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2012/03/09

原子力安全委 防災指針の見直し案 中間報告

「原発に潜在的危険性」=福島第1で4時間半早い避難-防災指針抜本見直し・安全委
 東京電力福島第1原発事故を受け、防災指針の抜本的見直しを進めてきた原子力安全委員会の作業部会は9日、「原発には過酷事故が起きれば深刻な事態を招く潜在的危険性がある」と明記した中間報告書をまとめた。3段階の緊急事態区分導入、避難準備区域の10キロ圏から30キロ圏への拡大、緊急対策拠点の分離が柱。

 後継組織の原子力規制庁が策定する新指針に盛り込まれる見込みだが、国や自治体が早期に防災計画や関係法令を見直すよう求めている。

 報告書の指針が採用されていれば、第1原発事故当日午後4時36分に東電が1、2号機の冷却機能喪失と判断した直後に「全面緊急事態」が宣言され、5キロ圏の住民が避難を開始。実際の3キロ圏避難指示より約4時間半早くなるという。(2012/03/09-22:52)

 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012030901095




原子力安全委:防災指針見直し案、過酷事故に対応…部会
 内閣府原子力安全委員会の作業部会は9日、原子力事故に備える国の防災指針の見直し案をまとめた。東京電力福島第1原発事故を踏まえ、新たな指針は炉心溶融や原子炉格納容器損傷などのシビアアクシデント(過酷事故)に対応しており、今後、国の中央防災会議や原発立地自治体で新指針を反映した防災計画の見直しが本格化するとみられる。

 見直し案によると、国はあらかじめ事故の深刻度を3段階に区分。原発事故では、電力各社が定める基準(EAL)に基づいて原子炉の状況を判断。過酷事故の区分に該当する場合は、放射性物質の放出前に原発から半径約5キロのPAZ(予防防護措置区域)圏の住民が直ちに避難する。半径約30キロ圏のUPZ(緊急防護措置区域)圏の住民は、放射線モニタリングの実測値に応じ、国が設定する基準(OIL)に沿って避難などの被ばく低減策を講じる。事故の深刻度の区分や、OILの基準は、4月以降の発足を目指す原子力規制庁で設定する予定。原発ごとに実際に、短時間で避難が完了するかのシミュレーションも行う。【比嘉洋】

毎日新聞 2012年3月9日 22時53分





国の原子力防災指針 中間報告
3月9日 19時57分
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、国の原子力防災指針を見直している原子力安全委員会の作業部会は、事故などの緊急事態を3つの段階に分けたうえで、最も深刻な「全面緊急事態」では、5キロ圏内の住民を直ちに避難させることなどを盛り込んだ中間報告をまとめました。

東京電力福島第一原発の事故では、住民の避難や屋内退避の範囲が国が想定を大きく上回ったほか、原発の近くで自治体などが対策を協議する拠点「オフサイトセンター」が機能しませんでした。

こうした教訓から、原子力安全委員会の作業部会は、国の原子力防災指針を見直し、中間報告としてまとめました。

それによりますと、まず、事故などの緊急事態を、新たに▽警戒事態、▽施設敷地緊急事態、▽全面緊急事態の3つの段階に分けたうえで、メルトダウンなど最も深刻な「全面緊急事態」では、半径5キロ圏内の住民を直ちに避難させるとしています。

また、これまで半径10キロまでとしてきた避難などの防災対策を重点的に整備する範囲をおおむね30キロまで広げ、従来の予測した放射線量ではなく、実際に測った値に基づき、避難などを判断するとしています。

一方、オフサイトセンターは、原発から20キロ未満に設置すると決められていますが、今後は、県庁など原発から十分に離れ、対策の中枢を担う「緊急時対応拠点」と、住民の避難誘導や放射線量の測定など行う「対策実行拠点」の2か所に分けることを求めています。

また、既存のオフサイトセンターは、原発から近すぎるとして、別の既存の施設を利用できるとしています。

防災指針の見直しの中間報告は、新しく設けられる原子力規制庁に引き継がれ、具体的な内容が決められることになっています。

 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120309/t10013615311000.html




病院など 避難に平均1週間余
3月9日 18時50分
原発事故の直後に、福島県内の30近い病院や高齢者施設が、医療設備などの整った施設に避難する際、平均で1週間余り、中には10日以上も避難先が決まらず、その場にとどまったり、転々としたりしていたことが、NHKの取材で分かりました。

