷氏も拘束され、夫と同様に当局の調査を受けているとされるが、権力闘争の中で共青団派が探る落としどころが注目される。




米総領事館駆け込み事件 中国・重慶市は2月初め、市トップの薄煕来共産党委員会書記の側近で、暴力団一掃に取り組んだ王立軍副市長について、兼任していた公安局長を解任する人事を発表。 
直後の2月6日に王氏が四川省成都の米総領事館に駆け込んでいたことが判明、王氏の亡命申請説が出た。王氏は中国当局による説得の末、総領事館を出たが、その後、当局の取り調べを受けているとされる。 
最高指導部である党政治局常務委員会入りが有力視されていた薄氏は3月15日、解任が発表された。王氏が総領事館へ駆け込んだ理由や薄氏が解任された理由は明かされていない。(SANKEI EXPRESS)