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2011/09/10

最近になって国が始めた流通品の抜き打ち検査では、埼玉、千葉両県産の製茶で規制値を超えていたことも判明

【3・11 東日本大震災半年】
【原発事故 日本を変える】食品検査の充実急務
2011年9月10日
 福島第一原発の事故で放出された放射性物質は、農作物、水産物にも打撃を与え続けている。実りの秋が近づく中、安心して食べられるよう、検査の充実が求められている。

 この一カ月(九月五日まで)に行われた食品の放射性物質の検査で、国の暫定規制値を超えたのは、ごく一部の地域の限られた食品だ。

 規制値を超えたのは、放射性セシウムに汚染された稲わらが問題となった福島や岩手、宮城、栃木各県の牛肉。野菜類では福島県内のチチタケ、ナメコ、ユズ、千葉や埼玉、静岡各県の茶。水産物では、福島県のマコガレイ、キタムラサキウニ、アユ、茨城県のエゾイソアイナメ、群馬県のワカサギなどだ。



 最初に影響が出たのは、ホウレンソウといった葉物野菜で、コウナゴといった小魚でも検出された。

 食品関係者を驚かせたのは、原発から約二百九十キロの神奈川県南足柄市、約三百六十キロの静岡市などでも生茶葉が規制値(一キログラム当たり五〇〇ベクレル)を超えたこと。原発近辺だけでなく、風向きなどによっては遠隔地でも影響が出ると証明された。

 稲わら問題は、畜産農家で稲わらがエサとして牛に与えられているとの認識が農林水産省にはなく、指導が徹底されていなかったことが原因だった。「規制値を超えた食品は市場に流通していない」との国の説明が揺らいだ。

 収穫期を迎え、コメなど穀類への影響や、大型魚で食物連鎖による放射性物質の蓄積が進むのかどうかを注視していく必要がある。

 課題は検査態勢。宮城、茨城、千葉、神奈川県では水産物の検査が少ないなど、自治体によって検査品目の選び方や検査数にばらつきがある。最近になって国が始めた流通品の抜き打ち検査では、埼玉、千葉両県産の製茶で規制値を超えていたことも判明した。

 無用の疑念をうまないためにも、各自治体による検査強化だけでなく、生産現場や食品業界の自主検査の努力も求められそうだ。