避難中に死亡する人も相次ぎ、施設の関係者は、避難の際の混乱が影響した可能性があると指摘しています。

事故のあと、政府は、原発から20キロの範囲で次々と避難指示を拡大し、周辺も含めた福島県内の29の施設が患者や入所者を避難させました。

このうち、NHKの取材に応じた27の施設について、医療設備などが整った施設に避難するまでの期間を調べたところ、去年の3月11日から平均で1週間余りかかっていたことが分かりました。

原発から9キロ余りの富岡町の病院は、福島県のあっせんで高校の校舎にいったん避難しましたが、医療設備は十分でなく、自分たちで探した避難先に移るまでに7日間かかったということです。

また、原発から25キロで避難指示の範囲の外にあった南相馬市の高齢者施設は、県に避難先の確保を要請しましたが、なかなか見つからず、12日間、元の場所にとどまったほか、南相馬市の別の施設は、周辺の店舗などが避難したため、食料や暖房用の燃料などが足りなくなり、受け入れを申し出てくれた300キロ離れた施設に避難するまでに9日間かかりました。

こうした施設のうち、国が避難区域としていた原発から10キロ以内の9つの施設は、避難計画を立てて避難先を確保しておくことが、県や自治体の原子力防災計画に記されていますが、いずれの施設も移転先を確保しておらず、県や自治体から具体的に避難計画を立てるよう求める指導もなかったということです。

これについて、周辺の自治体の1つの双葉町は「指導していたはずだが、確認できない」としていますが、ほかの自治体は「原発事故による大規模な避難については想定が甘く、指導が足りなかった」などと話しています。

また、これらの施設では、3月中に92人が亡くなり、施設の関係者は避難の際の混乱が影響した可能性があると指摘していて、原発事故の避難の在り方が改めて問われています。

福島県も避難計画作成を確認せず
福島県は、病院や高齢者施設で、県の防災計画で記している原発事故を想定した避難計画が作られていなかったことついて、「当然作られていると考えていた」としていますが、その後、実際に作ったかどうかは、自治体や施設に確認していないということです。

そのうえで、福島県は「避難計画の重要性は施設に周知してきたが、作成されていなかったとすれば、誠に遺憾だ。今後は防災体制の充実を図りながら、避難計画の作成を促したい」というコメントを出しました。

また、原発事故を想定した防災対策を所管する国の原子力安全・保安院は、福島県内の病院や高齢者施設で、あらかじめ避難先などを決めた避難計画が作られていなかったことについて、「施設の避難計画の策定状況は把握しておらず、今後、実態を把握して、実践的な防災体制の構築に努めていく」とコメントしています。

また、国が避難区域としていたところより広い範囲で施設の避難が必要となったことについては、「今回の事故で、避難の範囲が事前の想定を大幅に超えたことを受けて、原子力安全委員会で範囲の拡大について見直しを行っている。今回の事態を教訓として、国としても、病院などの施設が適切な避難ができるよう、防災指針を改定して、基準の見直しを進めていく」としています。


 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120309/t10013612761000.html




原発防災 進まぬ自治体の対応
3月8日 20時58分

東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、避難などの防災対策を整備する範囲が、これまでの原発の半径10キロから30キロに拡大されます。

その結果、対象となる市町村は130余りとこれまでのおよそ3倍に増え、これらの市町村や道府県は、原発事故を想定した新たな地域防災計画を、ことし10月初めごろまでに作ることを義務づけられます。

しかし、各地では避難などを巡って課題が山積しています。


高齢者施設の避難に課題・佐賀
九州電力の玄海原子力発電所からおよそ3キロのところにある佐賀県玄海町の特別養護老人ホーム「玄海園」では、福島第一原発の事故を教訓に、入所者の避難対策の検討を進めています。

100人のお年寄りが暮らしていて、このうちおよそ半数が寝たきりですが、避難にはいくつもの課題があることが分かってきました。

寝たきりのお年寄りを移動させる場合、ベットから車いすへ移すだけでも2人がかりで、寝たきりのお年寄りの体に負担をかけない状態で移送する専用の車両は、この施設には2台しかありません。

また持ち運びのできるたんの吸引器や酸素マスクも足りません。

この施設が避難先としているおよそ32キロ離れた多久市にある別の施設でも、寝たきりのお年寄りのためのベッドが足りません。

特別養護老人ホームの施設長は、「100人の避難は施設だけでは限界があります。避難することで2次災害が起きないようにしなければならないので、本当に大変なことです」と話しています。

