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2012/02/17

オリンパス、粉飾決算指南役の野村証券OBらに報酬100億円

オリンパス、粉飾指南役などに報酬100億円
 光学機器大手「オリンパス」の粉飾決算事件で、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で指南役の社長が逮捕された東京都内のコンサルティング会社の銀行口座に、数年間にわたり、オリンパス側から総額数十億円の報酬が振り込まれていたことが警視庁の調べでわかった。

 一連の損失隠し工作に協力した見返りとみられ、他の外部協力者らに支払われていた計約70億円と合わせると、100億円前後が不正工作の報酬などとして提供されていたことになる。

 同庁幹部などによると、コンサルティング会社「グローバル・カンパニー(GC)」社長、横尾宣政(のぶまさ)容疑者(57)は、役員の羽田拓(たく)(48)、元役員小野裕史(ひろし)(50)の両容疑者(金融商品取引法違反容疑で逮捕)とともに、オリンパス前常勤監査役、山田秀雄容疑者(67)(同)らの依頼で、損失隠しに協力していた。

オリンパスは、1100億円に達していた損失を穴埋めするため、国内外4社の買収資金を流用していたが、横尾容疑者は、このうち国内3社をオリンパスに紹介するとともに、3社の代表や役員に就任。損失飛ばしに使われた約20の国内外のファンドの一部も運営していた。

報酬は、2000年代後半の数年間にGCの口座に振り込まれていたという。3人は野村証券出身で、1998年に次々と退職。羽田容疑者は横尾容疑者の部下だった。

(2012年2月17日03時02分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120217-OYT1T00020.htm




オリンパス 指南役会社に数十億円
2012年2月17日 夕刊
オリンパスの損失隠し事件で、指南役とされる国内大手証券会社OB横尾宣政容疑者(57)が代表を務めるコンサルタント会社が、数十億円の報酬を得ていたことが捜査関係者への取材で分かった。ほかの指南役二人にも三十五億円の報酬が支払われており、東京地検特捜部と警視庁は、オリンパスが協力の見返りとして多額の資金を外部に流出させたとみている。

 捜査関係者によると、横尾容疑者が代表を務めるコンサルタント会社「グローバル・カンパニー」は、国内ベンチャー企業三社をオリンパスに紹介。同社は二〇〇六~〇八年、総額七百三十四億円で三社を買収し、企業の将来性を見込んだ価値を過大に計上することで自社の純資産を水増しして、過去の損失の穴埋めをしたとされる。

 グローバル社は業務委託費名目などで、オリンパスからこれまでに数十億円を受け取り、横尾容疑者のほか、グローバル社役員羽田拓(48)、元役員小野裕史(50)両容疑者の三人で分配していたという。

 横尾容疑者は約二十年前、証券会社の法人担当としてオリンパスの資産運用を担当。一九九八年に退社してグローバル社を設立し、同僚だった羽田、小野両容疑者を役員に迎えた。横尾容疑者らは、国内大手証券会社時代に知り合ったオリンパス前監査役山田秀雄容疑者(67)らに依頼され、損失を海外ファンドに移す「飛ばし」に協力。飛ばしに必要なファンドを組んだり、海外の銀行幹部を紹介したりしたという。





オリンパス10年以上損失隠し認識か
 オリンパスの損失隠し事件で、同社が含み損を抱えた金融資産の「飛ばし」に利用したファンドの設立を、前会長兼社長の菊川剛容疑者(70)が社長に就任する前の2000年1月に社内会議で提案していたことが18日、関係者への取材などで分かった。

 同社の第三者委員会の報告書は「(菊川容疑者は損失隠しを)遅くとも00年1月までには知った」と指摘。ファンド設立を提案したのは大手証券会社OBの横尾宣政容疑者(57)。運営も担当したとされ、同容疑者側に多額の金が流れた。東京地検特捜部や警視庁は菊川容疑者が10年以上前から損失隠しを認識、横尾容疑者が積極的に関与したとみて調べている。

 関係者や第三者委の報告書などによると、当時常務だった菊川容疑者は00年1月、経営会議でファンド設立を提案。当時、総務・財務部長だった前常勤監査役の山田秀雄容疑者(67)が説明し、設立は承認された。

 ファンドは00年3月、オリンパスが300億円を出資し設立。投資などを名目にしていたが、実際には飛ばし先のファンドに資金を送金するなど、損失隠しに利用された。横尾容疑者が実質的に運営していたとされる。

 毎年の運営報酬のほか、07年のファンド解約時にも横尾容疑者側に多額の金が流れたが、第三者委の調査に「正当な報酬」と説明したという。警視庁などは、不正に協力したため多額の報酬が支払われた可能性があるとみて調べる。(共同)

 [2012年2月18日18時48分]





オリンパス指南役、野村で味わった転落人生
2012.02.17
 オリンパスによる巨額損失隠し事件では、前会長兼社長の菊川剛容疑者(70)を中心とする旧経営陣と、損失隠しに関わった野村証券OBら関係者の計7人が逮捕された。一連の不正は野村OBの横尾宣政(のぶまさ)容疑者(57)らが指南したとされる。“切れ者”たちの正体を、野村時代を知る元同僚が証言した。

