東京電力福島第1原発事故で、東電は30日、炉心溶融(メルトダウン)が起きた1~3号機について、溶けた核燃料の位置の推定を公表した。データ解析の結果、1号機は「相当量」、2、3号機は一部の溶融燃料が原子炉圧力容器から格納容器に落下したと推定。床面のコンクリートを1号機では最大65センチ浸食した可能性があるが、いずれも格納容器内にとどまっており、注水で冷却されているとしている。
東電の松本純一原子力・立地本部長代理は同日の記者会見で、「燃料の状況はほぼ推定できた。冷温停止状態の判断に変更はないが、10年先、20年先の燃料取り出しはこうした条件を加味して考えないといけない」と述べた。
原子炉内の状況は直接確認できないため、東電は核燃料の崩壊熱などを基に計算。経済産業省原子力安全・保安院が開いた「炉心損傷推定に関する技術ワークショップ」に同日提出した。
東電の解析によると、非常用炉心冷却装置が十分機能せず、注水停止時間が長かった1号機では、ほぼ全ての燃料が本来の位置から溶け落ち、圧力容器底部を破損したと推定。燃料が全て格納容器内に落ちたと仮定すると、高熱で格納容器床のコンクリートを最大65センチ浸食するという。ただ、床の厚さは最も薄いところで約1メートルあり、東電は容器を突き抜けていないとみている。
また、一定時間冷却が続いた2、3号機では、燃料の約6割が溶け落ちたと推定。そのまま格納容器に落ちたとしても、床コンクリートの浸食は2号機で最大12センチ、3号機で同20センチにとどまるとした。(2011/11/30-20:54)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011113000590
1号機溶融燃料 65cm浸食
11月30日 19時6分
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、メルトダウンが起きた1号機の燃料は、鋼鉄の原子炉の底を突き破って相当の量が格納容器に落下し、容器の底のコンクリートを溶かして最大で65センチ浸食していると推定されることが、東京電力の解析結果から分かりました。2号機と3号機についても一部の燃料は格納容器に落下していると推定しており、改めて事故の深刻さが浮き彫りになっています。
福島第一原発の1号機から3号機については、核燃料が溶け落ちるメルトダウンが起き、一部の溶けた燃料が原子炉から格納容器に落下したとみられていますが、事故から8か月以上がたっても、詳しい状況は分かっていません。
これについて東京電力や国内の複数の研究機関が、これまで得られた原子炉の温度や注水状況などから溶けた燃料の状態を異なる方法で解析し、30日、国が開いた研究会で結果を発表しました。
このうち東京電力の解析では、最も厳しい評価をした場合、1号機については、すべての燃料が溶け落ち、原子炉の底を突き破って相当の量が格納容器に落下したと推定しています。
格納容器の底にはコンクリートがあり、さらに鋼鉄の板で覆われています。燃料が格納容器の底に落ちると、高熱で反応してこのコンクリートを溶かして浸食するということで、最悪の場合、1号機で65センチの深さまで達すると推定しています。最もコンクリートの薄いところでは、格納容器の鋼板まで37センチしかないということで、改めて事故の深刻さが浮き彫りになっています。
また、2号機と3号機についても、最悪の場合、それぞれ57%と63%の燃料が溶け落ちて、その一部が格納容器に落下したと推定しています。東京電力によりますと、原子炉と格納容器の温度は、21日現在で、いずれも100度以下になっていて、溶けた燃料は水で冷却されており、コンクリートの浸食は止まっていると評価しています。
研究会では、このほかの研究機関の解析結果も発表され、複数の結果を基に原子炉や燃料の状態について議論されました。東京電力や国は、今回の解析結果をさらに詳しく分析し、今後の廃炉に向けて核燃料をどのように取り出すかなどについて検討することにしています。
原子力安全基盤機構、技術参与の阿部清治さんは、東京電力の解析結果について「間違っているとは思わないが、まだ第一歩だと受け止めている。解析結果は一つだけでは答えを導き出すことができないからだ。今後はいろいろな解析結果を積み重ねて、事故の実態を分析していく必要がある」と話しています。
