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2011/11/01

事業の執行権限は各府省が握ったままで、自公両党は「結局、他省の意見に逆らえなくなる」と批判

東日本大震災:復興庁法案を閣議決定
 政府は1日午前、東日本大震災の復興政策の司令塔となる「復興庁」の設置法案を閣議決定した。閣僚を現行の定員17人から1人増やして専任の「復興相」を置き、府省間の政策調整を円滑に進められるよう、府省に対する勧告権や、首相に監督指揮を要請する権限を与える。自民、公明など野党は府省の持つ実施権限を復興庁に移すよう主張しており、修正協議が行われる見通し。政府・与党は開会中の臨時国会での成立を目指し、震災発生から丸1年となる12年3月11日までに同庁を設置する方針だ。


 復興庁の長は首相が務め、設置期間は20年度末まで。政策立案や総合調整のほか復興特別区域(特区)の認定、復興交付金の配分などを担う。復興相のほか副大臣1人、政務官3人も増員する。同庁の本部は東京に置き、盛岡、仙台、福島の3市には出先機関となる復興局を設置する。政府は各復興局に専任職員を各20人程度配置するほか、国土交通省地方整備局など既存の出先機関の職員にも復興局を兼務させ、被災自治体からの申請や要望に一元的に対応する方針だ。【中井正裕】

毎日新聞 2011年11月1日 東京夕刊






復興庁新設法案を提出 「スーパー官庁」構想は骨抜きに
2011.11.1 21:00 [東日本大震災]
 政府は1日、東日本大震災の復興事業を統括する「復興庁」新設のための法案を閣議決定し、衆院に提出した。今国会での成立を図り、震災1周年(来年3月11日)での復興庁設置を目指している。震災復興の司令塔がようやく整うことになるが、当初、想定されていた公共事業の実施権限を持った「スーパー官庁」構想からは大幅に骨抜きされ、復興施策の総合調整にとどまった。

 法案によると、復興庁は首相を長とし、実務的なトップは新設する「復興相」が担う。このため、閣僚枠(17人)を1人増員する。復興相には他の閣僚に対する勧告権を付与。首相に意見具申する権限も持たせる。復興庁の設置期限は平成32年度までとしている。

 復興庁への実施権限の集約を求めてきた自民、公明両党は激しく反発しており、今後は与野党の修正協議が焦点となる。公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は1日の衆院本会議での代表質問で「勧告権でどこまで霞が関の縦割りを排することができるのか」と批判した。

 これに対し、野田佳彦首相は、復興庁が復興交付金の配分や復興特区の認定の権限を有することを盾に「強力な権限や予算を担う。組織面でも私が長としてリーダーシップを発揮できる体制だ」と反論した。

 ただ、被災地には国土交通省や農林水産省の出先機関があり、権限が複雑に絡む。民主、自民、公明の3党協議の末、6月に成立した復興基本法は、復興庁に企画・立案や総合調整の機能に加え、「実施権限」を持たせるとしている。

 政府は、復興庁が持つ交付金配分権などが、この「実施権限」にあたると説明する。しかし、事業の執行権限は各府省が握ったままで、自公両党は「結局、他省の意見に逆らえなくなる」と批判する。

 復興庁の本部は東京に置くが、首相は9月の衆院予算委員会で「現地に」と表明。4日後に平野達男震災復興担当相が否定し、自公両党に不信を抱かせた。

 復興庁が調整官庁のままで「縦割り行政」を打破し、復興施策を強力に推進できるかは不透明だ。





「復興庁」権限・拠点で溝 法案、与野党の修正協議へ
2011/11/2 2:33
 東日本大震災の復興庁設置法案が1日に国会に提出され、今後は与野党の修正協議が焦点になる。首相をトップとし、復興担当相が統括する他省庁より格上の総合調整官庁の位置付けだが、野党は復興事業の立案から実施まで強力な権限を持たせるべきだと主張。復興庁の活動拠点でも溝がある。震災1年の来年3月を目標とする発足時期に影響する可能性もある。

 「私自らリーダーシップを発揮できる体制だ。縦割りを排除して被災自治体の要望にワンストップで対応し、復興を力強く推進する」。1日の衆院本会議で、野田佳彦首相は復興庁設置の意義を訴えた。

 6月に成立した復興基本法は、野党要求を受け入れて復興庁の事務に「施策の実施」を追加した。しかし、設置法案では、復興庁は総合調整の役割に徹し、他省庁が復興事業を実施する従来通りの仕組みとした。「二重行政になれば復興のスピードがかえって遅くなる」との考え方が政府内に強かったからだ。

 自民党は「法案は基本法違反だ。徹底的にやっていく」(宮沢洋一・党復興特命委員会座長)と強調。公明党の山口那津男代表も1日の記者会見で「ワンストップサービスを促進する最大の効果を発揮できるような枠組みを作るべきだ」と法案に不満を示した。

 政府案では、復興庁の本部は東京に置き、岩手、宮城、福島3県の県庁所在地に「復興局」を置く。自民党には「復興庁を現地に置いて東京に支所をつくったほうがいい」との意見がある。復興相、副大臣1人、政務官3人を増員する内容にも自公両党に慎重論がある。

 復興庁は被災自治体からの相談や要望をすべて受け付ける。被災地限定で規制緩和や税制優遇の特例措置を設ける復興特区制度の窓口にもなる。政府は来年3月11日までに復興庁を立ち上げ、復興特区制度と連動させる方針だ。復興庁法案の実質審議入りは2011年度第3次補正予算案と関連法案の成立後になる見通し。政府は来月9日の今国会会期末までの成立をめざすが、修正協議や審議の時間は限られる。







東日本大震災復興対策本部