 「一言で言うと、独断専行。頭が切れて周囲を寄せ付けない凄みがあった。だが、その優秀さが仇となり、態度が横柄と取られる場面もあった」

 横尾容疑者の印象について、元同僚はこう振り返る。

 オリンパスは、1990年代の財テク失敗などで抱えた1000億円超の含み損を、99年3月期から投資ファンドなどに移す「飛ばし」で隠蔽。2006年から08年にかけて行った国内企業3社や英医療機器メーカーの買収も含み損の穴埋めに利用していた。それらのスキームを指南したのが、横尾容疑者と中川昭夫容疑者(61)を中心とした野村OBだ。

 「中川氏は野村で主に海外畑を歩いた。複数の外資系金融に勤めた『渡り鳥』で、野村の中では海外移籍の道筋を開いた先駆者的存在。横尾氏は新宿支店長時代にオリンパスとの関係を深めた。この2人を中心として野村OBとオリンパスの関係が築かれた」(野村証券関係者)

 横尾容疑者は京都大経済学部出身。「入社後早々に頭角を現した。金融知識も豊富で同期入社組ではピカイチ」(同)で、花形部署の事業法人部に若くして抜擢された。

 「ところが、事業法人部に移ってから伸び悩み、新宿支店長に異動した。法人部で順調にいけば役員に昇格できる。ところが、支店長ポストでは次長どまり。横尾氏は事実上出世コースから外されたということです」(前出の元同僚)

 関係者によると、当時の野村証券は外資系金融から「ミリタリー」と揶揄されるほどに上下関係が厳しかったという。

 「硬直化した組織の中で生きることに見切りをつけ、金融マンとしてチャレンジする道を選んだのでは」と元同僚は語る。

 オリンパスとの取引で横尾容疑者は数億円規模の報酬を手にした。だが、金融マンとしてのモラルを逸脱する「損失隠し」への関わりで、すべては水泡に帰すこととなった。







読み誤った「時代」 策におぼれた指南役 「大手証券では扱いにくい顧客ニーズがある」
2012.2.17 22:31
 「これからはマルチメディアが大きくなる」。IT革命前夜の平成の初めのころに大手証券会社に在籍していた横尾宣政(57)=金融商品取引法違反容疑で逮捕=の口癖だった。

 仕事を終えたある日、営業企画部で横尾と机を並べていた元社員は、横尾に誘われ東京・六本木の中華料理屋へ行った。酔った横尾はコースターに、IT産業が拡大していく様子を数式化して描いた。横尾の予言は数年後に現実となった。「頭が切れ、時代が読める人」。そう思った。

 横尾は海外勤務時代に多くのM&A(企業の合併・買収)をまとめ、商品企画課長として本社に戻ってきた。同期の稼ぎ頭で、部下に仕事の発注が来ても無意味と判断したら臆せず上司に抗議した。元社員にとって「正義感が強く情に厚い。男気もある」との印象は変わらない。一方で「飛ばしと損失穴埋めを行える知識、経験、人脈のすべてを持っていた」(元社員)という。

 横尾はオリンパス前監査役の山田秀雄(67)=同、前副社長の森久志(54)=同=の2人を、ファンドに資金融資する海外銀行幹部と引き合わせ、「飛ばしスキーム」が形成されつつあった平成10年、証券会社を去った。

 同時期、山田らが相談を持ち掛けた相手が、かつて横尾と同じ大手証券会社に在籍していた中川昭夫(61)=同=だ。中川は飛ばしの手法を指南し、租税回避地に受け皿ファンドを設立。トップセールスマンとして証券会社を渡り歩き、独立したころだった。

 「大手証券では扱いにくい分野の顧客ニーズがある。グローバルな投資ができるプロ集団を作るんだ」

 中川は会社設立について、周囲にこう語っていた。捜査関係者は「損失を隠そうとしていたオリンパスの状況と、“腕試し”をしたい2人の思惑が一致したのだろう」と話す。

 証券市場の信頼をも失墜させた今回の事件。バブルを引きずり、策におぼれる「時代錯誤」な犯罪をかつての横尾の同僚はこう結論付けた。

 「株価も戻り、一時的に飛ばすだけという認識だったのかもしれないが、リーマン・ショックもあり世界的な不況になった。時代を読めたはずなのに、いつの間にか、時代を読み誤っていたんだよ」(呼称略)

 ◇






証券OBと経営陣、80年代財テク期から親交
オリンパス粉飾 2012/2/17 2:01
 オリンパスの粉飾決算に共謀したとして逮捕された証券会社OBら。関係者らの話によると、指南役として中心的な役割を果たしたとされる横尾宣政社長と中川昭夫元取締役は、オリンパスが財テクに走り始める1980年代から同社幹部らとの親交を深めていった。

 京都大に理系で入学し、文系に転じたという横尾社長は、大手証券会社員時代から「理知的で目立っていた」(同期入社の知人)。正義感が強く部下からの信頼も厚く、東京・新宿の中核支店長も務めた「エース中のエース」(同)だった。

 事業法人部に在籍していた80年代、資産運用を活発化させていたオリンパスから相談を受け、アドバイスしているなかで関係を深めていった。

 同社子会社の元社員は、同社の会議室に菊川剛前社長や森久志前副社長、山田秀雄前監査役(67)が集まり、横尾社長を囲んで談笑する姿を頻繁に目にしたという。

 中川元取締役も、横尾社長と同じ大手証券会社出身。早期退職し、外資系証券会社を渡り歩くなかで山田前監査役と知り合った。元同僚は「営業マンとして天才的だった」と評価する一方、「金の使い方が荒い人物。今回の事件の絵を彼が描いたとしても不思議ではない」と話す。

 近年は生活の拠点を香港に移しており、一連の問題が表面化してから帰国した。