東京電力福島第1原発事故の賠償範囲を検討する原子力損害賠償紛争審査会(会長・能見善久学習院大教授)は8日、新たな賠償指針策定に向けて詰めの議論を行った。旧緊急時避難準備区域の住民に対する月額10万円の慰謝料については、同区域の設定が昨年9月30日に一括解除され、インフラ復旧も進んでいるとして、今年8月末を目安に支給を打ち切る案が有力となった。
福島第1原発の半径20~30キロ圏内に政府が設定した同区域には、福島県南相馬市、田村市、川内村、広野町などが含まれる。8月末とする根拠について審査会は、2学期から学校に通える環境が整うことなどを挙げた。ただ、「経済の活発化は期待できず、医療体制への不安も強い」と支給終了の時期を示すのは尚早との意見もあり、能見会長は「インフラが整っていなければ見直しもあり得る。ADR(裁判外紛争解決手続き)での個別救済も可能だ」との考えを示した。(2012/03/08-20:04)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2012030800960
営業・就労の原発賠償、打ち切り期限設けず 文科省審査会
2012/3/8 19:44
文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は8日、東京電力福島第1原子力発電所の事故の影響で避難生活をしている住民の営業と就労の損害賠償について、支払いを打ち切る期限を設けないことで大筋合意した。放射線量が高いために5年以上帰宅が見込めない「帰還困難区域」の住民の不動産や住宅は、事故前の時価で全額賠償する方針も決めた。16日の同審査会で正式決定する。
営業や就労の損害賠償を終える期限を当面設けない理由として、審査会は避難指示が解除されても人口やインフラの回復がすぐに見込めず、事故前のような収入が確保できないことを挙げた。
内閣府は3月末に福島県内の避難指示区域を放射線量に応じて「避難指示解除準備区域」「居住制限区域」「帰還困難区域」の3つに再編する。同審査会は、帰還困難区域に残された不動産、住宅、乗用車などは全額賠償の対象とするほか、住民が帰宅を断念して移住する場合も、その移転費用を補償する。
一方、昨年9月に解除された「緊急時避難準備区域」については避難費用や精神的損害への賠償を8月末で打ち切る方向で調整する。9月までに学校が再開するなど、事故前の環境が回復することを踏まえて判断した。