厚生労働省による抜き打ち検査で埼玉、千葉両県産の製茶から暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)を上回る放射性セシウムが検出された問題で、埼玉県は3日、この製茶を販売した2業者が加工に使用した生茶葉が、狭山茶の産地・日高市や鶴ヶ島市などで収穫されたものだったと発表した。
両業者に対し、取り扱う製茶の出荷自粛を求めるとともに、既に出荷した製茶についても回収を要請した。
同県によると、生茶葉は5月中に収穫され、2業者から計65キロ・グラムがインターネットなどで販売されたという。県が6月に行った製茶の放射性物質検査では、暫定規制値を下回る最大240ベクレルにとどまっていた。
また、千葉市も同日、同市の業者が加工した製茶の原材料が、千葉県長柄町で栽培された生茶葉だったと発表。製茶は5月末からインターネットや電話で受注販売されており、数量などは調査中という。
(2011年9月3日21時24分 読売新聞)
県産製茶からセシウム
基準値超、原材料は長柄町産 販売は自粛
2011年09月04日10時24分
市販されている千葉県産と埼玉県産の製茶計4品から国の暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出されたことが3日、厚生労働省の調査で分かった。同省は「お湯を入れて飲めば濃度は30分の1以下に薄まるので、ただちに健康影響はない」としている。
厚労省が新たに始めた抜き打ち検査で判明した。県産製茶は千葉市内の加工業者が加工、販売した1品で、5月31日に検体を採取。検査の結果、2720ベクレルが検出された。
千葉市生活衛生課によると、県産製茶の原材料の生茶葉は長柄町で栽培され、加工業者が5月31日からインターネットなどで予約販売した。厚労省の調査依頼に基づき同市保健所が9月3日に加工業者を立ち入り調査し、販売量や原材料の残品などを調べている。
2011年9月4日(日)
県産製茶で基準値超 放射性セシウム
市販されている埼玉県産と千葉県産の製茶計4品から、国の暫定規制値(1キログラム当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出されたことが3日、厚生労働省が市販されている商品を買い上げて行う抜き打ち検査で分かった。
埼玉県はこれまで、狭山茶の生産地である6市で38検体のサンプル調査を実施し、安全宣言を出していた。県内で規制値超えが確認されたのは初めて。
埼玉県産は日高市と鶴ケ島市の計2業者と東京都内の1業者が製造した3品で、1530~800ベクレルを検出。千葉県産は千葉市内の業者が製造した1品で2720ベクレルを検出した。
埼玉県は県内の2業者が扱う製茶について出荷の自粛や商品の回収を要請し、詳細な調査を行う。日高市と鶴ケ島市内のほかの業者が生産した製茶に関しても、追加調査を実施する方針。県は「煎じて飲む場合は80分の1の濃度に薄まるので、直ちに健康に影響するレベルではない」とした上で、「検査方法の見直しを含めしっかり対応していきたい」としている。
上田清司知事は同日、「県では狭山茶について、全て暫定規制値以下であると確認しているが、今後は厚労省とも連携し、あらためて狭山茶の安全性を確認していきたい」とのコメントを出した。
■声失う茶農家
狭山茶から暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが初めて検出されたことを受け、県は3日、県庁で会見を開き、厚労省の調査結果や今後の対応などについて説明した。風評被害を含め、県内の茶業者への影響が懸念される中、県農林部の海北晃部長は「原発事故による放射性物質の問題は、消費者はもちろん、生産者も被害者。国とも十分連携し、双方の不安が解消されるよう対応したい」と力を込めた。
県によると、暫定規制値を超えたのは、備前屋(日高市高萩)が製造した「狭山 山出し 狭山茶」(検出値1270ベクレル)と、長峰園(鶴ケ島上広谷)の「露むさし新茶」(検出値1530ベクレル)。いずれも一番茶の製茶だった。
備前屋は同商品を7月から約5キロ分(一袋100グラム)を、インターネットを通じて販売。同社では、日高市を中心に周辺地域の契約農家から仕入れた荒茶をブレンドし、自社工場で製茶にして販売している。
長峰園は同商品を5月中旬から約60キロ分(一袋100グラム)を、店舗やインターネットで販売。お茶については自社で生産している。
狭山茶に関して県は5月から7月にかけて、一番茶と二番茶の生葉、荒茶、製茶について計38検体の調査を実施。全て暫定規制値を下回ったため、安全宣言を出していた。
しかし、業者から提供されたお茶を検査機関に依頼して分析する方法で、今回のように、買い上げた商品を調べるものではなかった。
厚生労働省からは2日午後10時ごろに調査結果の報告が入り、知事あてに規制値を超えた製茶の調査や、県産の製茶についてモニタリング検査を強化するよう要請する文書が送られてきたという。県は調査方法の見直しを含め、対応を強化していく方針だ。
突然の事態を受け、県内の茶業者からは驚きの声が上がった。県茶業協会の長峰宏芳会長は「寝耳に水。本当に驚いた。県の調査で規制値を下回っていたので、こんなことになるとは想像していなかった。今後は県の指導に従って対処していきたい」と話している。
■「対策しようがない」
県産の製茶から国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されたことは、県内の茶農家に動揺を与えた。
入間市の茶農家男性は「報道を聞いてびっくりした。埼玉はセシウムの影響が少ない地域だと思っていたが」と声を落とした。県が6月20日に発表した製茶の放射性物質の検査結果では、いずれも暫定基準値を下回った。茶に関する話題も以前より落ち着いてきた最中の一報に「県が安全宣言を出したのに、これはかなりの痛手だ」と落胆する。男性は「セシウムが検出されたのは一部の製茶。全ての茶農家を一緒にされては困る」と風評被害を懸念した。
男性は「(放射性物質は)対策のしようがないし、1年で終わるような問題でもない。国や県からの指示を仰ぐしかない。なんでお茶だけ…」と嘆いた。