11月23日 4時34分
大王製紙の井川意高前会長が、グループ企業から引き出した巨額の資金を海外のカジノに使い、損害を与えたとして東京地検特捜部に逮捕された事件で、前会長は期限を「あすまで」などと指定して金を振り込ませていたことが分かりました。特捜部は、前会長がカジノの借金の返済に追い込まれ、巨額の資金を引き出していたとみて調べています。
大王製紙の前会長、井川意高容疑者(47)は、ことし7月から9月にかけてグループ企業4社から32億円を引き出し、自分の口座などに振り込ませ損害を与えたとして、22日、東京地検特捜部に特別背任の疑いで逮捕されました。
特捜部によりますと、振り込みは7回におよび、中には1度に16億円余りが入金されたケースもあったということです。
また井川前会長は、グループ企業の役員に対し、カジノ関連の会社の口座を電話で告げ、振り込みの期限を「あすまで」などと指定していたということです。特捜部は、井川前会長がカジノでできた借金の返済に追い込まれ、グループ企業から巨額の資金を引き出していたものとみて調べています。
井川前会長は、弁護士を通じて「お詫(わ)び」と題したコメントを出し、「保有する株式や現金で返済するとグループ企業に通知しているが、さまざまな問題があって返済には至っていません」としています。
大王製紙、逮捕された井川前会長「お詫び」全文
会社法違反(特別背任)容疑で東京地検特捜部に22日に逮捕された大王製紙前会長の井川意高容疑者は同日、弁護士を通じ、「お詫び」と題したコメントを発表した。
その全文は以下の通り。
お詫び
大王製紙株式会社
前代表取締役会長
井川 意高
この度は、私と大王製紙株式会社(以下、大王製紙)の関連会社との借入問題に関しまして、世間の皆様を大変お騒がせいたしておりますこと、心からお詫び申し上げます。
大王製紙の会長、また同社関連会社の会長等役職にあったものとして、このような不祥事を起こしたことにつきまして、大王製紙並びに関連会社の皆様、長年にわたりご信頼頂きお取引させて頂いておりました皆様、そして同社の商品をご愛用いただいている皆様など全ての関係者の方々に対して申し訳なく、深くお詫びを申し上げるより外ございません。
私が大王製紙の関連会社から、のべ100億円余りの融資を受け、これを全て私の個人的用途に使ったことは事実でございます。また、これらの借入金の殆どをカジノでのギャンブルに使ったことも事実です。
きっかけは、私が株式の先物取引、FX取引で多大な損失を出した後に偶々訪れたカジノで儲け、当初、大きな利益を得ることもあったことによりその深みにはまったものですが、全ては私の不徳の致すところであり深く反省しております。
本件の借入れは全て私が一人で行ったことであり、融資をしてくれた大王製紙の関連会社等の担当役員らは単に私の要請に応じてくれたに過ぎず、私一人に責任があるものと考えております。結果的にこれら関係者の方々にも多大な迷惑をかけることとなり、誠に申し訳なく思っております。
今回の関連会社からの借入金の残金につきましては、私が保有する関連会社の株式及び現金により返済する旨を関連会社に対して既に通知しておりますが、種々の問題により具体的返済に至っていないのが実情です。
なお、本年10月28日、大王製紙は特別調査委員会が提出した同月27日付調査報告書を受けて、「特別調査委員会からの報告を踏まえた当社の対応について」を公表しました。特別調査委員会は、私井川意高、父である井川高雄大王製紙元顧問及び弟である井川高博同社元関連事業部担当取締役を一体として「井川父子」と捉え、その支配力の強さが今回の貸借問題の原因であったという報告書を公表し、同社は、この報告を受けて父を顧問から解嘱し、弟を無任所取締役に降格しました。
本件は、本年3月に私の借入について父から叱責を受けたにもかかわらず、その後も借入を続けた私自身の問題であって、同年4月以降の借入については9月まで父も弟も知らなかったものであり、その責任は全て私にあります。本件が、「井川父子」、或いは、創業家の支配力の問題等とされてしまうことにより、大王製紙が、今後、コンプライアンス及びコーポレートガバナンスを立て直してゆくための道筋を誤ることがないことを心から希望しております。もとより、かような事態の原因を作った者として深くお詫び申し上げるところですが、何卒、大王製紙が信頼を回復できるよう、関係者のみなさまに衷心よりお願いする次第です。
この度の私の不祥事について皆様に多大なるご迷惑とご心配をお掛けし、お騒がせいたしましたことを重ねてお詫び申し上げます。
以上
(2011年11月22日13時19分 読売新聞)