2011年10月19日
ソフトバンクの孫正義社長の発案で県内にメガソーラー(大規模太陽光発電所)を建設する構想が、当面白紙になる可能性が高まった。構想が明らかになって約五カ月がたったが、孫社長側が県に事業の枠組みすら示していないのが理由だ。上田清司知事は十八日の定例会見で「当初の話はかなり消えかかっている」と指摘した。 (杉本慶一)
孫社長は自然エネルギー普及のため、全国各地でのメガソーラー建設を提唱。上田知事は五月、住宅六千戸分の電力を賄える二十メガワット規模のメガソーラー建設を打診されたことを明らかにしていた。
県によると、孫社長側は当初、建設費を約八十億円と試算し、県に約一億円の負担と五十ヘクタールほどの建設地提供を求めた。
県は候補地の選定作業に入ったが、孫社長側は現在も事業の枠組みを示していない。このため県負担の一億円を補助金としてソフトバンクなどに出すのか、共同事業者として出資するのかもはっきりしていないという。
上田知事はこれまでに「出資となると、事業が失敗したときに出資分に応じた責任が生じてくる」と難色を示しており、この日の会見では「(孫社長側が)構想を練り直し、きちっとした話が出たら考える」と述べた。
「大風呂敷」メガソーラー構想 自治体も急速に熱が冷える
2011/10/21 19:47
ソフトバンクの孫正義社長と多くの地方自治体がぶち上げた「メガソーラー構想」が急速にしぼんでいる。
東日本大震災後の福島第一原子力発電所事故の影響で、原発に代わる自然エネルギーとして一躍脚光を浴びたものの、広げた「風呂敷」があまりに大きかったようだ。
「当初の話はかなり消えかかっている」
メガソーラー構想にあたって、孫社長は当初国内10か所以上で1か所80億円もかかるとされる20メガワット級の発電所をつくると宣言していた。
ところが、さすがに「20メガワット」のソーラー発電所の建設はむずかしいようだ。埼玉県の上田清司知事は2011年10月18日の定例会見で、「当初の話はかなり消えかかっている」と指摘した。構想が明らかになってから約5か月。上田知事は5月に、20メガワット規模のメガソーラー発電所の建設を、孫社長から打診されたことを明らかにしていた。
孫社長は建設費を約80億円と試算し、県に約1億円の負担と50ヘクタールほどの建設地提供を求めたとされる。埼玉県は現在、候補地の選定作業に入っているが、孫社長からはその後事業の枠組みなどの具体的な話はないという。
ただ、ソフトバンクは「少し行き違いがあるようです」と話す。構想について同社は、「いま、各自治体が候補地の選定に入っているところで、その後いろいろな話し合いになっていきます」と、「メガソーラー構想」の旗振り役ではあるが、あくまでも一事業者としての立場であると説明。
資金についても、「80億円は例にすぎません。(事業者に選ばれれば)そういったことを、これから各自治体と話し合っていくことになります」という。
「(上田知事の)発言内容については当社も確認しましたが、(知事は)ここまで(事業が白紙になると)言っていないとのことでした」と話し、「構想が頓挫しているわけではありません」と、強く打ち消した。
「メガでなくとも、候補地に応じて進めていきたい」
しかし、メガソーラー構想がトーンダウンしてきたことは確かだ。ソフトバンクが打ち出した北海道帯広市の実証実験も、当初1メガワットから、その10分の1の100キロワットの発電規模に縮小。地元から「尻すぼみではないか」との声があるが、同社は「当初からデータの収集が目的で、100キロワットの設備でも十分にデータがとれることがわかったため、その規模にしただけ」という。
同社が事務局を務める「自然エネルギー協議会」の副会長である神奈川県の黒岩祐治知事は、「メガソーラー構想」を口にしなくなった。それどころか、自ら掲げた「4年間で200万戸の太陽光パネル設置」を事実上撤回。「かながわスマートエネルギー構想」に名を換え、太陽光発電は「4年間で約55万戸分」、既設を含めても59万戸分の規模に縮小した。
岡山県は県内20か所の候補地の選定を終えているが、徳島県や秋田県など多くの自治体はまだ市町村から候補地を挙げてもらっている段階。「事業規模や事業者の選定はこれから。メガでなくとも、候補地に応じて進めていきたい」と、徳島県は話す。
ある自治体も、「当初はソフトバンクからの話もありましたが、最近は何もありませんね。まず実現することが第一歩ですから、メガにはこだわりません」という。
メガソーラー構想は「練り直し」のようだ。
孫氏は9月中旬に個人で10億円を拠出して自然エネルギーの事業支援や啓発活動などに取り組む一般財団法人「自然エネルギー財団」を立ち上げた。メガソーラーをはじめ再生可能エネルギーの全国への普及に積極的な姿勢を強めている。
ただ、自治体によって協議会への受け止め方には違いがある。協議会会長の石井・岡山県知事はソフトバンクとの今後の連携について「孫氏は自然エネルギー普及に熱い思いを持っており、その発言力に期待している」と話す。一方で、新潟県は「(休耕田を使う)電田プロジェクト」について、送電線を発電地点まで敷くことや、農地転用の手続きの難しさを指摘し、「そうしたハードルをどう越え、事業をどんなスピードで回すのか質問したが答がなかった」(泉田裕彦知事)として参加を見送っている。