2011年9月10日
かつてない規模の被害をもたらした福島第一原発の事故。発生から半年、ようやく懸命の収束作業により同原発の状態は安定を取り戻しつつある。ただ、事故炉の処分、広範囲にまき散らされた放射性物質、事故で一変した電力事情といった長期的な課題の解決はこれからだ。
今回の事故は、一度に四基もの原発が危機的状況に陥る前代未聞の事態だった。1~3号機ではメルトダウン(炉心溶融)、1、3、4号機では水素爆発も起きた。冷却機能を失ったことで、一時は圧力容器底部の温度が三〇〇度超と、継ぎ目部品の設計温度を超え、さらに深刻な事態になる可能性もあった。
初期にはポンプ車で注水していたが、汚染水の浄化システムが完成した後は、処理水を冷却に再利用する循環式冷却に転換。その結果、新たな汚染水を発生させず安定冷却が可能となり、底部の温度も一〇〇度前後で安定している。
使用済み核燃料プールも、一時は沸騰に近い状態だったが、各号機に熱交換器が設置され、三〇~四〇度で落ち着いている。
原発敷地の様子も一変した。かつては「野鳥の森」が広がっていたが、ほとんどの木が切り倒され、整地された跡には何百という処理水を入れる大型タンクが設置された。
年内には、1~4号機をぐるっと囲む形の遮水壁の建設が始まる予定。地下に鋼管を打ち込んで壁状にし、汚染水の流出を防ぐためだが、完成すると様子はさらに変わる。
事故現場が収まってきたのに対し、外部に放出された放射性物質による土壌や食品への影響、原発依存度をどう減らしていくかといった点はこれからが本番となる。
高い放射線量が記録される地域では、表土を削るなど本格的な除染作業が必要で、首都圏でも汚泥や焼却灰が行き場をなくし、問題となっている。
今夏の電力需要をめぐっては、市民や企業の節電も功を奏し、乗り切りつつある。
だが、原発の老朽化が進む中で、ストレステスト(耐性評価)の導入など稼働の条件も厳しくなってきた。現在の電力供給を下支えしているのは火力発電だが、燃料費の高騰など不安は残る。エネルギー政策は大きな曲がり角を迎えている。