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2011/10/24

文部科学省=東京電力福島第1原発事故で放出された放射性セシウムを含む雨水が現場の側溝から外に漏れ出し、土壌に染み込んで蓄積された可能性が高い…千葉県柏市

千葉・柏の高線量地:側溝破損、雨水漏れ 原発由来セシウム、蓄積
 千葉県柏市根戸(ねど)の市有地で採取した土壌から1キロ当たり最大で27万6000ベクレルの放射性セシウムが検出された問題で文部科学省は23日、現地調査を行い、東京電力福島第1原発事故で放出された放射性セシウムを含む雨水が現場の側溝から外に漏れ出し、土壌に染み込んで蓄積された可能性が高いとの調査結果を明らかにした。汚染土壌の投棄といった人為的な要因は否定され、原発事故そのものの影響の広がりが示された形だ。柏市は文科省と協議し、除染の方法を検討する。【早川健人】




 文科省放射線規制室によると、最も空間線量が高かった地点のすぐ横で、深さ30センチ、幅30センチのコンクリート製側溝の壁が幅0・5~1メートル程度にわたって破損・欠落していた。側溝は雨水を流すために設けられ、現場から下流部分は市道に沿って掘られている。普段、どの程度の流量があったか不明だが、上流部分に降った雨が集まって側溝を流れる際、破損部分から漏れ出たとみられる。

 この日の文科省の測定では、高線量の場所を覆っている防水シートをはがした際の地表部の空間線量は、最大で毎時14・6マイクロシーベルト、地上1メートルでは同約2マイクロシーベルトだった。防水シート周辺部の最大線量は同0・6マイクロシーベルトで、その外側よりやや高かった。

 調査結果について、中矢隆夫・同室長は「一般的に、雨どいの下の線量が高くなるように、雨水が集まる場所では線量が高くなる傾向がある。似たような状況の場所は(首都圏で)他にもあると思う」と述べた。また、放射性物質で汚染された土壌や焼却灰の投棄の可能性については「少ない」と話した。

 市有地は、戸建ての市営住宅が95年に取り壊され、地元町会が広場として利用していた。今回の問題は、散策中の市民が持っていた測定器の高線量に気付いて市に通報したのが発端。21日の市の測定では毎時57・5マイクロシーベルトの異常に高い空間放射線量を記録した。政府の除染についての基本方針は、放射線量が毎時0・23マイクロシーベルト以上の場合は年間被ばく量が1ミリシーベルトを上回る可能性があるとして除染対象になっている。

 文科省の調査は当初24日を予定していたが、柏市が前倒しを要請し、23日に繰り上がった。


 ◇専門家「健康に影響少ない」
 千葉県柏市で、非常に高い濃度の放射性物質を含む土壌が確認されたことについて、専門家は同様の現象が発生しうるとした上で、現状の水準ならば健康への影響はほとんどないとしている。

 松本義久・東京工業大准教授(放射線生物学)は「柏市は街全体がホットスポットのようになっているため、今回のような非常に高濃度の土壌が生じたのだろう」と分析。「ただし、内部被ばくの線量などを試算しても健康への影響はほとんどないと思われる」と語った。

 また、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(86年)を現地調査した笠井篤・元日本原子力研究所研究室長(環境放射能)は「チェルノブイリ原発事故に比べると1~2ケタ低く、汚染範囲もごく狭い場所に限られている。冷静に対応してほしい」と呼び掛ける。一方で、「今後も同じような事象が各地で起きる可能性がある。文部科学省は放射性物質の濃度だけではなく、健康影響の指標となる放射線量も一緒に発表すべきだ」と述べた。【奥山智己、永山悦子】

毎日新聞 2011年10月24日 東京朝刊







【NewsBrief】千葉県柏市、ホットスポット特定で汚染対策強化へ
2011年 10月 25日 13:57 JST
【東京】千葉県柏市当局は24日、局所的に放射線量が高い「ホットスポット」が見つかったことを受け、市内沿道の数百キロにわたる側溝や600カ所を超える公園を詳細に調査し、汚染箇所の特定と除染を行うための取り組みを強化することを明らかにした。

 柏市当局から市有地内で高い放射線が検出されたとの連絡を受け、文部科学省は、柏市根戸の市有地で特定されたホットスポットは、3月11日の福島第1原子力発電所事故後に降った放射性セシウムを含んだ雨が原因で汚染された可能性が高いことを明らかにした。柏市は福島第1原発から約200キロメートルの場所に位置しており、原発からはるか遠く離れた地域にまで放射性物質が拡散していることを示す新たな証拠だ。

 柏市当局は21日、住宅街に囲まれた空き地の一部土壌を掘り起こして調べたところ、地表面上で毎時57.5マイクロシーベルトの放射線量が測定されたことを明らかにした。政府が規定した福島の避難区域の基準放射線量は年間20ミリシーベルト(毎時3.8マイクロシーベルトに相当)。ただし、福島で測定された値は空間放射線量のため、柏市の土壌で測定された値とは直接比較できない。

 ホットスポットは側溝が破損した箇所のすぐ近くで見つかっており、汚染された雨水が漏れ出したことで放射線濃度が高まったとみられる。

 ただし、文科省原子力災害対策支援本部の奥博貴氏は、ホットスポットは土壌のごく一部に集中しているため、周辺住民の避難は必要ないとし、まずは汚染の拡大を防ぎ、その後に除染作業を行う可能性があると述べた。

記者: Yuka Hayashi