3月7日 17時6分
首都直下地震の防災対策のために進められてきた専門家グループの研究で、東京湾北部では、従来考えられていたよりも浅いところで地震が起きる可能性があることが分かりました。
大地震が起きた場合、湾岸地域などの一部で震度7の激しい揺れとなるおそれがあるとしています。
東京大学などの研究グループは、首都直下地震の防災対策のため、5年前から国の委託による研究を行い、7日、研究成果を発表しました。
このうち、東京大学地震研究所の平田直教授は、関東各地に設置した地震計の観測データから地下の構造を分析しました。
その結果、関東平野の地下に南から沈み込んでいる「フィリピン海プレート」という岩盤と、陸側の岩盤との境目が、東京湾付近では従来考えられていたより10キロほど浅いことが分かりました。
国が想定する首都直下地震のうち、東京湾北部を震源とする大地震では、最大で震度6強の激しい揺れが予想されています。
今回の研究で、従来の想定より震源が浅くなる可能性が出てきたということで、湾岸地域などの一部では震度7の揺れとなるおそれがあるということです。
また、東京大学地震研究所の纐纈一起教授は、地盤のデータから想定される揺れの強さを詳しく分析し、今月中をめどに公表するとしています。
纐纈教授は「首都圏では、今回の研究で強い揺れが想定されていない地域でも過去に大地震が起きている。住宅の耐震補強や家具の固定などの対策は、広い範囲で進める必要がある」と話しています。
国は、平成24年度に首都直下地震の被害想定などを見直すことにしていますが、今回の研究成果は新たな想定や対策に反映される見通しです。
首都直下地震
国は、首都圏で甚大な被害のおそれがあるいわゆる直下型の大地震を「首都直下地震」と名付け、8年前、18通りの地震について被害想定をまとめました。
このうち、東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の地震の想定は、最大、震度6強の激しい揺れで建物の倒壊や火災が相次ぎ、最悪の場合、およそ1万1000人が死亡、経済被害は112兆円に達するとされています。
東京湾北部の地震は、震源地が都心に近く、社会的な影響が大きいことから、「首都直下地震」の代表的な想定と位置付けられています。
ただ、この付近では幕末や明治に大地震が起きたと言われているほかは、過去にどのようなタイプの地震が起きてきたのか、明確な記録はありません。
一方、「首都直下地震」の想定の中には、埼玉県西部から東京の多摩地域に伸びる「立川断層帯」や、神奈川県から静岡県東部に伸びる「神縄・国府津ー松田断層帯」など、存在の明らかな活断層を震源とする地震もあり、これらの想定では、最大、震度7の非常に激しい揺れが推計されています。
こうした「首都直下地震」の想定とは別に、政府の地震調査委員会は、茨城県南部を含む関東南部で明治以降の120年余りにマグニチュード7前後の大地震が5回、起きていることから、今後30年以内に大地震が起きる確率を70%程度と推計しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120307/k10013551121000.html