発電燃料費9500億円増
東京電力を除く電力会社9社の2011年4~12月期連結決算が31日、出そろった。(井上忠明)
原子力発電所が再稼働できず、火力発電の燃料費が大幅に増えたため、税引き後利益は四国と沖縄を除く7社で赤字となり、赤字額の合計は4637億円に上る。原発再稼働の時期は依然見えず、電力会社は今後も厳しい経営が続きそうだ。
火力発電増える
9社の11年4~12月の燃料費は総額2兆4500億円と、前年同期より6割も増えた。増加額は約9500億円に達する。沖縄を除く8社の4~12月の原発稼働率は単純平均で35%と、前年同期のほぼ半分に落ち込んだ。原発の代替で火力発電を増やしたため、液化天然ガス(LNG)など燃料の輸入が増加した。さらに最近の原油価格の上昇も追い打ちをかけた。
31日に記者会見した関西電力の八木誠社長は、「本当に厳しい」と苦渋の表情で話した。関電は全発電量に占める原発の割合が高く、保有11基のうち10基が12月末までに止まった。業績への影響は深刻で3年ぶりの税引き後赤字になった。燃料費は前年同期より85%(2311億円)増加した。
税引き後赤字が最も多いのは東北電力で、女川と東通の両原発が停止し、燃料費は前年同期より約1600億円増えた。東日本大震災や昨夏の豪雨で被災した火力や水力発電所の復旧費がかさんだことも響いた。
東電の11年4~12月期決算は2月14日までに発表される。燃料費の増加や事故収束費用の計上などで他電力より突出し、数千億円規模の税引き後赤字になるのは確実だ。
再稼働は
一方、12年3月期の業績見通しについては対応が分かれた。
東北電は原発を3月末まで再稼働できない前提で、税引き後利益が過去最大の2500億円の赤字になるとの予想を初めて公表した。一方、関電と九州電力は、「原発再稼働の実現で業績は回復できる」(九電の真部利応(まなべとしお)社長)などとしており、原発停止が前提の予想を今回も見送った。
全国54基の原発は1月末までに51基が停止し、再稼働しなければ4月下旬までにすべてが止まる。再稼働には津波対策やストレステスト(耐性検査)に加え、地元の同意も欠かせず、いずれもハードルは高い。
原発を再稼働できない場合、電力会社は収益改善の手段として、電気料金の値上げに頼らざるを得ない。ただ、利用者に理解してもらうのは難しく、今後も綱渡りの経営が続く。
(2012年2月1日 読売新聞)
◆電力9社の4~12月期連結決算◆
売上高 経常損益 最終損益 燃料費
北海道 4574(12.6) ▼45( - ) ▼133( - ) 1075(126.8)
東北 11616(▼6.9)▼1339( - )▼1677( - ) 3494( 80.7)
中部 17450( 1.8) ▼418( - ) ▼707( - ) 7162( 49.1)
北陸 3613(▼0.8) 99(▼66.5) ▼30( - ) 941( 69.2)
関西 20465( 0.4) ▼957( - )▼1181( - ) 5023( 85.2)
中国 8468( 6.1) 251( 15.3) ▼4( - ) 2206( 19.2)
四国 4394( 2.6) 220(▼44.3) 81(▼56.2) 852( 53.7)
九州 10946( 1.2)▼1063( - ) ▼905( - ) 3441( 80.1)
沖縄 1278( 4.4) 122(▼10.4) 82(▼14.9) 376( 18.1)
※単位・億円。▼はマイナスまたは赤字、かっこ内は前年同期比増減率%、-は比較できず、燃料費は単独決算ベース
毎日新聞 2012年2月1日 東京朝刊
電力7社が最終赤字 東電除く9社の決算
2012/2/1 0:24
東京電力を除く電力会社9社の2011年4~12月期連結決算が31日出そろった。原子力発電所の停止が長期化し、火力発電で代替したため燃料費負担が急増、7社の最終損益が赤字となった。原発を保有しない沖縄電力を除く8社の燃料費は合計約2兆4200億円と前年同期から1兆円近く増え、経営環境の厳しさが増している。
8社が保有する34基の原発のうち、現在稼働しているのは北海道電力の泊原発3号機と関西電力の高浜原発3号機の2基のみ。原発での発電分を補うために火力発電を増やしていることで、8社合計の燃料費は2兆4194億円と前年同期に比べ64%増加した。
関電の最終赤字は1181億円(前年同期は1077億円の黒字)と4~12月期としては四半期開示を始めた04年3月期以降で最大の赤字幅になった。中部電力も707億円の赤字。九州電力も4~12月期では初の最終赤字を計上した。電力会社には燃料の輸入価格の上昇を毎月の電気料金に転嫁できる制度があるが、原発停止で火力発電が増えた分を補いきれなかった。
東電は4月から企業向け電気料金を値上げする方針を発表したが、顧客や政府の反発を受け、現時点で他の電力会社に追随する動きはない。関電の八木誠社長は「原発の再稼働に向けグループの総力を結束する」と話す。実際に12年3月期中に原発の再稼働にこぎ着けられる可能性は低いが、稼働を諦めていないことを理由に、6社が通期の損益予想を公表しなかった。
予想を公表した中部電の燃料費は前期比5割増の1兆400億円、東北電力は7割増の5000億円になる見込みで、通期でも大幅な経常赤字になる。原発を持つ8社のうち唯一、4~12月期で最終黒字を確保した四国電力は予想を出していないが「仮に伊方原発1~3号機のすべてが年度末まで再稼働できなければ赤字は避けられないだろう」(千葉昭社長)とする。
安定配当などの株主配分策を見直す動きも広がる。九電は11年3月期まで7年連続で年60円配を実施してきたが今期は50円に減配する。東北電は設立直後の1952年3月期以来、60年ぶりに通期で無配に転落。関電も3月末までに予定していた上限190億円の自社株買いを取りやめた。
沖縄電の4~12月期の純利益は82億円と前年同期比15%減だった。