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2011/08/18

注水量が増えると、溶けた燃料による高濃度の放射能汚染水が増えるが、発電所内の汚染水は計画通り減っていない。17日夜にも、新たな放射性物質除去処理装置を本格稼働させ、安定的な水処理を目指す。

放射線測定・被曝管理の人材4千人育成 工程表改訂版
2011年8月18日1時31分




 政府と東京電力は17日、福島第一原子力発電所の事故収束の道筋を示した工程表の改訂版を発表した。政府の支援を受けながら、放射線測定や被曝(ひばく)管理の専門知識を持つ人材
の育成を進めることを新たに盛りこんだ。また、10月中旬から来年1月中旬までに、原子炉を安定した状態で止める冷温停止状態を達成するため、原子炉への注水量を増やし、汚染水浄化処理装置の安定的な稼働を目指す。

 従来の工程表からの主な追加点は、事故収束に向けた作業を行う要員の計画的育成と配置。今後、発電所内の事故収束の作業のための放射線測定や、避難解除によって住民の帰宅に際して放射線を測定する要員の不足が見込まれるためだ。

 「放射線測定要員」約4千人と「放射線管理要員」約250人を新たに育成する。「測定要員」は東電と関連企業などで約1900人が研修をすでに終えており、ほかの電力会社も含めると、現時点で約2500人確保できているという。

 一方、「管理要員」はより高度な知識を学び、原発の復旧現場で作業員の被曝管理をする。作業現場に入る機会が多く被曝量が高くなるため、要員確保が課題。東電は原子力関連企業でつくる日本原子力産業協会を通じて、電気工などの専門技術職も募集している。

 事故の収束については、第2段階(ステップ2)に入ったこの1カ月間で、使用済み燃料プールの水を循環させて冷却させる装置が完成し、安定的に冷やせる仕組みが予定より前倒しで完成した。

 原子炉の冷却については、東電は今後、原子炉内の冷却水が100度以上の2、3号機について、それぞれ9月中旬と下旬に注水量を増やして冷温停止状態をめざす。

 注水量が増えると、溶けた燃料による高濃度の放射能汚染水が増えるが、発電所内の汚染水は計画通り減っていない。6月下旬に循環注水冷却システムが稼働して1カ月半がたったが、稼働率は平均69%と低迷。つまった配管によって減った水の処理量を増やすために、4日に配管のバイパス工事を実施し、16日までの直近1週間の稼働率は88.3%に上昇した。17日夜にも、新たな放射性物質除去処理装置を本格稼働させ、安定的な水処理を目指す。

 細野豪志原発担当相は「原子炉に水を入れることで冷却機能を強化し、冷温停止に持って行く。三つの設備の有効活用で処理能力を上げ、滞留分を減らすことが大事。減らせれば、注水量を増やしても安定的に稼働できる。力を結集して冷温停止に持っていきたい」と話した。

 一方、政府原子力災害対策本部は今月中に、避難地域の放射性物質を取り除くための緊急実施基本方針をまとめる。方針を受けて9月に放射線量の高い地域で実証実験をした上で学校や道路、農地などの除染のやり方を示したマニュアルを作る。警戒区域や計画的避難区域を含めた汚染地域での除染に活用する。17日、政府と東京電力が公表した福島第一原子力発電所の事故収束の道筋を示した工程表の中で明らかにした。