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2011/07/13

「焼肉酒家えびす」の運営会社、ガソリンスタンドや焼き肉店などを経営する「スタンドサービス」(福島県郡山市)に全20店舗を売却

えびす運営会社、福島の会社に全店売却へ
 集団食中毒事件を起こした焼き肉チェーン「焼肉酒家えびす」の運営会社で、解散して清算手続き中の「フーズ・フォーラス」(金沢市)が、ガソリンスタンドや焼き肉店などを経営する「スタンドサービス」(福島県郡山市)に全20店舗を売却することで最終調整に入ったことが12日、関係者への取材でわかった。売却代金は2億円超となる見通しで、被害者への補償の原資にする方針。スタンド社は、解雇されたえびす従業員を雇用する意向を示しているといい、早ければ来月から営業を開始する予定で、月内の契約締結を目指している。



 民間信用調査会社などによると、スタンド社は1982年に創業。福島県郡山市でガソリンスタンドの経営などを行う一方で、飲食店経営にも参入。同県を中心に、宮城県、東京都で、焼き肉チェーン「ブイブリアン」を運営している。福島県内の食肉卸業者によると、スタンド社が展開する焼き肉店「ブイブリアン」は、黒塗りの外観に赤い看板というデザインの店で、「家族連れよりは、若者がよく利用している店」という。

 フォーラス社は11日に開いた債権者説明会で、全20店舗を一括で売却し、被害者への補償に充てたいと説明。同社清算人によると、〈1〉売却額は2億円以上〈2〉解雇した従業員を雇用する――との2条件を提示。約10社から購入希望があり、入札の結果、1社について金額が高く、早期に入金できることが確認できたと説明していた。

 えびすの店舗は、仕様通りに建設したオーナーからフォーラス社が借り受け、分割の建設費と家賃を毎月支払う方式をとってきた。

 石川県内で店舗と土地を所有する女性によると、フォーラス社側から11日、連絡があり、「福島県のスタンドサービスがえびすの店舗を焼き肉店として使うことに決まった。家賃や敷金などの条件を詰めたい」との説明を受けた。

 フォーラス社は滞納した2か月分の家賃と、契約時に支払った敷金の相殺を求めており、女性は「フォーラス社との契約を清算した上で、スタンドサービスと家賃などの条件が合えば、契約し直したい」と話す。

 別の地権者によると、フォーラス社から11日、「一括譲渡の契約が整った」として協力を求めるファクスが来た。地権者は、「えびすには社会的責任がある。被害者補償には協力したい」と話し、スタンド社への売却には賛同する考えだ。

 スタンド社は読売新聞の取材に、「責任者が不在なので、答えられない」としている。

 フォーラス社は、被害者への補償について、7億円の債務超過を抱える中で、債権者に債権放棄を求めつつ、店舗売却や口座凍結中の預金、保険金などで約5億円を充てたいとしている。

(2011年7月13日 読売新聞)







2011年7月12日
フーズ社債権者説明会、元社長が債権放棄求める
 集団食中毒事件を起こした焼き肉チェーン「焼肉酒家えびす」の運営会社で、清算中の「フーズ・フォーラス」(金沢市)は11日、金沢市内で債権者説明会を開いた。

 勘坂康弘元社長は、被害者補償を最優先するため、債権を放棄するよう求めたが、出席者からは反発の声も聞かれた。被害者への優先配分には債権者全員の同意が必須。同社は理解が得られない場合、裁判所による特別清算手続きに移行するとしており、被害者への優先補償が実現するかは不透明な情勢だ。

 説明会の冒頭、勘坂元社長は「このような状況になったことを深くおわび申し上げます」と謝罪し、「被害者優先、債権放棄にご賛同いただきたい」と訴えた。

 清算人らは説明会で、同社の負債は11億円超で、現時点では約7億円の債務超過状態にあることを伝えた。そのうえで、「被害者補償は5億円を下らない」とした。また、現在、石川、富山など4県の20店舗の売却について、全国でレストランを展開する会社と最終交渉に入っていることを報告した。

 説明会に出席したOA機器業者は「被害者が最優先なのは理解できる。会社には社会的責任を果たしてほしい」と債権放棄に一定の理解を示した。一方で、食品の卸業者は「未払い金を回収できなければ倒産する会社も出てくる。債権放棄には応じられない」とした。

 同社は、店舗売却や預金、保険金などで5億円近くの資産確保を見込んでおり、債権放棄への同意を得た上で、これらを被害者への補償に充てたい考えだ。しかし、現時点で、預金は銀行3行が凍結しており、解除の見通しは立っていない。

 ある取引銀行の担当者は「凍結した口座預金と債権を相殺し、残りの債権を放棄する形で妥協したい」と話し、債権放棄には応じるものの、担保として凍結している預金の解除には否定的な見解を示している。

 仮に、店舗売却や凍結されている預金が解除されたとしても、被害者補償への資産として十分とは言い切れず、代理人弁護士らは「被害者らに100%満足してもらうのは難しい」との認識を示し、補償金の支払い開始時期についても、「早くても秋以降」とした。

 代理人弁護士らは説明会後の記者会見で、近く被害者約200人に、治療費や症状を届け出てもらうための通知を発送するとした。また、元従業員らの未払い給料などに関し、労働基準監督署から是正勧告を受けたことを明かし、今後、勧告に従い、全額を支払う方針を示した。

(2011年7月12日 読売新聞)