佐賀県が改訂した地域防災計画では、高齢者施設の避難先の確保や移動手段などは、それぞれ施設ごとに対応を委ねているのが現状です。

玄海原発の30キロ圏内にある77の高齢者施設にNHKが尋ねたところ、「避難先が決まっている」と答えたのは僅か1割にとどまっていました。

佐賀県は「市や町と相談しながら適切な場所を進めていきたい」と話しています。


住民が独自に避難準備・松江
松江市鹿島町の古浦地区は、島根原発からおよそ3キロの場所にあり、事故が起きた際に直ちに避難する「PAZ=予防的防護措置準備区域」に入っています。

福島第一原発の事故を受けて、地区では自治会が中心になって、ことし1月までに320世帯すべてを対象に、原発事故が起きた場合の避難に関する独自のアンケート調査を行いました。

このうち、避難にあたって不安に感じていることを尋ねる設問では、「足が不自由で支援が必要」、「高齢で独り暮らしなので避難できるかどうか不安」という声が寄せられました。

地区ではアンケート調査の結果を基に、こうした人たちの避難を手助けする人を事前に決めることにしています。

また地区では、原発事故で避難する際にはマスクや長袖の服を身につけることなど、注意点をまとめたパンフレットを作成し、すべての世帯に配付しました。

しかし、この地区から松江市の中心部に行く道は1本しかなく、しかも原発のある方向に向かって逃げるしかない状況で、避難対策は万全ではありません。

地区の自治会長を務める亀城幸平さんは「アンケート調査をきっかけに、住民には福島の事故を自分自身の問題として考えてほしいです」と話しています。


びわ湖での避難に課題が・滋賀
福井県の原発から30キロ圏内にある滋賀県高島市では、福井県の原発で事故が発生した場合、多い時には3万人以上が避難の対象になると想定し、去年8月から避難計画作りを進めています。

その大きな課題として浮かび上がっているのが、住民を避難させる手段や経路の確保です。
原発と反対方向の南に避難する幹線道路が国道2本に限られているため、住民が一斉に避難を始めた場合、大渋滞になると考えられるからです。

その対策として市では、市内にある合わせて12の漁港や船だまりを拠点とし、びわ湖を使った船による避難も選択肢として検討しています。

ただ、これらの漁港はすべて昭和50年代に改修されたもので、耐震基準を満たした設計になっていません。

その1つ、高島市マキノ町の知内漁港も昭和51年に改修された港で、30年以上が経過した今は、堤防の側面を覆う鉄板の腐食が進み、現在改修工事が行われています。

市では、港の耐震性の調査を始めることにしているほか、避難に使う船をどれくらい確保出来るかどうかも検討を進めることにしています。

高島市原子力防災対策室の古川茂樹室長は「車が大渋滞して動けないという状況の中では湖上輸送が選択肢としてあると思う。港の耐震化は遅れている部分があるのでこれから調査していきたい」と話していました。


受け入れ先も不安・鳥取
原子力発電所の事故に備えた避難対策は、重点的に整備する範囲となっている30キロ圏内だけにとどまりません。

原発からおよそ75キロ離れた鳥取県の倉吉市は、鳥取県の避難計画案で、島根原発で事故が起きた場合、島根県境の米子市の一部の住民およそ1万2000人の受け入れ先となっています。

このため倉吉市では、学校や公民館など27の公共施設が避難所に指定されましたが、避難生活が長期化した場合、市は施設を利用する地元住民に影響が及ぶことを懸念しています。

避難所の1つに指定され、およそ270人の避難者を受け入れる計画の上北条小学校では、体育館はほぼ毎日、体育の授業や地域のクラブ活動に使われていて、学校は避難の長期化で授業などに支障がでないか不安を感じています。

山田正隆教頭は、「避難される方に快適に過ごしていただけるようにしたいと思うが、やはり学校は子どもたちの学習の場であるということを外せないので、そのあたりはこれからの検討課題だと思う」と話しています。

倉吉市では、およそ1600人分の食料品や毛布などの生活用品を備蓄することになっていますが、市民の避難を想定したものであるため、備蓄は足りないほか、避難者にどのように提供するかなど運営面でも課題が残されています。

倉吉市は「外からの避難者をどのように受け入れていくのか、全然決まっていないので、鳥取県や住民と調整をしないといけないと思っている」と話しています。


 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120308/t10013587311000.html