福島第1原発:1号機燃料85%超落下 東電など解析
東京電力福島第1原発1号機で、炉心溶融(メルトダウン)によって原子炉圧力容器が破損し、85%以上の核燃料が格納容器に落下したとの解析を、経済産業省所管のエネルギー総合工学研究所が30日発表した。東電の解析でも相当量の核燃料が格納容器に落ちてコンクリートを最大65センチ侵食したと推計した。核燃料は格納容器の外に漏れていないが、事故の深刻さを改めて示す結果で、政府や東電は廃炉作業などに活用する。
同研究所は、詳細に原子炉内の状況を追跡できる方法を使用し、核燃料の損傷状態を試算した。その結果、1号機では地震による原子炉の緊急停止から5時間31分後に核燃料の被覆管が壊れ、7時間25分後に圧力容器の底が破損。核燃料の85~90%が格納容器に落下したと算出された。2、3号機でも約7割の核燃料が溶けて格納容器に落下した可能性があると推定した。
また、東電は別の方法で解析。1号機では、溶け落ちた核燃料の量は不明だが、「相当な量」とした。2、3号機も一部の核燃料が落下したと推定。いずれも落下した溶融燃料が格納容器の床のコンクリートを溶かす「コア・コンクリート反応」が起き、1号機では最大65センチ侵食した。燃料から格納容器の鋼板までは最悪の場合、37センチしかなかったことになる。ただし、格納容器の下には厚さ7.6メートルのコンクリートがあり、地盤に達していないとしている。汚染水が大量発生している原因は、配管の隙間(すきま)などから格納容器の外に漏れているためと考えられる。
一方、2号機での侵食は最大12センチ、3号機で同20センチと推計した。
今回の解析が冷温停止状態の判断に与える影響について、経産省原子力安全・保安院は「原子炉の温度などの実測値を基にしているので関係ない」と説明。岡本孝司・東京大教授(原子力工学)は「燃料が格納容器の底に落ちていても、水につかって冷やされており原子炉は安定している。さらに情報を集めて解析精度を上げ今後の作業に役立てる必要がある」と提言する。【河内敏康、西川拓】
毎日新聞 2011年11月30日 21時29分(最終更新 12月1日 0時12分)
福島1号機の溶融燃料、格納容器の床65センチ侵食 東電発表
2011/11/30 21:09
東京電力は30日、福島第1原子力発電所の原子炉内で、溶け落ちた核燃料がどうなっているか推定した結果を発表した。1号機では全量が原子炉圧力容器を突き抜けて格納容器に落下。底に敷かれたコンクリートを、場所によっては鋼鉄製の容器の壁から37センチのところまで侵食したという。燃料の広がりは今後の除染や廃炉へ向けた作業を妨げる可能性がある。
30日に国が開いた研究会で、東電が水位計データなどをもとにしたコンピューター解析の結果を示した。政府と東電は年内に冷温停止状態の達成を計画する。圧力容器底部が100度以下になるのが条件の一つだが、1号機の圧力容器に燃料が残っていなければ、底部温度を判断基準にする意味は薄れる。
東電の推定によると、地震後もっとも早く炉心溶融(メルトダウン)を起こした1号機は最悪の仮定では全燃料が格納容器に落下、コンクリート床の深さ1.2メートルのくぼみなどにたまった。燃料は1500度以上になり、コンクリートと反応して最大65センチ侵食したという。燃料は格納容器内にはとどまっている。
溶けた燃料が配管を傷つけ、高濃度の汚染水が格納容器の外に流れ出した可能性もあると推定した。東電は2号機で燃料の最大57%、3号機では同63%が溶け落ち、格納容器の床を12~20センチ侵食したと試算した。
2、3号機では溶け落ちた核燃料の3%程度が水から露出しているものの、冷却は進んでおり侵食を起こす反応は「現在は停止している」と分析した。2号機の格納容器の一部は11月でも約400度と高温だが、「温度計付近に溶けた燃料が付着していると考えられる」(東電)。
ただ、水位計などのデータは信頼性に問題がある。1号機で事故直後に圧力が急低下した理由なども不明。エネルギー総合工学研究所の内藤正則部長は「圧力容器の支えが損傷し、傾いている可能性もある」とみる。
岡本孝司・東大教授は「(燃料が圧力容器内にとどまった)米スリーマイル島原発事故のときより燃料の取り出しは難しい」と指摘、廃炉作業は難航する公算が大きい。東電などは今後、別の計算法による推定も試みる。