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2011/08/19

「前回の南海地震(1946年)は規模が小さかったため、今度は東海・東南海との3連動も含め巨大地震の恐れがある」=産業技術総合研究所関西センター、寒川研究員

大地震、震源と活動が9世紀と酷似 専門家が警鐘
 日本国内で起きた現代の大地震と、9世紀の大地震の発生場所が似ていることに注目が集まっている。9世紀には東日本で地震が続いた後、太平洋沖で大津波を伴う「貞観(じょうがん)地震」が発生。西日本はその18年後、南海地震に見舞われた。今年3月の東日本大震災後、一部の活断層では地震の発生確率が上昇したとの指摘があり、近い将来、南海地震の発生が予測される中、専門家は警戒を怠らないよう呼び掛けている。





 独立行政法人産業技術総合研究所関西センターの寒川旭(さんがわ・あきら)招聘(しょうへい)研究員(地震考古学)が、文献や地層などから推定される9世紀の大地震の発生場所を日本地図に落とし、現代と比較した=図。

 平安時代の869年に起きた貞観地震は、その震源域や津波被害などの面から東日本大震災との類似性が指摘されている。この地震の前後には、東日本の日本海側と中部、関東地方で大きな地震があった。西日本では兵庫県で山崎断層帯による「播磨地震」(868年)が発生。887年には南海地震が起こった。

 南海地震や東日本大震災のようなプレート境界型地震は、その発生前に内陸部で地震が多発する「活動期」に入るとされる。実際、東日本では9世紀と同じような地域でこの50年間に大地震が多く起きた。今後30年間の発生確率が60%に高まっている南海地震も、1995年の阪神・淡路大震災が活動期の始まりといわれる。

 寒川研究員は、9世紀に長野県で起きた地震にも着目。引き起こしたとみられる牛伏寺(ごふくじ)断層(同県松本市‐塩尻市付近)は約千年周期に地震を起こすとされるが、9世紀以後は動いていない。政府の地震調査委員会は東日本大震災後、牛伏寺断層などで地震の発生確率が高まった可能性がある、と発表した。

 寒川研究員は「現代と共通点の多い9世紀の地震活動から得られる教訓は少なくない。今後は南海地震など西日本で警戒が必要」と指摘。「前回の南海地震(1946年)は規模が小さかったため、今度は東海・東南海との3連動も含め巨大地震の恐れがある」と話している。

(岸本達也)

(2011/08/19 11:30)